2023年7月、岡山県倉敷市の倉敷美観地区にある古民家にオープンした珈琲店「夜空ノ珈琲」。
同じ場所で日中に営業している「虹色商店」と共存する形で週に1日、金曜日の夜営業しています。
「なぜ週1日だけなのだろう」とお店を訪ねると、珈琲の香りに包まれホッとひと息つける安らぎの時間と、店主の優しい志に触れられました。
障がい者支援施設の支援員の経験を持つ店主が営む「夜空ノ珈琲」を紹介します。
1週間に1日だけオープンする安らぎの空間
「夜空ノ珈琲」は、岡山県倉敷市東町の同じ場所で日中営業している「虹色商店」の夜の部として、2023年7月にオープンしました。
倉敷美観地区にあって比較的人通りの少ない静かな町並みに週に1日、金曜日の午後6時から10時まで灯りがともります。
古民家の風情のある店内は、暖色系のあかりに包まれ静かな音楽が流れています。
淹れてもらったマナビノブレンドはスッキリとした味わいで飲みやすく、挽きたての珈琲でひと息つくと、穏やかな時間の流れを感じました。
肩の力がスーッと抜けていくような、優しい空気が店内を包んでいるようでした。
異業種から一念発起で珈琲屋を開業
店主は、以前障がい者の就労支援施設で支援員をしていた横路悠平(よころ ゆうへい)さん。
横路さんは、自身に発達障害があると診断されてから、障がいがある人も健常者も同じように活躍できる場所をつくりたいと思うようになりました。
珈琲屋を志したのは、自ら企画した珈琲のドリップパックをつくる仕事が障がい者のやりがいにつながり、仕事を休まなくなった成功体験が原点でした。
「珈琲で何かできないか」と支援員をしながら、わからないことは珈琲豆の販売店や珈琲店を訪ね、独学で焙煎方法や珈琲の淹れ方などを学んだそうです。
飽きない1杯を追求して生まれたメニュー
何度も何度も焙煎を繰り返し、何杯も何杯も淹れた珈琲を飲み続け、納得できる味をつくる努力を重ねた横路さん。
教えを請うた人たちに「1種類だけでもいいから、ずっと毎朝飲める珈琲ができたらそれを商品にしなさい」と言われ、ようやく生まれたのが「マナビノブレンド」でした。
ああでもない、こうでもないと追及した珈琲メニューは6種類です。
障がい者と健常者が一緒に働ける場所を目指して
日中は保育士とフリースクールの先生をしている横路さんに、開店のきっかけや開店後のエピソード、今後の夢を聞きました。
──「夜空ノ珈琲」開店のきっかけは?
横路(敬称略)──
SNS(足りない勉強家)で夢を追って珈琲をつくっていることを発信し、イベントで珈琲を出していたところ、虹色商店のオーナーに声を掛けていただきました。
ともに目標が同じだったことから、夜の部として営業を始めることになりました。
──営業を始めてどうですか。
横路──
お客さんがゼロの日もあり心が折れそうになることもありましたが、障がいがある子どもを持つお母さんたちの団体や、障がいがある恋人同士がデートに使ってくれたり、発達障害を抱えたかたが話しに来てくれたり、いろいろな出会いがありました。
初対面の僕にいろいろ話をしてくれて、「スッキリしました」と言ってくれたときの表情は何にも代えられないうれしさがあり、幸せを感じています。
──どんな店を目指していますか。
横路──
隣同士になった人が話をしたり、障がい者も健常者も垣根なく交流できる場所になればいいなと思っています。
イベントのような形で、たまに金曜日以外に営業することもあります。今後は曜日拡大も検討していかないといけないかなと思っているんです。
そして、ここをいつか健常者と障がい者が一緒に働ける場所にしたいですね。
おわりに
取材後に飲んだ珈琲の香りは、緊張の糸を解きほぐしてくれました。
店内の優しい空気感はシャイな店主、横路さんそのものです。
頑張った自分へのご褒美タイム、癒しの時間といろいろな珈琲タイムがあると思いますが、金曜日の夜、「夜空ノ珈琲」でひと息つきませんか。