追及され釈明に追われる姿からは、国民の懸念に真摯(しんし)に向き合おうという姿勢は感じられない。大臣の任に不適格であることは明確だ。
盛山正仁文部科学相が、2021年の衆院選で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体から選挙支援を受けていた疑いが浮上した。
これまで盛山氏は関連団体の会合に1度出席したことは認めていたが、選挙支援は否定していた。
朝日新聞によると、それが衆院選の公示前、関連団体から推薦状を受け取ったというのである。盛山氏が推薦状を手に団体関係者と並ぶ姿が写真付きで報道された。
6日の衆院予算委員会で問われた盛山氏は「写真があるのであれば推薦状を受け取ったのではないかと思う」と述べた。一方、「選挙支援を依頼した事実はない」とした。
しかし、翌7日にはさらに教団側との事実上の政策協定に当たる「推薦確認書」に署名していたと報じられた。
同日の予算委で盛山氏は「十分に内容をよく読むことなくサインをしたのかもしれない。よく覚えていない」と述べた。
推薦確認書は教団側が掲げる政策への賛同を求める内容だ。覚えていないのが事実だったとしても軽率のそしりは免れない。
盛山氏は昨年10月、文科相として教団の解散命令を東京地裁に請求した。教団は争う構えで、東京地裁は近く双方の意見を聞く審問を開く。
請求権限者と教団との関係が審理に影響することがあってはならない。疑惑を払拭できないなら、盛山氏は即刻辞任すべきだ。
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自民党は22年、教団と所属国会議員の接点について調査。盛山氏は関連団体の会合に出席し、あいさつしたとだけ回答していた。
意図的に隠していたとすれば問題だ。予算委での追及に盛山氏は「うすうす思い出してきた」と答弁したが、不自然極まりない。
自民の調査を巡っては、議員らの回答になかった教団との関係が次々と明るみに出ている。
山際大志郎経済再生担当相(当時)のケースでは、教団総裁との対面など新たな事実が表面化。岸田文雄首相は当初否定していた更迭に踏み切った。
今回の疑惑を受け、岸田首相は各閣僚に教団側からの選挙支援の有無を確認したところ、新たに発覚した接点はなかったという。
しかし、これまでの経緯を考えればこうした自浄作用が機能しているかどうか疑問だ。
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教団を巡っては、国政選挙に際して関連団体が自民党議員に推薦確認書を提示し、一部議員が署名したことが明らかになっている。
憲法改正の実現や同性婚合法化への慎重な対応などを掲げており、事実上の「政策協定」と見る議員もいる。
そうした書類へサインしたかどうかを「よく覚えていない」とすること自体、盛山氏の議員としての資質が問われる。
首相の任命責任は極めて重い。