『鬼滅の刃』特別版の初動は前作から約半減 一方で目立つロングラン型興行の強さ

2月第1週の動員ランキングは、『鬼滅の刃』のテレビシリーズ第3期「刀鍛冶の里編」の最終話と今春放送開始の第4期「柱稽古編」の第1話を上映する『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』が、オープニング3日間で動員44万3700人、興収6億4700万円をあげて初登場1位となった。これは、昨年同時期に公開された『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』のオープニング成績との興収比で約56%。昨年の『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』は104の国や地域で上映、今作は140以上の国や地域で上映と、世界公開の規模こそ拡大しているものの、日本国内では約半減というなかなか厳しい出足となっている。

前作を参考にすると、『鬼滅の刃』のテレビシリーズ特別版の上映は、新しいシーズンのテレビ放送が始まるまでの期間限定。興収もオープニング3日間が11億5900万円だったのに対して、最終興収は41.6億円と、初動成績が3割近くを占めるかなりの初動型だ。それでいうと、今回の『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』は興収20億円あたりがひとまずの予想値になるわけで、閑散期に20億円の中ヒットが出ることのありがたさはあるのだろうが、この特別編上映がどこまで持続可能なビジネスモデルなのかは疑問が残るところ。まあ、原作が連載終了しているのでいずれにせよ終わりはくるわけだが。

一方で、昨年秋から今年にかけては、ロングラン型興行で好成績を残している作品が目立っている。ここにきて再浮上して先週末は8位にランクインしている『ゴジラ-1.0』は公開から94日間で興収57億3200万円、驚異的な粘り腰で今なおトップ5をキープし続けている『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は公開から59日間で興収39億700万円、トップ10からは姿を消したものの『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は公開から80日間で興収25億3100万円。そして、ジブリ作品ということで特異なケースではあるが、『君たちはどう生きるか』は公開から206日間で興収88億7800万円。来月3月10日(現地時間)に迫った第96回アカデミー賞の授賞式だが、そこにノミネートをしている『ゴジラ-1.0』と『君たちはどう生きるか』は、日本国内では「上映中の新作」として授賞式の日を迎える見込みだ。

それにしても、こうしてロングラン型興行の成功例を挙げてみても、実写作品かアニメーション作品にかかわらず、いずれも日本映画ばかり。一昨年までは『トップガン マーヴェリック』や『RRR』などの特例はあったものの、外国映画が置かれている苦境はこんなところにも表れている。

(文=宇野維正)

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