「デリスキング」は中国製品の終わりの始まりなのか―シンガポールメディア

中国メディアの環球時報は6日、「デリスキング(リスク低減)」は中国製品の終わりの始まりなのかとするシンガポールのニュースメディア、CNAの記事を取り上げた。資料写真。

中国メディアの環球時報は6日、「デリスキング(リスク低減)」は中国製品の終わりの始まりなのかとするシンガポールのニュースメディア、CNAの記事を取り上げた。

記事はまず、「米国の最大の貿易相手国は長年にわたり中国だったが、昨年時点でメキシコが首位に立った。これはトランプ政権時代に始まったトレンドによる結果であり、企業が事業拠点から地理的に近い国に生産施設などを移転するニアショアリングや企業が事業拠点を置く国と同盟関係や友好関係にある国に限定してサプライチェーンを構築するフレンドショアリングなど、あらゆる地政学的緊張の中でのデリスキングのトップトレンドの一例でもある」と伝えた。

その上で、「企業の移転先はメキシコだけではなく、中国から移転したのは米国の企業だけではない」とし、「企業がより多角化することで自社の利益にかなうと判断するという点では、トレンドはすでにかなり進んでいる」とする、オバマ政権で国家安全保障会議(NSC)の中国担当を務めたブルッキングス研究所ジョン・L・ソーントン中国センターのライアン・ハース所長のコメントを紹介した。

記事は「ではこれは中国製品の終わりの始まりなのか。一つ明らかなことは、製造業が移動しているということだ。中国企業も主に米国の顧客に近づくことを目的としてメキシコに進出している」とし、世界貿易機関(WTO)のエコノミスト、ビクター・シュトルツェンブルグ氏によると、これらの国の多くの輸出の増加は中国からの輸入の増加によってもたらされていると伝えた。

記事は「今はデリスキングが話題になっているが、10年前に『一帯一路』構想として知られる壮大な計画の中で、自国企業に海外工場設立を奨励したのは中国政府だった。『一帯一路』の下で、何千もの中国企業がより低い土地代と賃金を求めて海外に進出した」とし、「地政学的な緊張やその他の紛争がなかったとしても、中国産業の移転は避けられないであろう」とする中国の政府系シンクタンク、中国社会科学院世界経済政治研究所の徐奇淵(シュー・チーユエン)所長のコメントを紹介した。

記事は「大規模な製造業のオフショアリングはこれまでにも何度か行われてきた。中国も現在、先進7カ国(G7)諸国と同様に、よりサービス指向の産業へと移行している」と伝えた。

また「地政学的緊張と中国のサプライチェーン再編にもかかわらず、一部産業の大手は中国への投資を倍増させている」とし、その例として米電気自動車(EV)大手テスラを挙げ、「上海の臨港地区にある既存の工場の隣に巨大な工場を建設中だ。そこでは自動車だけを生産するわけではない。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は昨年、中国政府高官と面会し、中国市場を全面的に信頼していると述べた。テスラと同様に、欧米の多くの企業が売上の大部分を中国に依存している」と伝えた。

記事が徐氏の話として伝えたところによると、2006年の在中外国企業の輸出額は国内売上高の約7倍だった。12年前後はこの割合がほぼ等しく「9000億ドルから1兆ドルの範囲で変動」していた。そして21年までに外国企業の国内売上高は輸出の2倍余りになった。外国企業全体で考えると、そのビジネスの3分の2は「中国で生産し、中国で販売」していることになる。

記事によると、中国で中間所得層が台頭する中、北京に本拠を置くシンクタンク、中国・グローバル化センターの創設者、王輝耀(ワン・フイヤオ)氏は、多国籍企業が「中国には大きな可能性がある」と認識しているとの見方を示した。

記事は「世界は中国製品なしではやっていけない」とし、その例として、中国が昨年、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となったこと、中国はEVのリーダーでもあり、国際エネルギー機関(IEA)によると、18年の世界のEV輸出に占める中国の割合はわずか4.2%だったが、22年には35%となったこと、中国はまた、世界の太陽光パネル生産の70%を支配し、世界の風力発電設備の少なくとも50%を供給していることを挙げ、「したがって、西側諸国が気候変動の目標を達成するために、グリーンテクノロジーのサプライチェーンのリスクを軽減できるかどうかについては、若干の疑問がある」と伝えた。

記事は、シンガポールのリー・クアンユー公共政策大学院の学部長、ダニー・カー氏のコメントとして、「世界がこの(気候)移行にどのように対処できたかを見ると、不可能ではないにしても、非常に費用がかかるのではないかと思う。地球を救いたいなら、誰かの価値観が自分の価値観と異なることを言い続けることはできない」と伝えた。

また、ハース氏のコメントとして「現実は、世界の最先端技術の多くが中国にあるということだ。米国ができるだけ早く前進したいのであれば、中国と協力する必要があるだろう」とも伝えた。(翻訳・編集/柳川)

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