就職先は「車通勤」しかできない場所にあります。車の購入費用を経費として収入から差し引いたりできないのでしょうか?

給与所得者には個人事業主のような経費控除がない

個人事業主が事業用の車両を購入した場合、耐用年数に応じた期間中は減価償却費として課税対象から外せます。もちろん、車両だけでなく事業に必要な経費はすべて課税対象外となります。

しかし、給与所得者には個人事業主と同じ経費処理は認められていません。その代わりに
給与所得者には給与所得控除として一定金額の控除が認められています。給与所得者が認められている給与所得控除の金額は図表1のとおりです。

【図表1】

国税局 給与所得控除をもとにして筆者作成

図表1のとおり、給与所得者も実質的に最大195万円の経費が認められていますが、給与所得控除額を超えられる特例もあります。

給与所得者の特例「特定支出控除」で車通勤の一部が控除できる

給与所得者は、所得に応じた給与所得控除額が実質的な経費として認められています。しかし、個人事業主とは違い、給与所得者の給与所得控除額には上限が設定されています。それでは、上限を超えることはできないのでしょうか。

結論を言うと、給与所得控除を超えても認められるケースはあります。全額が認められるわけではありませんが、給与所得控除を超える特定の支出が一定金額以上であれば、控除が認められる「特定支出控除」という制度があります。

特定支出控除の概要

給与所得者に認められている給与所得控除には上限がありますが、それを超えて控除を認める制度が「特定支出控除」です。特定支出控除の概要は以下のとおりです。

__●対象者:給与所得がある人
●対象となる条件:対象の特定支出が給与所得控除の2分の1を超える場合__

特定支出控除はあらかじめ定められた支出に該当すれば、最大で97万5000円(給与所得控除の上限195万円の2分の1)を超える部分について控除が認められる仕組みです。

特定支出控除の対象となる支出

特定支出控除の対象となるのは、すべての支出ではなく以下の支出に限られます。

__●通勤費
●職務上の旅費
●転居費
●研修費
●資格取得費
●単身赴任などの帰宅旅費
●次に掲げる支出(合計額が65万円超の場合は65万円まで)で、給与の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
図書費、衣服費、交際費等__

上記の通勤費には車両の購入費は含まれません。対象となるのは以下の通勤費です。

__●航空費を除く交通機関を利用する場合
●自動車を利用する場合
●交通機関と自動車を利用する場合(上記2つの合計)__

さらに、自動車を利用する場合の対象となる通勤費は以下に限られます。

__●燃料費
●有料道路料金
●修理費(故意や重大な過失によるものを除く)__

車両の購入費(減価償却費)や自動車税は対象となりませんが、上記の費用の1年分が控除の対象になります。

特定支出控除の申告方法

特定支出の控除の申告は年末調整ではなく、直接管轄の税務署に確定申告を行います。そのため当年分は翌年2月16日〜3月15日(年度によって変更もあるので注意)の間に確定申告が必要なので忘れないようにしましょう。

また、申告に際しては以下の証明書の添付が必要になるので事前に準備しておきましょう。

__●特定支出に関する明細書
●給与の支払者などの証明書
●交通機関を利用した場合は搭乗・乗車・乗船に関する証明書
●支出した金額を証する書類__

給与所得者は通勤車の購入は経費にできないが、通勤費の一部は控除可能なので活用しよう

給与所得者は個人事業主のように事業に関する経費が全額認められませんが、代わりに収入に応じた給与所得控除が認められています。また、特別支出控除によって給与所得を超えても控除が認められる支出もあります。

車による通勤では車両の購入費や自動車税などは認められませんが、ガソリン代や有料道路料金、修理費は認められるので活用しましょう。

出典

国税庁 No.1400 給与所得
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除
税務署 給与所得者の特定支出控除について

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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