温暖化で冬は年々暖かくなるのか!?暖冬でも「ドカ雪」注意の理由は?気象予報士が解説

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「温暖化」という言葉を一般に聞き慣れるようになって、もうかなりの年月が経ちました。

たしかに夏は猛暑の年が圧倒的に増えていて、「年々暑くなっているなぁ」という実感がありますが…、冬はどうなのでしょうか。年々暖かくなっているわりには大雪のニュースを毎年聞くような気もするし、夏ほどハッキリ温暖化を感じないかもしれません。

今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、温暖化にまつわる素朴な疑問に答えてもらいます!

温暖化は「長い目で見て」気温が上がる現象

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地球温暖化とはものすごくざっくり言えば「昔と比べて地球全体の気温が上がっていること」ですが、この「気温」というのは、じつはわりと長い期間の「平均」の気温を指しています。

「平均」と聞くと、夏も冬も合わせた1年間の平均かな?と思いきや、実際には10年とか20年とかそのくらい長いスパンの平均の話なのです。

たとえば「1900年を中心とした20年間の平均気温(=1890~1910年の平均)よりも、2000年を中心とした20年間の平均気温(=1990~2010年の平均)のほうが高い」というのが、「温暖化している」ということ。

もともと気温は自然の現象なので年によっていろんな気温があるのは当たり前ですし、温暖化しているからといって必ずしも年々暑くなっている必要はないのです。

たまに前年より気温の低い年があったとしても、長い目で見て全体的に上がっていれば「温暖化している」ということになります。

温暖化は「極端な現象」を増やす

現在、地球全体の気温は長い目で見て上がっているわけですが、それによって何が起きているのでしょうか。ざっくり言うと、温暖化は「極端な現象」を増やします。

極端な現象というのは、極端な猛暑、極端な寒波、極端な大雨、極端な雨不足などです。

つまり、たとえ地球全体で見て気温が上がっていても、一部の地域では温暖化のせいで寒くなることもあり得る、ということになります。

温暖化が進むと地球の大気の温度が変わるだけでなく世界各地の海の温度も変わり、今までとは異なる場所で雨雲が発達するようになったり、寒波を引き起こす強い寒気の通り道が今までと変わったりして、「これまでになかった気象現象」が増えるためです。

温暖化でドカ雪が増える!?

温暖化が日本に与える影響のひとつとして最近注目されている研究が、冬の日本海側でドカ雪が増える、という予測です。

もともと雪や雨というのは空気中の水蒸気が氷や水の粒になったものですが、温暖化が進むと空気中に含むことができる水蒸気の量が増えることがわかっています。

つまり、温暖化は雪や雨の材料を増やすということ。

そして、さほど気温が低くない地域であれば、温暖化で今よりも雪が降らなくなる代わりに雨がたくさん降ることになりますが…、ある程度気温が低い場所だと温暖化後も雨にならず、雪のままで降る量が多くなる、つまり大雪に見舞われる頻度が高くなるおそれがあるのです。

ほかにも日本海の海面水温など様々な要素がからみ合って、ドカ雪が増えるだろうという結論を多くの研究者が出しています。

暖冬は温暖化後の予行演習!?大雪への備えを

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2023年から2024年にまたがる今冬は、当初の予想通り暖冬の傾向となっています。

そしてこの暖冬の状態は、近い将来経験するであろう温暖化後の世界の予行演習とも言える状況なのです。

冬全体の気温が高いなかで急にドカ雪が降るような場合、いつも以上に雪崩が起きやすくなるなど、災害の危険性はいっそう増します。

また、数日程度の一時的な期間だけ強烈な寒波に襲われて、通常の冬ではありえないような気温のアップダウンによって体調をくずすことも。

「今年だけたまたま暖冬だから…」と考えるのではなく、安全で健康にすごせるよう備えていきましょう。
今備えることが、将来のための「転ばぬ先の杖」になるのです。

■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。Instagramは「@megumi_kitchen_and_atelier」。

編集/サンキュ!編集部

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