集中豪雨の一因は黒潮-。鹿児島大学水産学部の中村啓彦(ひろひこ)教授(海洋物理学)と喬煜翔(きょう・いしょう)特任研究員らの研究チームが、梅雨期に南九州や南西諸島で降水量が増加している原因として、黒潮の水温上昇が深く関わっていることを突き止めた。米国地球物理学連合の速報誌オンライン版に1月下旬、掲載された。
東シナ海から北上する暖流の黒潮は、海面水温が40年間で約1度上昇した。研究チームが、この間の東シナ海周辺の月別降水量を解析したところ、6月の増加率が最も大きく、黒潮上では2倍程度に増えたことが分かった。
増加分のうち約55%は、黒潮上で発生する積乱雲などがもたらす対流性降水に由来することも発見。海水温が高い黒潮上は気圧が低いため風を引き込みやすく、さらに湿った空気を呼び込む梅雨前線が重なることで、雪だるま式に雲が発生。ゲリラ豪雨などが起きやすくなると考えられるという。陸域における6月の降水量データも、増加傾向が一致した。
近年、梅雨期を中心に集中豪雨が頻発しており、海上現象が気象に与える影響は注目が集まる研究分野。今回も海洋学と気象学の共同研究の一環で、熊本大学の冨田智彦准教授(気象学)が参加した。
気象予報精度の向上には、東シナ海上の大気変化の把握も重要となるが、陸上とは異なり、海上の気象観測データは乏しいという。中村教授は、地球温暖化で今後さらに黒潮の水温上昇が予想されることを踏まえ「これまで以上に黒潮流域の大気や海洋観測の重要性は増していく」と指摘した。