エンビード離脱でシクサーズに試練の時。オールスター初選出のマキシーは「これまで以上に競争心を持って戦わなければ」<DUNKSHOOT>

フィラデルフィア・セブンティシクサーズがピンチに陥っている。今季序盤、チームは開幕2戦目から8連勝を飾るなどリーグ上位に君臨していたものの、1月25日以降の7試合で1勝6敗と急落。2月6日時点で今季成績はイースタン・カンファレンス5位の30勝19敗(勝率61.2%)となっている。

不振の理由は主砲ジョエル・エンビードの離脱にほかならない。大黒柱は1月30日の試合で左ヒザを負傷。外側半月板の手術に踏み切り、4週間後に再検査をすることが発表された。

213cm・127kgのビッグマンは、今季34試合の出場で平均35.3点、11.3リバウンド、5.7アシスト、1.15スティール、1.76ブロックという超人的なスタッツを残し、出場ゲームでチームは26勝8敗(勝率76.5%)と大きく勝ち越していた。

現状、シクサーズはプレーオフ自動出場ラインの6位インディアナ・ペイサーズ(29勝23敗/勝率55.8%)に2.5ゲーム差をつけているとはいえ、エンビード不在の15試合で4勝11敗(勝率26.7%)と苦戦していることを考慮すると、厳しい状況に立たされたと言わざるを得ない。
今季はオフェンシブ・レーティングがリーグ6位の119.0、ディフェンシブ・レーティングも同9位の113.5と、攻守両面でバランスの良さを発揮していたが、ここ7戦で見るとオフェンスが114.2で21位、ディフェンスは125.8で29位と明らかに悪化している。

エンビード不在の期間、シクサーズは4年目のポール・リードを先発センターに起用しており、今後も彼とマーカス・モリスSr.らで穴埋めしていくことが予想される。現地8日のトレード・デッドラインまでに豊富なフォワード陣を駆使して即戦力のビッグマン獲得に動く可能性もあるが、よほどの大物が手に入らない限り、既存戦力で切り抜けていくこととなるだろう。

そこでチームを引っ張ることが期待されているのが、第2の得点源タイリース・マキシーだ。

キャリア4年目の今季、オールスターに初選出された188cm・91kgのスコアリングガードは、ここまで平均25.9点、3.5リバウンド、6.4アシスト、1.02スティールと自己最高のシーズンを送っており、2度の50得点超えも達成。抜群のスピードとボディバランスからフィニッシュへ持ち込むだけでなく、司令塔としても期待される23歳のパフォーマンスが、エンビード不在のシクサーズの命運を左右するといっても過言ではない。 そのマキシーは先日、エンビード不在の試合でフォーカスすべきことについてこう口にしていた。

「自分たちの競争心、それが大切なことのひとつだと思う。つまり、僕たちはものすごくハードにやっていなかなきゃいけない。彼(エンビード)がいようがいまいが大事なことだけど、彼がいないとなると、僕らはこれまで以上に競争心を持って戦わないといけない。もっとハードにプレーする必要がある」
今季のシクサーズは、ニック・ナース新HC(ヘッドコーチ)の下、エンビードとマキシーに加えて、トバイアス・ハリス、ケリー・ウーブレイJr.、ディアンソニー・メルトンも平均2桁得点を記録。

さらにキャリア16年目のニコラ・バトゥーム、13年目のモリスSr.、12年目のパトリック・ベバリー、11年目のロバート・コビントンといったベテランが揃っている。彼らがチームをまとめつつ、コート上で必要に応じてステップアップすることができれば、エンビード不在の期間を勝率5割以上で切り抜けることができるかもしれない。

もっとも、エンビードがいないことによって、相手チームは積極果敢にペイントエリアを攻めてくることが予想されるだけに、守備面でもチーム全体で結束していくことが必須。マキシーを中心に、シクサーズが残りのシーズンをどのように戦っていくのか注目だ。

文●秋山裕之(フリーライター)

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