【DeNA】「143安打打ちなさい」師匠・柳田悠岐の檄に応える! "ハマのギータ”梶原昂希が狙う3年目のブレイクスルー

☆“ギータ塾”での学び

“ビュッ”。宜野湾のグラウンドに空気を切り裂く音とともに、バックスピンのかかった白球が空高々に舞い上がる。プロ3年目となる梶原昂希は「去年怪我してシーズンを終えてるんで、 最悪B組スタートになっても仕方がないかなっていうような感じではいたんですけど、1軍キャンプに抜擢していただけたっていうのは、去年の怪我する前の結果の期待も込めて連れてきてもらえてると思って」と立ち位置に感謝し、改めて表情を引き締めた。
ルーキー時の22年はスタメンでリーグ初となる4安打の固め打ちデビュー。昨年は8月に一軍でスタメン出場を果たすなど一気に飛躍するかと思われたが、守備で足首を痛めシーズン終了と、消化不良の年となってしまった。

悔しさを力に変えるべく、オフは一昨年同様ソフトバンクの柳田悠岐に師事し、大きな学びを得た。「今年は色々見て感じ取ろうと思ってたんで。ギータさんのバッティング練習をずっといろんな角度から、直接自分で見て感じたものを、身体に落とし込むイメージでやってました」と基本的には教わる前に観察し、思考を整理してから実践に移していく作業を繰り返した。

その中でも重点に置いたのは「やっぱり身体の使い方ですね。軸の角度、その方向とか。ギータさんのスイングは軸が全然ぶれないんです。重心も変わらずに。結構こうガンと思いっきり振って、下から打ち上げてるように見えるんすけど、実際ちゃんと見たらめちゃくちゃ上からバーン叩いているんです」と日本を代表する打者の技術の高さを体感。

「簡単に真似してできるようなことじゃないんで、フォームを意識はしてないんですけど」と理解したうえで「フォロースルーなど、バットの軌道がどういうふうな出し方になれば、ああいうスイングになるかなっていうのは自分の中で、色々試行錯誤しながらやっています。軸の回り方などもイメージの意識づけをしてるんで、ちょっと寄ったような形にはなってるかもしれないですね」と分析。結果的だが長身から豪快にカチ上げるフォームは、トリプルスリー経験者のそれに被って見えた。
☆泣き所を埋める存在に

三浦監督も課題にあげる1、2番問題。昨年はシーズン通して固定できず、トータルで1番が.287、2番が.268と低い出塁率に終わった。その座に「1、2番が空いてるっていうことなんで、僕としては狙わざるを得ない。ヨダレが出るぐらい欲しい席です」とキッパリ名乗りを上げた。
しかしその出塁率に関しては「僕は極端に低いんです…早打ちは持ち味でもあるんですけど、ヒットだけじゃ3割打っても3割しか出塁率がないという、きつい状況になってしまうんで」と明確な課題を挙げた。

それには「三浦監督が出率をテーマに上げてる以上、どうしてもそこを上げないと、そこの席は取れない」と熟知しているからこそ「いかにフォアボールを稼ぐか」という難題に取り組んでいる。積極性とボールの見極めの両立を目指しているが「フォアボールを取りに行こうとすると、結局ストライクボールに手が出なくなったりとか、逆に打ちにいくとボール球に手出したりして、結局自分を苦しめる」と難しさは重々理解している。

そこで「打席内で振れば振るだけ自分を苦しめると思ってるんで、なるべくいかに1試合で少ないスイングで結果を残すか。狙い球を絞るのもそうですけど、やっぱ相手のピッチャーの特徴だったりとかも考えながら。色々噛み合わないとこも出てくると思いますけれど、そこはやっぱり実戦感覚でしかできない部分でもあると思う」と実戦形式で最適解を導き出していく。

また上位打線に入るうえで大きな武器となる足もある。
「だからそれこそフォアボールでも塁に出られば、チームの作戦の幅も広がりますし。足が使えるのは、うちのチームの数少ない個性だと思うんで。アウトカウントを増やさずにランナーを進められる作戦は盗塁が一番。うちだったら林(琢真)や、 村川(凪)さんの足のスペシャリストと呼ばれる選手がいる中で、それと並ぶぐらいのタイムは持ってる」とニヤリ。

「1年目のファームの盗塁数が2なんですよ。 去年はファームで15、上でも初盗塁を1つしてて、数字もだんだんついてきてるんで」と上昇傾向にあり「秋の個別練習でスチールのスタート、スライディングとかに特に重きを置いてやらせてもらっています。もっと練習して、アウトになることを恐れずにオープン戦でも機会があればどんどん狙っていきたいですね。決まれば自信になるし、 失敗しても反省して次に活かせるかなと思うんで。トライすることは絶対かなと」と意欲を示した。
ポジションとタイプの被る注目のドラフト1位・度会隆輝にも「お互い高め合って、吸収し合いたい。若い選手が出てこないのがベイスターズの課題でもありますから、この世代で引っ張っていきたいですね」とチームの活性化を担うと宣言。
そのうえで「怪我をしないことを大前提に、ギータさんから与えられた目標の年間143安打。143試合あるなかでの143安打はレギュラークラスで打席に立たせてらえないと出ない数字なので。そこのクリアが今シーズンの僕の目標になります。 自主トレで他球団の選手で僕だけ受け入れてくれたギータさんなりの、レギュラー取れよってメッセージだと思うので」と目を輝かせる。

「チームのために自分を進化させつつ、一緒に恩返しもできるとすれば、それはやっぱり日本シリーズで戦って、僕らが勝つのが一番だと思います」と言い切った梶原昂希。“ニュージェネレーション”の旗手として、群雄割拠の戦いを勝ち抜いて、魅せる。

取材・文●萩原孝弘

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