【入学したら何をとる?】東大新聞記者おすすめの総合科目授業紹介(人文・社会科学編)

東大の前期教養課程の授業数は3000を超える。リベラルアーツ教育を行う前期教養課程では、原則として文理・科類を問わずにさまざまな分野の授業を受けることが可能だ。なかでも「総合科目」は、七つの系列に分かれた、履修の中心となる選択科目群。ここでは、東京大学新聞社の記者おすすめの授業を三つ、紹介する(授業の担当教員や扱うテーマは変わることがある)。(構成・岡部義文)

A系列(思想・芸術)「外国文学」(塚本昌則教授、王寺賢太教授、浜永和希助教)

文学部フランス文学研究室の塚本昌則教授、王寺賢太教授、浜永和希助教らによるオムニバス講義。研究分野の中で最も刺激的で面白い部分を凝縮して伝えてくれる。フランス文学を全く読んだことがない人にうってつけの入門的な授業だ。『存在の耐えられない軽さ』や『失われた時を求めて』など文学を塚本教授が、『社会契約論』など思想を王寺教授が、そしてボードレールやランボーの詩を浜永助教が担当。精読(対訳あり)も交え「どこがどう面白いのか」作品や評論の楽しみ方を教えてくれる。教員自身の魅力も大きい。情熱たっぷりに洗練された語り口で語る塚本教授、冷徹に思想の本質を暴く王寺教授、仏詩の芳醇(ほうじゅん)な世界を細部から丁寧に語る浜永助教。これぞ教養学部!絶対に後悔しないので一度のぞいてみてほしい。

A系列(思想・芸術)「社会正義論」高井ゆと里講師

2023年度から開講され始めた、東大でのダイバーシティとインクルージョン教育の推進を目指すD&I関連科目の一つである。23年度Aセメスターでは「生殖を巡る倫理」がテーマに掲げられた。子どもを産むか産まないかの決定権は誰が持っているのか? 戦時期日本の「産めよ殖ふやせよ」政策、旧優生保護法の下での障害者への強制不妊手術の歴史、性同一性障害特例法の生殖不能要件、少子高齢化対策として推進される出産・子育て環境の改善など、生殖の権利の侵害と保障を巡る歴史と現状を学ぶ。生殖のような、人間にとってごく身近な事象を多角的に学び、自分の理解を刷新できることは、研究者が教壇に立つ大学での学びの一つの醍醐味(だいごみ)である。本授業を通して、研究者から学び、世界への解像度が上がる感覚を味わってみてほしい。

B系列(国際・地域)「国際関係史」酒井哲哉教授

なぜ二十一カ条の要求を当時の中国政府はのんだのか、疑問に思ったことはないだろうか。開国から太平洋戦争終戦までの日本外交を学ぶのが本講義だ。日本外交といっても表面的な外交決定だけではなく、政府内対立や諸外国との交渉の過程も明らかになり、水面下で何が起こっていたのかを学べる。高校日本史を学んだ際の疑問が次々に解決されていき、大学生になったという実感が毎回の授業で得られることは間違いない。酒井教授は外交史を学ぶと当時の世界の認識についての了解が浮かび上がると言う。国際情勢が流動化し、先が見通せなくなりつつある今こそ、近代日本がどのような外交史をたどってきたのか学ぶことに意味があるだろう。その外交史を興味の有無や文理によらず学べるのは前期教養課程の特色の一つだ。

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