ネタニヤフ首相、ハマスの休戦提案を拒否 「妄想的」と

リーズ・ドゥーセットBBC主任国際担当編集委員、キャサリン・アームストロング、BBCニュース、ロンドン

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7日、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘をめぐり、イスラム組織ハマスが提案した休戦条件を拒否した。同時に、ガザでの「完全勝利」が数カ月以内に可能だと主張した。

ネタニヤフ氏の発言は、イスラエルが支持する休戦案に対し、ハマスが6日にいくつかの要求を出したことを受けてのもの。

ネタニヤフ氏は、ハマスとの交渉は「まったく進んでいない」とし、ハマスが示した条件を「荒唐無稽」と評した。

現在、何らかの合意を目指し、話し合いが続けられている。

ネタニヤフ氏はこの日の記者会見で、「完全かつ最終的な勝利以外に解決策はない」と強調。

「ハマスがガザで生き延びるなら、次の大虐殺が起こるのは時間の問題だ」と述べた。

イスラエルがハマスの要求に反対するのは予想されていた。しかし、ネタニヤフ氏の反応は断固とした非難だった。ハマスは自分たちが望むような条件で戦争を終わらせようとしているが、イスラエル当局はこれをまったく受け入れない構えだ。

ハマス幹部サミ・アブ・ズフリ氏は、ネタニヤフ氏の発言について、「政治的虚勢の一種」で、この地域で紛争を続ける意図を示しているとロイター通信に話した。

エジプト当局筋によると、同国とカタールが仲介する新たな交渉が、エジプトの首都カイロで8日に予定されている。

エジプトはすべての当事者に対し、冷静な合意に至るために必要な柔軟性を示すよう求めているという。

ハマス提案は「妄想的」

ネタニヤフ氏はこの日の会見で、ハマスの6日の提案を「妄想的」と拒絶した。これは、ハマス提案を「前向き」と評したカタールとは対照的な反応だった。

ロイター通信によると、ハマスの提案の草案には以下の条件が記されていた。

  • 第1段階:戦闘を45日間休止する。その間にイスラエル人の女性人質、19歳以下の男性、高齢者、病人の全員を、イスラエルの刑務所に収容されているパレスチナ人の女性や子どもと交換する。イスラエル軍はガザの人口密集地域から撤退し、病院や難民キャンプの再建が始まる。
  • 第2段階:残りのイスラエル人男性人質をパレスチナ人囚人と交換する。イスラエル軍はガザから完全撤退する。
  • 第3段階:双方が遺体を交換する。

提案には、ガザに運び込む食料などの支援物資の増加も含まれている。ハマスは、戦闘休止は135日間にわたるとし、それが終わるまでには戦争終結のための交渉がまとまるとの見通しを示した。

ハマスは昨年10月7日、イスラエル南部を襲撃し、約1300人を殺害した。

これを受けてイスラエルは、ガザで戦争を開始。ハマスが運営する保健当局によると、ガザではこれまでに2万7700人以上のパレスチナ人が殺害され、少なくとも6万5000人がけがを負っている。

イスラエル軍、ラファに進撃

ネタニヤフ氏は7日の会見で、イスラエル軍がガザ南部ラファでの活動の準備を命じられていると明らかにした。

ラファへの紛争拡大については、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、「すでに人道上の悪夢となっている事態がさらに広がる」と警告している。

エジプトとの境界に近いラファ検問所にいる避難者は、「ラファへの侵攻を恐れている」とBBCアラビア語に話した。

「私たちは恐怖の中で眠り、恐怖の中で座っている。食べ物はなく、寒い」

ネタニヤフ氏の発言は、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が「最善の道」だとして推進してきた、合意に向けた取り組みにとって打撃となった。

ブリンケン氏は7日の記者会見で、ハマスが出した対案には「いくつかの明確に無理な項目」が含まれていると述べた。一方で、「これで合意の余地が生まれたと考えている。合意を実現させるまで、私たちは懸命に取り組んでいく」と表明した。

ネタニヤフ氏がハマスの休戦条件を拒否したことについて、ハマスによって両親がイスラエル南部からガザに連れ去られたシャロン・リフシツさんは、「多くの人質にとっての、ほぼ確実な死刑宣告」だとBBCの番組「ニューズアワー」で話した。

リフシツさんはまた、母ヨシェヴェドさん(85)は解放されたが、父オデドさんは今も拘束されているとし、次のように述べた。

「父は83歳で弱っていて、長くはもたない」

「首相は父のことを考えてくれているのか、それともすでに、ひつぎに入って戻ってくる人とみなしているのか、どっちなのか」

ネタニヤフ氏の姿勢は、ガザの将来をめぐるアメリカとイスラエルの計画の間に、根本的な不一致が存在し続けていることを浮き上がらせてもいる。

ネタニヤフ氏はガザについて、イスラエルが全体的な安全管理を維持し、ハマスや他のいかなるグループとも関係のない現地の組織が運営すべきだと主張している。

これに対しアメリカは、パレスチナ国家を認める将来像を描いている。

目下の課題は、人質や囚人の新たな交換や、ガザ支援拡大のため切実に必要とされている人道的休戦の実現に向け、どうにかしてこの協議を継続させられるかだ。

(英語記事 Gaza ceasefire: Israel's PM Benjamin Netanyahu rejects Hamas's proposed terms

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