60歳で定年になり再雇用となります。年収が60%になり年金の繰上げを受けようか迷っています。デメリットはどんなことがありますか?

年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、年金の繰上げ受給のデメリットについて、専門家が解説します。

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。 今回は、年金の繰上げ受給のデメリットについて解説します。

Q:60歳で定年になり再雇用となります。年収が60%になり、年金の繰上げをするか迷っています。デメリットはどんなことがありますか?

「1964年3月生まれの女性。今年、60歳で定年になり現職場で再雇用(嘱託)となります。年収が60%になり、年金の繰上げを受けようか迷っています。デメリットはどんなことがありますか? よろしくお願いいたします」(猫すき)

A:繰上げ受給のデメリットには、請求した年齢によって減額率が決まり、一生涯年金額が減額される点などが挙げられます

老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)は原則として65歳からの受給開始となりますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に受け取ることができます。これを繰上げ受給といいます。 繰上げ受給すると、繰上げ請求をした月から65歳になる日の前月までの月数、ひと月あたり0.4%年金受給額が減額されます(昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は0.5%)。 この減額率は一生変わらず、一生涯繰上げ請求した時点の減額率で減額された年金を受け取ることになります。繰上げ請求すると、年金を早くもらえますが、長生きすればするほど、一生涯に受け取れる年金受給額の合計が少なくなります。 繰上げ請求は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り上げする必要がありますので、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が一生涯減額されてしまいます。 一度、繰上げ請求すると、取り消しできません。国民年金の任意加入や、保険料の追納もできなくなり、繰上げ請求した日以後は、事後重症(障害認定日には基準に該当しない障害状態の場合、その後障害の状態が重くなること)などによる障害基礎(厚生)年金を請求することができません。 さらに厚生年金に加入して収入を得ている場合は、基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分)とおおよその給与収入(総報酬月額相当額)の合計が支給停止基準額48万円(令和5年度)を超えると、老齢厚生年金受給額が一部もしくは全額支給停止されます(在職老齢年金制度)。 相談者には給与収入があるとのことですので、在職老齢年金制度には注意しましょう。 繰上げ受給のデメリットをよく把握して手続きするようにしましょう。 最後に、老齢年金は原則として65歳からの受給となりますが、生年月日や性別などの要件を満たす場合、60代前半で「特別支給の老齢厚生年金」を受給することができます。 相談者は昭和39年3月生まれの女性ですので、要件を満たす場合、63歳から受け取ることができます。特別支給の老齢厚生年金も繰上げをすることができますが、やはり老齢基礎年金と同時に繰り上げることになります。 特別支給の老齢厚生年金を受け取れるのかどうかも確認し、特別支給の老齢厚生年金を受給して生活が回せるのであれば、収入が下がったとしても繰上げは必要ないかもしれません。まずは、特別支給の老齢厚生年金を受け取れるのかどうかを年金事務所に問い合わせてみてはいかがでしょうか。 監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー) 都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。 (文:All About 編集部)

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