臼井さん 性別変更認められる 適合手術なし、家裁津山支部決定

審判書を手に笑顔を見せる臼井さん(左)と大山弁護士=岡山市北区南方

 性別適合手術を受けていないトランスジェンダーの臼井崇来人(たかきーと)さん(50)=岡山県新庄村=が戸籍上の性別を女性から男性に変更するよう申し立てた家事審判で、岡山家裁津山支部は7日、性別変更を認める決定を出した。最高裁は昨年10月に性別変更の際に生殖能力をなくす適合手術を事実上求める性同一性障害特例法の規定を憲法違反と判断しており、同支部も「規定は違憲で無効」と結論付けた。

 臼井さんは2016年にも同様の審判を申し立てたが、手術を受けていないことを理由に一審、二審とも退けられ、19年の最高裁でも特例法の規定を「現時点で合憲」として認められなかった。

 岡山市内で開かれた記者会見で臼井さんは「訴え続けてきた思いが通じた。大きな扉が開いた」と喜んだ。同席した大山知康弁護士も「特例法の改正を待たずに、手術を伴わない性別変更が家裁段階で認められると示すことができた」と意義を強調した。

 昨年10月の最高裁決定は別の当事者の審判で出され、特例法について卵巣や精巣の除去といった手術を前提とする「生殖能力要件」を違憲で無効と判断した。一方で、変更後の性器部分に似た外観を必要とする「外観要件」に関しては高裁段階に審理を差し戻した。

 臼井さんは16年の審判で過去のホルモン治療により外観要件を満たすと判断されており、最高裁の違憲決定で生殖能力要件が無効となったことを受けて昨年12月に改めて性別変更を申し立てていた。

 岡山家裁津山支部の工藤優希裁判官は審判理由で、最高裁決定を踏襲し生殖能力要件を不要とした上で、外観要件を含めて「性別変更に必要な要件を全て充足する」と判断した。

 津山支部決定を受け、新庄村が戸籍の性別変更手続きを進める見込み。臼井さんは現在、女性のパートナー(46)とその息子(13)と暮らしており、「これで結婚できるようになり、一般的な家族として過ごせる。次の人生が始まった」と笑顔を見せた。

 性同一性障害特例法 自認する性別が出生時と異なるトランスジェンダーの人などが戸籍上の性別を変更する要件を定める。2人以上の医師から性同一性障害と診断された上で(1)18歳以上(2)婚姻していない(3)未成年の子がいない(4)生殖機能がない(5)変更後の性別の性器部分に似た外観がある―の要件を全て満たせば、家庭裁判所の審判を経て変更が認められるとしている。最高裁は昨年10月、生殖能力要件を違憲とした一方、外観要件については審理を高裁に差し戻した。

© 株式会社山陽新聞社