小学生兄弟死亡 兵庫・稲美町放火殺人事件 伯父、望んだ死刑求刑に「言うことはありません」

開廷前の神戸地裁姫路支部・法廷<2024年2月7日午前 ※代表撮影>

2021年11月、兵庫県稲美町の住宅が全焼し、小学生兄弟が死亡した放火殺人事件で、兄弟と同居していた伯父で殺人と現住建造物等放火罪に問われた男(53)の裁判員裁判(第8回)が7日開かれ、検察側は男に死刑を求刑した。

判決は2月15日に言い渡される。

放火現場から東へ50キロ、逃亡先は大阪・扇町公園のベンチ

論告で検察側は、「妹夫婦への不満を晴らすため、就寝中に火をつけて子どもの命を奪うという、確実に殺害できる方法を選ぶなど生命軽視の度合いが高い。遺族の心情を逆なでする供述に終始しており、残虐、冷酷、非人道的、悪質な犯行」と指摘し、「死刑選択はやむを得ない」とした。

一方、弁護側は最終弁論で、「家族間のトラブルであり、意図的に社会不安をあおったのではない。事の重大性は認識しており、妹夫婦に対しては恨みを募らせていたが、亡くなった子どもに対して謝罪している」などと主張、「死刑は相当ではない」として死刑を回避するよう求めた。

被告人質問で男は「両親に精神的な苦痛を与えたくて、大切な子どもを狙った。直接的に殺したのは自分だが、間接的にやったのは妹夫婦らだ。謝罪はできない」、さらに「(自身の判決は)死刑が妥当だと思う」と述べていた。そして最後に「言うことはありません」とだけ述べて結審した。

この日、論告求刑に先立ち、兄弟の父親が意見陳述で「親として2人の命を守ることができず、申し訳なく思う。いまだに謝罪も反省もない被告に対しては、生きる価値はない。極刑(死刑)を求める」と訴えた。

起訴状などによると、男は2021年11月19日深夜、妹夫婦らと同居していた兵庫県稲美町の木造2階建ての自宅で、押し入れに収納していた布団にガソリンをまいて火を放ち全焼させ、就寝中の兄(当時12歳・小学6年)と弟(同7歳・小学1年)を殺害したとされる。

男は妹夫婦と、2人の兄弟の5人で暮らしていた。男は当初、妹家族と一緒に出掛けるなどの交流はあったが、しだいに会話もなくなっていた。さらに妹夫婦から食事や住宅内の移動、入浴など生活を制約され、室内にカメラを設置されて「監視されている」と思い込んだとされる。

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