【共同通信杯】2歳王者ジャンタルマンタルに暗雲 朝日杯FS覇者の年明け初戦の勝率は10%台

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朝日杯FS勝ち馬の年明け初戦は苦戦傾向

近年の共同通信杯はクラシックの最重要ステップレースと化している。近10年の勝ち馬のうち、14年イスラボニータ、16年ディーマジェスティ、21年エフフォーリアの3頭が皐月賞を制覇。2着以下に敗れた馬からも、15年ドゥラメンテ、21年シャフリヤール、23年タスティエーラと3頭のダービー馬が出ている。GⅢながらその存在感は皐月賞トライアルの弥生賞ディープインパクト記念やスプリングSを上回る。まさにクラシックの最重要ステップレースといっても過言ではない。

今年の共同通信杯も豪華メンバーとなった。中でも主役はジャンタルマンタルだ。昨年10月の新馬戦を快勝。続くデイリー杯2歳Sも好位から突き抜け、悠々のデビュー2連勝。そして前走の朝日杯FSは中団追走から直線で早めに先頭に立ち、危なげなく押し切り。無傷の3連勝でGⅠ初制覇を果たすとともに、最優秀2歳牡馬に選ばれた。課題だった折り合いも一戦ごとに成長。死角の見当たらない今回の本命馬といえる。

しかし、そんなジャンタルマンタルにもデータという壁が立ちはだかる。それは朝日杯FSの勝ち馬が年明け初戦でことごとく苦戦しているという事実だ。01年以降の勝ち馬に限ると【3-7-5-7】勝率13.6%、複勝率68.2%。現在5連敗中となっている。また、1番人気に推された馬に限っても【2-6-2-4】勝率14.3%、複勝率71.4%。単勝1倍台に推された7頭のうち、勝利したのが18年弥生賞のダノンプレミアムだけという事実は衝撃的ですらある。データを信頼するなら、少なくとも馬単や3連単の1着固定で買うのは危険だ。

この結果は偶然なのだろうか。否。個人的には「そんなわけがない」と声高に訴えたい。というのも、朝日杯FSを勝った馬はクラシックなり、NHKマイルCなり、春のGⅠを大目標に据える。それゆえ、年明け初戦には前哨戦仕様の仕上げで挑むことが多く、伏兵に足元をすくわれがちなのだ。代表的な例を挙げれば、19年共同通信杯のアドマイヤマーズや22年弥生賞のドウデュース。いずれも1番人気で2着に敗れたが、勝ったのは前走で1勝クラスを勝ったばかりの馬だった。このように前哨戦において、実績馬が賞金加算を狙う格下馬に敗れるシーンは、今後も幾度となく見られるに違いない。

今年の共同通信杯にもクラシックを目指して賞金加算を目論む馬がそろった。とりわけホープフルSが不完全燃焼の5着だったミスタージーティー、昨年の千葉サラブレッドセールで最高価格の1億円(税抜)で取引されたベラジオボンド、友道康夫厩舎のジャスティンミラノは早くもクラシック候補の呼び声高い。それだけにジャンタルマンタルといえども楽な競馬にはならないはず。ここはデータを信じ、是非とも高配当を手にしてほしい。

《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。



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