長崎市上下水道局が新興企業とAI活用の漏水調査共同研究 2025年度本格運用目指す

専用機器を使った漏水調査のデモンストレーションをする職員=長崎市魚の町

 長崎市上下水道局は、スタートアップ(新興企業)の「wavelogy」(東京)と連携し、人工知能(AI)を活用したモバイル漏水調査システムの共同研究を始める。2024年度中に実証実験を終え、25年度の本格運用を目指す。
 同局によると、全国的に水道施設の老朽化による漏水被害が相次いでいる。同市は22年度、浄水場などからの給水量に対し料金収入として計上される水量の割合「有収率」が88.28%と、全国平均89.76%をわずかに下回る。漏水は原価の上昇要因にもなり、大規模になると市民生活への影響も大きいという。
 現在は、地上から専用機器を使い水道管内を水が流れる音を聞き、漏水の有無を判断。熟練した技術者しかできないという。この課題解決に向け、同局は水道管が破損した際の漏水音のデータと配管の地図情報を提供し、同社はそれらを基にAIを活用したシステムを構築。市側が送る音をAIとベテラン技術者が聞き、漏水診断をする。
 市役所で連携協定を締結した同社の道上竣介社長(佐世保市出身)はデータが蓄積されれば「将来的に8割をAIが処理できるようになる。漏水調査をより効率化、大規模化することで最終的に有収率の改善につなげたい」と述べた。
 一方、能登半島地震の被災地では家庭に水を届ける配水管などが各地で損傷し、漏水場所の特定に時間がかかり復旧が遅れている。鈴木史朗市長は「被災地の現場では災害対応の人員が足りない。(今回構築を目指すのは)機械ができる部分は機械で対応することを可能にするシステム。しっかり活用していきたい」と述べた。

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