プロレスラーの坂口征夫（５０）が７日、ＤＤＴ新宿ＦＡＣＥ大会で現役を引退した。HARASHIMAとの一騎打ちは１５分３７秒、蒼魔刀からの片エビ固めで３カウントを許し、濃密なレスラー人生の介錯を受けた。
片膝をつき「打ってこい」と言わんばかりに両手を広げた。HARASHIMAの必殺技、ランニングダブルニーアタックを連続で浴び、ついに力尽きた。総合格闘技から転身した征夫らしい武骨な引退試合だった。序盤からグランウンドの攻防を５分繰り広げた。互いに胸を出し、全力のミドルキックを打ち合った。最初に７発、乱れ打ちの後は１２発ずつ、濃密な一撃を１０分以上打ち合った。一気にペースを上げ、二段蹴りを頭部に浴びせるなど攻めたが及ばなかった。
征夫は「悔しい。勝ちたかった」と負けん気を見せ、HARASHIMAに「ずっとＤＤＴを守ってくれて、自分が気づいたらそういう立ち位置にいた。自分の役目はお返ししたい。強いままでＤＤＴを守ってください」と最後まで団体を思いやった。
〝世界の荒鷲〟こと名レスラー・坂口征二を父に、俳優の坂口憲二を弟に持つ征夫。２００７年にパンクラスでプロ格闘家としてデビューし、０８年大みそかには「Ｄｙｎａｍｉｔｅ！！」に出場。１０年４月に引退セレモニーを行ったが、同年１２月に現役復帰。１２年からはプロレスに参戦し、１４年１０月からＤＤＴ所属になり活躍。KO-D無差別級やKO-Dタッグ、アジアタッグなどのタイトルを手にした。
先月１５日の引退発表会見から３試合のみの引退ロード。潔い引き際だった。セレモニーでは憲二からのビデオメッセージが届いた。「アニキは小さい頃から戦うことが大好き。ケンカもたくさんしていましたね。いつも僕には『憲二、やるかやられるかだよ』と言っていましたね。アニキがやってきたことは２世とか関係なく、多くのお客さんに喜んでもらえたと思います。これからは、体に気をつけて、やるかやられるか、アニキのスタイルで突っ走ってください」とねぎらった。
征夫は「このリングにいたことを誇りに思う。こんな自分ですけど、応援してくれて感謝しています」と感慨を口にした。ＤＤＴの発展を願い「オレ以外にもいい選手はくさるほどいるから。まあオレよりいい男はちょっとしかいないけど」と渋く明るくマイクを締めくくった。
父の征二からはこの日の朝に「きょう最後だろ。無事にリングを降りてこいよ」と、憲二からは前日に「悔いなくやり遂げてくれ」と連絡があったという。「覚えてきてくれたんだと、ありがたかったですね」と感謝。今後については「仕事でも何でも、やるかやられるか。その気持ちで人生を謳歌したい」と前を向いた。「オレがＤＤＴの坂口征夫だ。それだけです」と言って、会見を締めくくった。
（よろず～ニュース・山本 鋼平）
