近畿整備局紀伊山系砂防ら/災害現場の状況把握訓練、ドローンと衛星通信で情報共有

近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所は6日、ドローンと衛星通信車を使い、山間部など携帯電話のつながらない被災現場の状況を確認する訓練を奈良県五條市の赤谷地区で行った。災害時には迅速に被災状況を調査することが避難行動や被害の拡大防止につながり、訓練では上空を飛行するドローンから送られてくる映像をリアルタイムで共有できることを確認した。
訓練は災害協定を結んでいる奈良県測量設計業協会と共同で実施。危険で人が立ち入ることができない大規模な土砂崩れ現場を想定し、安全な場所からドローンを自律飛行させるとともに、現場付近に移動型衛星通信車「Car-SAT」を待機させ、衛星回線を使ってリアルタイムで映像や画像を配信できるかを実証。衛星通信で大阪市内の本局に送信した映像はインターネットで映し出され、リアルタイムで映像を見られることを確認した。
さらに被災現場に立ち入りが可能になった段階を想定し、詳細なデータを把握する訓練も実施。ドローンが自律飛行しながら1秒ごとに写真を撮影し、面積で0・76平方キロメートルの範囲の画像データ2458枚を取得した。撮影した画像は衛星通信車でリアルタイムで伝送した。データを解析すると3D点群データが得られ、土砂崩れ現場の変状を比較することで崩落土砂量が算出できる。
2011年9月の紀伊半島大水害では各地で深層崩壊が発生し、土石流が流域を襲った。山間部の被災現場では携帯電話がつながらず、現場までのアクセスが厳しいなど人力での調査に限界があり、ドローンを活用することで被災状況を安全かつ迅速に把握できると期待する。
紀伊山系砂防事務所の小原雅彦副所長は「ドローンはヘリコプターに比べて天候の影響を受けない。的確に避難の判断を行うためにもより正確により早く、被害状況を把握する技術を開発していきたい」と話している。

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