「真冬並み」ってどういうこと?気温が何℃なら「真冬」?気象予報士が解説

天気予報やニュースでよく「今日は真冬並みの寒さになりそうです」と言っているのを聞きますが、そういえば「真冬並み」って実際のところ「いつ並み」のことを言っているのでしょうか。
具体的に気温が何℃以下なら「真冬」になるのか、基準があるのでしょうか…?

今回は、野菜ソムリエ・気象予報士・防災士の資格を持つ植松愛実さんが、日々の生活に役立つ&誰かに教えたくなるお天気の豆知識を解説します。

そもそも「並み」は意外と深い表現

報道では「真冬並み」のほかにも、「1月上旬並み」や「3月下旬並み」のように、具体的な月や旬の入った表現を耳にすることがあります。
こういった表現はすべて、「平年値」と呼ばれるものを基準にしています。

「平年値」とは、直近30年間の平均のことで、気温の平年値、降水量の平年値、湿度の平年値…といった具合に、あらゆる気象データに関してそれぞれの「平年値」が存在します。
といっても30年分という膨大な量のデータを毎年計算するのは大変なので、平年値は10年ごとに更新すると決められています。

つまり、2024年現在で使われている「平年値」は、1991~2020年の30年間の平均。
そして2031年になったら、2001~2030年の30年間の平均に更新されます。

このように計算された「平年値」をもとにして、たとえば今日の気温が1月上旬の平年値に近ければ「1月上旬並みです」と表現されるわけです。

平均から大きく外れてしまうことも

通常の「~並み」の表現に使われる「平年値」は、その季節ごとの平均的な数字を示しています。
しかし実際には、平均から大きく外れた現象が起きることも。

たとえば今が3月だとして3月の平年値を大きく下回って2月頃の気温になる場合は「今日は3月だけど気温は2月並みです」といった表現が可能ですが…、もし1年でもっとも寒い時期の平年値すら下回ってしまったら、どうすればいいでしょうか。

ここで登場するのが「真冬並み」。
つまり「真冬並み」というのは、「1年でもっとも寒い時期の気温の平年値を下回っている」ということなのです。

「真冬並み」は何℃?

さきほどから説明している「平年値」は観測地点ごとに存在するので、ひとくちに「もっとも寒い時期の気温の平年値」といっても場所が違えば数字も違ってきます。
つまり「真冬並み」は場所ごとにオーダーメイドなのです。

たとえば東京都心では、1年でもっとも最低気温の平年値が低くなるのは1月中旬から下旬にかけてで、その数字は1.1℃。
一方、札幌の最低気温で見ると、1月下旬から2月上旬にかけての-6.9℃というのがもっとも低い平年値です。

そのため、最低気温に関しては東京都心なら1.1℃、札幌なら-6.9℃を下回ると「真冬並み」と表現されることに。
また、全国各地でそれぞれ真冬並みになる場合は、「今日は全国的に真冬並みの寒さのところが多い」ということになります。

オーダーメイドの「真冬並み」を活用しよう

「真冬並み」と呼ばれるような気温は前述のとおり場所によって異なりますが、もともと温暖な地域や都市部においては、最低気温が「真冬並み」ならだいたい路面が凍結しやすくなる寒さです。
一方、寒冷地で最低気温が「真冬並み」になるような場合、水道管が凍結するおそれがあるような冷え込みになります。

天気予報やニュースで風物詩のように使われる用語と思いきや、じつは有用な情報である「真冬並み」。
ぜひちょっとした情報を味方につけて、日々の生活に役立てていきましょう。

■執筆/植松愛実…身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を発信。また、東北や東海、関西にも住んだ経験から、各地の伝統的な食材にも詳しい。野菜ソムリエ、食育インストラクター、気象予報士など保有資格多数。
編集/サンキュ!編集部

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