4ピースバンド、ユアネス ミニアルバム『Ⅶ』をリリース「“あと何回会えるだろう?”みたいなことがひとつのテーマ」

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奥深いストーリーやメッセージを映し出す歌詞、そして、多彩な音像と豊かな表現力を共存させたサウンド。独創的な音楽世界によって支持を得ている4ピースバンド、ユアネスから新作ミニアルバム『Ⅶ』が届けられた。“時間=水”をコンセプトに構成された本作は、死生観や人生観を描いた楽曲やさらに幅を広げたアレンジメントを含め、このバンドのさらなる進化を明確に示す作品となっている。

2024年3月8日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)でワンマンライブ「ONE-MAN LIVE 2024“Life Is Strange”」を開催。ミニアルバム『Ⅶ』、初のZepp DiverCity公演についてメンバー4人に語ってもらった。

――ミニアルバム「Ⅶ」は“時間=水”をテーマにした作品だとか。

古閑翔平(Gt/Programming) そうですね。ユアネスはコンセプトを立てて作品を作ることが多いんですが、今回もキーワードになる言葉を決めてから制作に入りました。何て言うか、時間は水みたいなものなんじゃないかなと。たとえば帰省したときに、「家族とあと何回会えるんだろう?」と思ったり。そのときに生まれたのが「命の容量」という曲なんですが、ミニアルバムも死生観や命というものがテーマになっています。

黒川侑司(Vo/Gt) 最初からテーマを共有できていたわけではなんですが、(古閑から)送られてくるデモ音源には統一したものがあって。作品の全体的なイメージを持ちながら制作できたので、やりやすかったです。

黒川侑司(Vo/Gt)

――音楽的なトライも多い作品ですよね。

田中雄大(Ba) そうですね。今回は今まで以上に個々の力量が試されたというか。基本的にはコンポーザーの古閑が司令塔になってくれてるんですけど、ひとりで作業する時間も多かったんですよ。ベースも自分の家で録っていたし、「このテイク、喜んでくれるかな」という感じでフレーズを考えて。その場で出せるものだけではなくて、しっかり考えながら、自分がやりたいことを冷静に落とし込めたんじゃないかなと。

小野貴寛(Ds) ドラムはいちばん先にスタジオで録ることが多かったんですが、打ち込みの曲(「a couple of times」)があって、自分が叩いてない音源があるのが不思議です(笑)。

――オーソドックなバンドサウンド以外のアプローチもある、と。

古閑 そうですね。全部の曲を全員揃って録らなくちゃいけないということではないし、やれることはやってみようと。

黒川 うん。「a couple of times」は全編英語詞の曲でもあって。これまでは英単語が歌詞に入ってくることもほぼなかったので、新しいチャレンジだったと思います。ほかにも「isekai」のボーカル録音を自宅でやったり、いろんな挑戦がありましたね。

――「isekai」はギターサウンドも素晴らしいですね。

古閑 ありがとうございます。ギターも家で録ることが多いんですけど、今回はそれをそのまま作品としてパッケージできるところまで持っていきたくて。「isekai」のギターはボーカルの裏メロみたいな感じで、歌のジャマにならない範囲でいろいろと弾かせてもらいました

田中 やっぱり主役は歌だし、それがこのバンドの軸になるところだと思っていて。「isekai」は、「ここまでフレーズを詰め込んでも、歌をしっかり立たせることができるんだな」という可能性を感じる曲でもありました。中野領太さん(agehasprings Party)にアレンジに参加していただいて、音を切ってエディットしたり、エフェクトなども取り入れて。とにかく音源としてカッコ良くすることを考えて作ったんですが、ライブのときは「もっとカッコよく演奏しよう」と思うだろうし、自分たちのスキルも上がるだろうなと。

小野 これまでにもドラムの手数が多い曲は多かったんですけど、特に「isekai」はかなり暴れる感じで叩いています。これだけフレーズを詰め込んでもしっかりバランスが取れて、歌や各パートを立たせることができるのはユアネスならではなのかなと。

小野貴寛(Ds)

黒川 歌詞もめっちゃ好きですね。“年齢を重ねて、心が育ち切らないまま大人になる”みたいなテーマなんですが、自分のことじゃないかと思って(笑)。自分と照らし合わせやすかったというか。

――心の成長が追い付かないという感覚は、おそらく誰しもありますよね。

古閑 そうだと思います。僕は高校を途中で離脱したんですけど、そのときの感覚を引きずってる可能性もあるし、そのままのメンタルで大人になっているんじゃないかなと。そういう思いを抱え込んでいる人もいると思うし、曲にしてみようと思ったんですよね。

――「ECG(feat.RINO)」は、2.5次元のサウンドをイメージしたそうですね。

古閑 はい。“ECG”は心電図(Electrocardiogram)のことなんですが、自分のなかでエレクトリックだったり8bitサウンドのイメージがあって。

小野 ユアネスにしては珍しくハイハットが裏に来るリズムなので叩いていて楽しかったです。

――踊れる感じもありますね。

古閑 ちょっとライブも意識していますね。踊れる感じもありつつ、大人っぽさやテクニカルなところを取り入れながら、僕らの演奏に落とし込んだというか。

田中 リフっぽいベースラインなんですけど、古閑が求めることと自分の考えを入れながら、メンバーに対して「喜んでくれるかな」という感じでフレーズを決めていって。ちょうど小野ちゃんと一緒にリズム隊で練習してるんですけど、苦労しつつも、かなり安定感が出てきました。

田中雄大(Ba)

黒川 この曲の歌録りは楽しかったです。複雑なリズムの曲だと自分のなかにメトロノームを鳴らす(リズムをキープする)ような感覚があるんですけど、「ECG」は体のノリと歌唱がバッチリ連動してるので。

田中 RINOさんのボーカルもすごくよくて。

黒川 すごく特徴的な歌い方をされる方なんですよ。ボーカルのエディットは僕がやらせてもらったんですが、RINOさんの歌だけでしっかり成り立っていて。すごく贅沢なツインボーカルになったし、本当にありがたいです。

――「a couple of times」はダークファンタジー的な世界観の楽曲。

古閑 ある女の子の物語を描いているんですよ。ヒロインのはずだったのに、悪い友達と遊んだり、ドラッグに手を出してしまったり。そういうことを長く積み重ねているうちに、思い描いていた道とは違うところに来てしまった……という。

古閑翔平(Gt/Programming)

――先ほども話に出てましたが、基本的に打ち込みで構成されていて。ライブではバンドでアレンジし直すということでしょうか?

田中 そうですね。練習の段階では他人の曲をコピーしているような気持ちで演奏しているんですけど(笑)、それもまた面白いし、より丁寧に演奏しなくちゃと思ってますね。ライブの演奏がひとつの正解になるから、その得点を上げたいという緊張感もあります。

黒川 英語詞なのもあって、歌のテイストが洋楽っぽいんですよ。普段はほとんど洋楽を聴かないんですけど、レコーディングの前にいろいろ聴いてみて、「こんなにヒソヒソ声で歌ってもいいんだな」とか参考にできるところもあって。エフェクトも使っているし、ちょっと飛び道具みたいな歌になってますね。

――続いては「人生の時間割」。すごいタイトルですね……。

古閑 そうですね(笑)。何て言うか、自分よりすごい人が努力しているのを見ると、自分がさらにちっぽけに見えるじゃないですか。たまたま読んだ「ようこそ!FACTへ!」(魚豊)というマンガに「全てはただの努力になってしまう」というセリフがあって、その言葉にハッとさせれたのもこの曲を作ったきっかけですね。

黒川 “隣の芝生は青く見える”みたいな話なんですけど、そういうときにがんばれる人間と自暴自棄になっちゃう人間がいると思うんですよ。シリアスなテーマではあるんだけど、サウンドはかなり楽しい感じで。歌唱に関してはサウンドに近づけようと思ってました。この曲もボーカルにかけたエフェクトが効果的で、そのことによって楽曲の景色がバッと見えてきましたね。

――アレンジはエレクトロスウィング。ジャズとエレクトロを融合させたサウンドですね。

田中 なのでアップライトのベースを弾いてます。この曲もチャレンジだったんですけど、他の曲と同じく、古閑がイメージするフレーズと自分の解釈のキメラみたいな感じになってますね。テンポも速いし、ピッチも大事だし、めちゃくちゃがんばりました(笑)。

小野 テンポが速いうえにちょっと跳ねてるんですよ。レコーディングのときに「スネアのタイミングを少し遅らせたほうがいいんじゃない?」という話になって、それも取り入れて。いろいろと勉強になりましたね。

――そして「命の容量」は、ミニアルバム『Ⅶ』の中心を担う楽曲。

古閑 はい。いちばん先に出来たのは「ECG(feat.RINO)」なんですよ。ファンコミュニティ(ハムスター伝説)向けの配信のときにファンの皆さんの意見を聞きながら作った曲なんですけど、ミニアルバムのテーマが鮮明になったのは「命の容量」ですね。さっき家族の話をしましたけど、それ以外にも「僕の人生のなかで、この人にあと何回会うんだろう?」みたいなことをけっこう考えるんですよ。嫌なことをされたときに「この人とは一生会わないから、気にしない」と思ったり(笑)、逆に「あと何回会えるかわからないから、優しく接しよう」ということもあって。自分の心を制御するひとつのキーワードなのかなと。

――エモーショナルなバンドサウンドもこの曲の魅力。既にライブでも披露されてますね。

古閑 最初は不安だったんですよ。これまでの僕らのライブは楽しい感じで終わることが多くて。「命の容量」を最後に演奏するとぜんぜん違う雰囲気になるんですよ。僕らの人間性みたいなことはいったん置いておいて、より深く楽曲を聴かせることが大事というか。最初はお客さんも「え、これで終わり?」みたいな感じだったと思いますけど、いい感じになってきてますね。

黒川 この曲をライブで歌うのは……めちゃくちゃ難しいです。“あと何回会えるだろう?”みたいなテーマもそうですけど、言葉で伝えられるのは僕だけなので、しっかり歌わなくちゃと。あと、単純にキーが高いんですよ。(高い音を)必死で出そうとするのも、いいスパイスになっていると思います。

古閑 最初「裏声でいい?」と言われたんですけど、「いや、そこは地声で」と(笑)。気合いで歌ってもらいました。

黒川 丁寧に歌うだけが正解じゃないですからね。特に「命の容量」はどれだけ訴えかけられるかがポイントになると思うので、がんばります。

――3月8日には東京・Zepp DiverCity(TOKYO)でワンマンライブ「ONE-MAN LIVE 2024 “Life Is Strange”」を開催。ライブに対する意識も変化していますか?

古閑 そうですね。コロナを経て、声を出せるようになったじゃないですか。僕らもちょっと前まで「手を上げて」「声を聞かせて」みたいなところに持っていこうとしてたんですけど、今はそこを意識しなくていいのかなと思っていて。僕らの強みはそこではないと思うんですよ、もともと。映画を観ているようなライブというか、来てくれた人たちが自分自身と向き合えるきっかけになったらいいな、と。今回の『Ⅶ』によって、その方向がより固まってきたし、メンバー間の意識の統一ができてたのかな思います。

田中 僕の家族の話なんですけど(笑)、母親はあまり音楽に興味がない人で、普段は「なんかがんばってるみたいだね」くらいなんですよ。でも、あるとき「お客さんは命がけで来てるんだからね」みたいなことを言ったんです。ライブハウスに行くためには時間もお金も必要だし、ワンマンだったら2時間くらい立ったままで聴いてくれるじゃないですか。そういうパワーを僕らのために使ってくれる人がすごく増えてきているので、より一層「ただでは帰さない」という気持ちで演奏したいと思ってます。今の僕らの目標はZepp DiverCity公演ですけど、その前にもいろいろとライブはあるので、全部を巻き込んで進んでいけたらなと。

小野 より丁寧に演奏したいと思ってます。それこそお客さんは“命の容量”を使って会場に来てくれるので、こっちも同じように“命の容量”をぶつけていきたくて。ライブを通して、そのことを伝えたいですね。

黒川 みんながすごくいいことを言ってくれたので、加えることはないですね(笑)。自分としては「もっとちゃんとしないと」って思ってます。曲を書いているのは古閑ですけど、歌を任されているし、言葉でアウトプットするのは僕なので。Zepp DiverCity公演もそうですけど、クオリティを高く保って、「また来たい」と思ってもらえるライブをやらなくちゃいけないですね。

Text:森朋之 Photo:小境勝巳

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<ライブ情報>
ユアネスONE-MAN LIVE 2024 "Life Is Strange"

2024年3月8日(金) 東京・Zepp Divercity (TOKYO)
開場18:00 / 開演19:00

料金:全席指定 S席6,900円(SOLD OUT) / A席4,400円
※入場時ドリンク代が必要
https://w.pia.jp/t/yourness2024/

ASH DA HERO presents "GACHINKO" TOUR 2024

2024年4月28日(日) 福岡・DRUM Be-1
開場17:15 / 開演18:00

出演:ASH DA HERO / ユアネス
料金:5,000円
※入場時ドリンク代が必要

<リリース情報>
ユアネス デジタルシングル「ECG (feat.RINO)」

配信中
https://yourness.lnk.to/ECG

ユアネス 2ndミニ・アルバム『Ⅶ』

2024年2月7日(水) リリース
価格:2,970円(税込)

【収録内容】
1. Gemini
2. isekai
3. ECG (feat.RINO)
4. a couple of times
5. 人生の時間割
6. 命の容量
7. Farewell

配信リンク:
https://Yourness.lnk.to/VII

ユアネス公式サイト:
https://yourness.jp/

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