『となりのナースエイド』裏の顔を見せた大河は敵か味方か 水野美紀の存在感が光る

ドラマ『となりのナースエイド』(日本テレビ系)第5話は、大河(高杉真宙)の疑惑が晴れるかと思いきや、ますますその裏の顔が怪しくなっていく回だ。澪(川栄李奈)の姉・唯(成海璃子)を殺害した疑いのある辰巳(やべきょうすけ)が潜伏していると思わしき屋敷に出入りをしていた大河。その目的は、先天性胆道閉塞症を起こし、長くて余命3カ月の辰巳の娘に、肝臓を移植するため。つまりは辰巳が娘のドナーで、その移植手術を受け持っているのが大河なのだ。

まるで『ブラックジャック』のような、にわかには信じられない話に、澪はパニック。だが、「目の前に助けられる命があるなら救う、それが医者だ」という大河の説得で、澪は半信半疑ながら辰巳のドナー摘出手術に助手として同行することになる。

アジトとなる屋敷から足がつかないように、大河と澪は目隠しをされ地下アジトで手術へ……という「こんなこと、現実にあるのか?」とツッコミたくなる展開ではあるが、手術前に大河が澪に言ったように「頭の中のゴチャゴチャは一度忘れて」、筆者は物語に集中することにした。

ポイントは、澪が急遽、縫合手術を担当し、PTSDを克服しつつあること。どうしても真っ赤に染まった雨の夜がフラッシュバックしてしまう澪だったが、「お前と姉との思い出は悲しいことだけだったわけじゃないだろ?」という大河の励ましにより、澪は姉との笑顔の日々を思い出す。「私、なんでこんな大切なこと忘れてたんだろう」と、澪の瞳からとめどなく溢れる涙。落ち着きを取り戻した澪は、完璧な縫合で手術を完了させるのだった。

だが、手術はここからが本番。ドナー移植手術が行われる、如月総合病院に向かおうとする大河と澪を止めたのは、辰巳の部下・清水(松角洋平)だった。目を離した隙に、警察に通報されるのを恐れてのことだ。威圧的な態度で睨みつけてくる半グレを相手に、大河は「彼女を残して、俺がここを去ることはない」と怯むことはない。むしろ、ボスの肝臓、つまりは娘の命を預かっているのは大河側。「俺が行かないで、誰がボスの命救うんだ?」と逆に大河が半グレをガンつけていくのだ。

無事に解放された2人。感謝を告げる澪に、大河は「余計なこと喋って、身元がバレて、何をされるか分かったもんじゃないからな」と澪をポンコツ扱いしつつも、「ポンコツにあんな見事な縫合はできない」と今度は澪の外科医としての腕を称賛する。思わずニヤニヤが止まらない澪。大河の冷たくも優しいどっちつかずな態度に「ツンデレの天才かよ」と心の声が漏れてしまっている。

9時間の肝移植手術は無事成功。辰巳の行方はというと、澪がガーゼに忍び込ませたGPSから居場所が発覚し、刑事の橘(上杉柊平)が身柄を確保していた。しかし、取り調べの結果、辰巳は唯の死とは無関係。その頃、唯のパソコンからは大河の写真が見つかっていた。

移植手術の成功の報酬として、「約束通り、5000万円振り込む」と礼を言われているのを聞いてしまう澪。振り向き様に「金のために決まってるだろ」と言い放つ大河の口角が不気味に上がっている。

より一層疑惑が深まっている大河の一方で、第5話は晴美(水野美紀)の存在感も極まっていた。早口の少々変わり者という役は、現在放送中の『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)の財田トキ子役にも通ずる部分がある。それは水野美紀の芝居の真骨頂とも言え、晴美の息子・照希(兵頭功海)が登場する第6話では、彼女の演技が楽しめそうな予感がしている。
(文=渡辺彰浩)

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