珪藻土七輪、残された光 無事の9個初出荷 珠洲・鍵主工業

珪藻土を使った七輪を段ボールに詰める鍵主社長=珠洲市蛸島町

  ●「復活へ大きな一歩」

 珠洲市蛸島町の珪藻土(けいそうど)製品メーカー鍵主工業は7日、震災後初めて珪藻土製の七輪を出荷した。地震で製造用の窯が全壊したものの、被害を免れた完成品の一部を発送した。工場の電気は今も止まったままで、設備の復旧も見通せない。それでも、鍵主哲社長(57)は「今回の出荷は復活への大きな一歩だ」と力を込めた。(珠洲支局・谷屋洸陽)

 鍵主工業の工場を訪れると、社長が丁寧な手つきで七輪を段ボールに詰めていた。「日本全国、世界各国の方がうちの商品を待っている」。同社の七輪にはファンが多く、国内のみならず、欧米やオーストラリアなどにも輸出される。

 地震を受け、製造中だった珪藻土の七輪やれんがはほとんどが壊れた。ただ、昨年末に梱包を済ませた一部は無事だったことから、状態を確認した上で、1カ月遅れで顧客の元へ送ることになった。

  ●200個随時発送へ

 社長によると、無傷だった七輪は200個弱で、初日は9個を発送した。残りも随時、出荷するという。

 鍵主工業の工場では、れんがを製造する全長50メートル、高さ約2.5メートルの窯が強い揺れに耐えられず全壊した。修理に必要な費用は約2億円。鍵主社長は「正直、厳しい」と打ち明ける一方で、「会社をやめるつもりはない」と力強い。

 救いは、昨年2月に造った試験用の窯が無事だったことだ。全長約4メートル、高さ約2.5メートルとサイズは小さく、一度に焼ける量は全壊した窯の4%にとどまる。「少ないけど、七輪を作ることはできる。本当に良かった」。鍵主社長は小さな窯に再起の希望を託す。

 会社は今後、在庫の出荷と並行して製造再開の準備を進める。ゆくゆくは試験用以外にも小さめの窯を増設し、生産量を増やしていく方針だ。

 「目標は震災前の生産量に戻すこと。地震に負けることなく、一歩ずつ進み続けたい」と社長。頑丈な珪藻土製七輪に劣らぬ、強固な意志を感じた。

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