アプリリア・テクニカルディレクターが語る24年型RS-GPの新空力デバイス。その開発方法は?/MotoGPセパン公式テスト2日目

 2024年シーズン、MotoGPマシンにおける空力デバイスの開発競争はより激しさを増している。マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで行われている公式テストで、アプリリアもまた、いくつかの新しい空力デバイスをテストしていた。

 2024年型のアプリリアRS-GPは、アレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)いわく「(2023年型に比べて)大きくは変わっていないが、エアロはまったく違う」とのこと。アプリリアは、基本的に2023年型RS-GPを踏襲しつつ、空力デバイスでの進化を目指しているようだ。ライダーたちは、様々に組み合わせを変えて走行を重ねていた。

 そんな中で、公式テスト2日目の2月7日、アプリリア・レーシングのテクニカル・ディレクターであるロマーノ・アルベシアーノが囲み取材に応じた。

 2024年型アプリリアRS-GPは、羽のような形状が横に伸びているテールカウルの空力デバイスなどを新たに試している。テール部分はMotoGPマシンの空力デバイスの開発で熱を帯びているひとつであり、2022年イタリアGPで初めてテールカウルの空力デバイスを登場させたのが、アプリリアだ。だが、これを機能させるのは複雑だという。

「いくつかの理由により、我々のマシンではリヤウイングを機能させるのが難しいのです。アイデアはありますが、まだはっきりとはしていません。ここで再びテストをしましたが、バイクのバランスをかなり変更する必要があります」とアルベシアーノ。

「バイクがすぐに(リヤウイングを)受け入れる状態ではないということです。すぐによくなるわけではありません。おそらく、重量配分がかなりかかわってくると思います」

 アルベシアーノは、現在のリヤウイングについて「ブレーキング時にリヤがもっと接地することを期待しています。それが設計を始めた主な理由です」と説明している。

 ただ、ブレーキング時の接地を求めれば、立ち上がりでウイリーしやすくなる、というネガティブを生んでしまう。フロント側の空力デバイスは主にダウンフォースを発生させることでウイリー抑制に貢献するが、それらとのバランスをとらなければならない、ということだろう。

「リヤウイングがあるなら、フロントも同等の空力効果で補わなければならないのです。常にバランス、ということになります。リヤウイングは通常、地面に接地して動力に影響します。非常にデリケートな部分なのです」

「また、後方に力がかかると、スムーズさに影響します。これがうまくいけば、一歩前進することになるのは間違いないのですが……」

 こうした状況で、アプリリアが公式テスト1日目に投入したのが、テールカウルに取り付けられたレーダーやアンテナのような形状をした、気圧を感知する測定器である。収集されたデータにより、「最終的にライダーの背後の全体的な気圧のマップが得られる」と、アルベシアーノはMotoGP.comのインタビュー動画で回答していた。

アプリリアがセパンテスト導入した気圧を感知する測定器
テールカウルに測定器を設置し、走行を行うミゲール・オリベイラ

「我々はコンピューターのプログラムをつかって、エアロダイナミクス・フィールド、つまりバイクとライダー周りの空気の流れをシミュレーションして、バイクを設計しました。そのため、コンピューターがライダーやバイクの周りの空気の流れを予測します。しかし、すべての計算は、実験によって確認されなければなりません」

「これは(測定器は)、コンピューターのプログラムを確かめる実験のひとつです。後方の気圧のマップを作ります。そして、データからコンピューターが出したものと比較するのです」

 エアロダイナミクスがMotoGPマシンに与える影響が大きくなっている今、その開発の仕方もまた、様々な試みが行われている。

フロントやサイド、リヤなど様々な部分で空力デバイスの変化がある。この組み合わせを変えてテストしていた
2023年型よりもやや丸みをおびた形状のフロント空力デバイス
RS-GPのテール部分
KTMが2023年前半に使っていたようなタイプのテール空力デバイスもあった

投稿 アプリリア・テクニカルディレクターが語る24年型RS-GPの新空力デバイス。その開発方法は?/MotoGPセパン公式テスト2日目autosport web に最初に表示されました。

© 株式会社三栄