【リニア】懸念の47項目中30項目が『未解決』…静岡県「基本的には全部解決しないと…」

静岡県 森貴志副知事(5日):「これまでも関係の皆様方のいろいろな話とか説明等があり、少し混乱しているのではないかと私自身が認識していて、それらの整理も含めて対話に要する事項について、過去の経緯も含めて説明し、これから今後どういう方向に進めていくのかについて話したい」

県が47項目の「懸念」示す

5日、静岡県の森貴志副知事がリニア問題に関する会見を開きました。そのテーマは「47項目の懸念」。

リニア新幹線の工事をめぐり、県は2019年、「引き続き対話を要する事項」として、水や生態系への影響など、47項目の懸念を示した確認書をJR東海に示しました。

国が『有識者会議』設置 去年12月に報告書まとめる

その後、県とJRの間で議論が進められていましたが、国土交通省は、県とJRの対話が進まないことに危機感を持ち、国の有識者会議を設置。去年12月、報告書を取りまとめました。

リニア有識者会議 中村太士座長(去年12月):「今回報告書ができたので、大臣にお渡ししたいと思います。よろしくお願いします」

国の有識者会議が環境保全に関する最終報告書を斎藤国交大臣に提出し、議論は一区切りとなりました。

川勝知事「解決しないまま報告書を取りまとめた」

しかし、川勝知事は-

静岡県 川勝平太知事(去年12月):「トンネル掘削による流量の減少が予測される沢周辺の生態系について、どのような影響が生じる可能性があるか、事前に予測されていない。こうした課題に対して、有識者会議では残念ながら十分に議論されずに、解決されないまま報告書を取りまとめられた」

川勝知事は国の有識者会議での報告書を踏まえて、県の専門部会で改めて議論する方針を示しています。ただ、こうした県の対応に、有識者会議は…。

中村太士座長(去年12月):「今回、議論すべき論点が残されているとは認識していない。我々が論点整理しても、県の専門部会でチェックされて、ほとんど課題があるとしかされなくて」

また川勝知事は、南アルプスの環境保全の問題について、「2037年までに解決すればいい」との認識を示しています。

川勝知事(1月4日):「(リニア開業が)“2027年以降”となったので、南アルプスの自然、生態系を保全することとリニアの両立、この件についても2037年までに解決すればいいと私は受け止めている」

川勝知事はあくまで2037年の全線開通までに県が懸念する問題は解決すればいいとの考えを示したのです。

こうした動きに、異例となる説明会を開いたJR東海側は。

JR東海 木村中専務執行役員(1月24日):「当社が進める中央新幹線について、静岡県知事のほうから様々な発言があって、私どもは大変困惑をしている状況」

森副知事「47項目中30項目は未解決」

県とJR東海との溝が深くなる一方のリニア問題。そんな中、5日行われた会見で森副知事は、県が懸念する水や生態系への影響など47項目について言及しました。

静岡県 森貴志副知事:「47項目の評価として、このような数字を出した。生物とトンネルは0となっているが、これは対話をしている最中であり、その対話の中でもちろん進捗はある。ただ一応終了したものがない。数字としてはこういう数字を出している」

県側はJR東海との議論で指摘したことや疑問点が解決したのは、47項目のうち水資源に関する17項目にとどまるとしています。

一方、大井川の濁りや水温の変化による生物への影響やトンネル掘削で出来る盛り土が斜面崩壊する可能性などの懸念を示し、「生物多様性」や「トンネル発生土」の問題など、残る30項目は未解決だという見解を示しました。

森副知事「基本的には47項目解決しないと…」

県が2019年にJR東海に47項目の懸念を提示してからすでに5年が経過。依然として終わりが見えない状況に記者からも質問が…。

静岡県 森貴志副知事
Q.全て終了するには、まだかなり長い時間がかかるのではないかと思うが、県としてどのように考えている?

A.「0と言っても、基本的に終了はしていないが、議論が進んでいるので、この進捗については正直申し上げて、いつまでというのは想像がつかないんですけれども、そこら辺は解決できるように、スピード感を持って専門部会も含めて、会議を開催して解決していこうと思う」

県側は生態系への影響や発生土などついて引き続き、JR東海と協議を継続していくとしています。

森貴志副知事
Q.47項目が未了のままでは、少なくとも着工はできない?

A.「未了はそうですね。ただそれが解決しなくても、もしかすると別な手法でできる場合もあるかもしれないが、基本的には47項目全部」

改めて、工事着工の見通しが見えない状況が浮き彫りとなったリニア中央新幹線。今後議論はどのように進んで行くのでしょうか。

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