英アーム売上高・利益が予想超え、AI分野で収益拡大 株価急騰

Stephen Nellis Max A. Cherney Arsheeya Bajwa

[7日 ロイター] - 英半導体設計大手アーム・ホールディングスが7日発表した第4・四半期(1─3月)売上高と調整後1株利益の予想レンジ中心値は8億7500万ドルと0.30ドルで、それぞれLSEGのデータに基づく市場予想の7億8030万ドルと0.21ドルを上回った。

人工知能(AI)向け半導体について顧客から設計技術に対するロイヤルティーの支払いが増えている。

これを受けてアーム株は引け後の時間外取引で約35%上昇。30%を超える株高により、時価総額は約260億ドル拡大した。

現在の株価は102.11ドルで、昨年9月の新規株式公開(IPO)価格51ドルから倍増している。

通期の売上高と調整後1株利益の見通しは31億8000万ドル、1.22ドル。市場予想の30億5000万ドルと1.07ドルを超えた。

<第9世代技術利用が拡大>

アームのジェーソン・チャイルド最高財務責任者(CFO)は、AIへの関心の高まりを背景に、顧客からより新しいデザインや技術に対する興味が増大し、そうした技術が購入されたり、ライセンス料が支払われたりしているとロイターに説明。第4・四半期は自動車やAIなどの市場が好調に推移するため、予想を約1億ドル引き上げたという。

同社は、データセンター、スマートフォン、パソコンでAIを動かす半導体のライセンス収入が大きな要素になると予想している。

2016年以降、アームは事業を大幅に多角化。チャイルド氏によると、スマートフォンは現在、出荷台数全体の35%を占めているが、同年の割合は60─70%だった。

また、AIが売上増をけん引しているが、その大部分は間接的なものだとも述べた。

例えば、アームをベースにしたセントラルプロセッサーはエヌビディアのGPU(画像処理半導体)と頻繁に組み合わされている。チャイルド氏によると、消費者がAIの特別な機能を搭載した新しいスマートフォンやノートパソコンを購入するなど、より直接的なAIビジネスが展開されるには1年以上かかる見通し。

近年、アームの第9世代となる最新バージョンとなるコアチップアーキテクチャーを使い始める顧客が増加。同社はこの技術にチップ1個当たり約2倍のロイヤルティーを請求することから利益に重要となる。

チャイルド氏によると、ロイヤルティー収入の約15%が第9世代技術によるもので、前四半期の10%から上昇した。

クリエイティブ・ストラテジーズのアナリスト、ベン・バジャリン氏は「投資家はアームの進化したビジネスモデルがいかに恩恵を受けるかを理解し始めている」と語った。

<「業界全体に良い兆候」>

昨年上場を果たした後もソフトバンクグループが引き続き過半数株を保有するアームは、スマートフォン用半導体のほとんどの基本設計技術を生み出しているほか、ノートパソコンやデータセンターなどの分野での半導体設計にも事業範囲を広げている。

第3・四半期(10─12月)の売上高は8億2400万ドル、調整後1株利益は0.29ドル。市場予想は7億6160万ドルと0.25ドルだった。

TECHnalysisリサーチの社長兼チーフアナリスト、ボブ・オドネル氏は「アームの堅調な業績と見通しは同社とテック業界全体にとって良い兆候だ」と述べた。

同社のアナリストによると、アームの設計が他の市場にも広がっていることはテックビジネス全体への影響力が高まっていることを示している。しかし、アームはAI分野ではまだ比較的小さなプレーヤーだ。

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