「避難所ガチャ」でいいの? 温泉旅館か体育館か 

古賀内閣府副大臣(左)とともに宮元加賀市長(右)らの要望を聞く馳知事(左から2人目)=1月24日、加賀市内の旅館

 「私ね、きのうは体育館に行ってきました」

 馳浩知事が先月、2次避難所となっている加賀市の旅館を訪ねた際、視察に訪れた内閣府の古賀篤副大臣や地元の宮元陸加賀市長らに、こんな話を始めた。

 前日に馳知事が訪問した「金沢市の体育館」も避難所となっており、奥能登の被災者が身を寄せている。知事はその体育館についてこう述べた。「そこは暖かいし、いいけども、やっぱり、そこにおられた人よりも、ここにおられる人のほうが…」。その言葉を受け、古賀副大臣はこう言った。「全然違いますよ、居心地が」

 避難所の設備や食事に「差」があるのは事実だ。政府と県が進める2次避難でも、どの施設に割り振られるか不確定要素がある。避難先として温泉旅館に案内された被災者もいれば、ビジネスホテルに案内された被災者もいる。

  ●「当たり外れ」

 このような状況を「避難所ガチャ」と呼ぶ人が出始めている。コインを入れてレバーを回せば、おもちゃ入りのカプセルが出てくる「ガチャガチャ」のように「当たり外れ」があるというわけだ。

 ただ、何が「当たり」で、何が「外れ」か、一概には言い切れない部分もある。

 旅館を視察した際、馳知事は古賀副大臣に向け、こう言った。

 「この地域には3.16があります。従って、ここにお願いできるのも3月初めがリミットになる」

 3月16日の北陸新幹線敦賀開業で南加賀の温泉地に観光客が訪れて泊まるため、被災者は旅館を出る必要がある…というのだ。この旅館に2次避難している輪島市の70代男性は「見通しが全然ないのに考えられない」と、やりきれない表情で話した。

 被災者にとって「避難所ガチャ」で住環境を大きく左右されないことが本来あるべき姿のはずだ。

 災害支援の建築を手掛け、2014年に建築界のノーベル賞と呼ばれる米プリツカー賞に選ばれた建築家の坂(ばん)茂氏はこう強調する。「避難所だから仕方ないではなく、人が住む以上、しっかりとした環境を整えるべきだ」。その言葉を頭に置き、避難所の実情を探りたい。(能登半島地震取材班)

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