「ゼロゼロ融資」利用後倒産 1月は40件 2カ月連続で前年を下回る、中堅規模が増加

2024年1月「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況

2024年1月の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」利用後の倒産は40件(前年同月比18.3%減)で、2カ月連続で前年同月を下回った。集計を開始以来、最多の63件が2023年3月に発生したが、金融機関の伴走支援やリスケ対応などで、2023年11月から3カ月連続で50件を下回っている。
初めて「ゼロゼロ融資」利用後倒産が発生した2020年7月からの累計は、1,260件に達した。

産業別では飲食店(3件)などのサービス業他が最多の15件(前年同月比28.5%減)で、全体の約4割(構成比37.5%)を占めた。コロナ禍の急激な業績悪化をゼロゼロ融資でしのいだが、過剰債務に陥り新たな資金調達が難しいなか、材料費高騰や人手不足、人件費上昇が追い打ちをかけている。
コロナ禍の環境急変で多くの企業がゼロゼロ融資を利用し、窮状を回避した。だが、業績回復の遅れた企業を中心に、据置期間の終了と同時に返済が資金繰りを圧迫することが懸念された。

政府は2023年1月、資金繰り支援策として「コロナ借換保証」制度を開始した。また、金融機関には貸出先の実情に応じた経営改善や事業再生支援への取り組みを促し、先を見据えた対応を求めている。
しかし、金融機関のリソースには限界があり、すべての取引企業への支援は難しいのが実情だ。過剰債務に陥り、足元では食料品や日用品、電気、ガスなど、様々な物価が上昇し、収益が悪化した企業は追加の資金調達は容易ではない。こうした企業は返済猶予(リスケ)を繰り返してしのぐしかない。2024年4月には民間金融機関のゼロゼロ融資の返済が最後のピークを迎える。

2023年は企業倒産がコロナ禍前に戻り、休廃業・解散は過去最多を記録した。倒産が増勢をたどるなかで、「ゼロゼロ融資」利用後の倒産減少は一時的な事態か見極めることが必要だ。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2024年1月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は40件、2カ月連続で前年同月を下回る

2024年1月の「ゼロゼロ融資」を利用した後の倒産は40件(前年同月比18.3%減)で、2カ月連続で前年同月を下回った。件数は3カ月連続で50件を下回り、小康状態が続いている。
負債総額は108億1,600万円(同52.2%増)で、3カ月ぶりに100億円を上回った。件数が減少する一方で、負債が大型化したのは、負債10億円以上が2件(前年同月ゼロ)など中堅規模の倒産が増えたため。

【産業別】サービス業他が約4割

産業別では、サービス業他が15件(前年同月比28.5%減)で最多、全体の約4割(構成比37.5%)を占めた。
次いで、建設業9件(前年同月同数)、製造業7件(前年同月比250.0%増)、卸売業6件(同50.0%増)、小売業(同85.7%減)と運輸業(同75.0%減)、情報通信業(前年同月同数)が各1件の順。
農・林・漁・鉱業(前年同月ゼロ)と金融・保険業(同ゼロ)、不動産業(同1件)の3産業は発生がなかった。増加は2産業、減少は4産業、同数が4産業だった。

【業種別】建設関連2業種が各4件で最多

業種分類別(中分類)では、「職別工事業」と「総合工事業」が各4件で最多。
コロナ禍での受注減や工期延長に伴う資金繰り難をゼロゼロ融資でしのいだが、資材高騰が収益を圧迫し、事業継続を断念した。
次いで、「飲食店」3件が続く。コロナ禍の業績不振に加え、材料費や光熱費の高騰、人手不足が追い打ちをかけた。
このほか、「宿泊業」や「食料品製造業」、「洗濯・理容・美容・浴場業」、「社会保険・社会福祉・介護事業」などが各2件で並ぶ。

【形態別】破産が9割を占める

形態別は、破産が36件(前年同月比20.0%減)で最多。特別清算1件(前年同月同数)と合わせた『消滅型』倒産は37件(前年同月比19.5%減)で9割超(構成比92.5%)を占めた。
『再建型』は民事再生法が1件(前年同月ゼロ)で、2023年10月以来、3カ月ぶりに発生。
このほか、私的倒産の取引停止処分が2件(同3件)。

【従業員数別】10人以上~50人未満で増加

従業員数別の最多は、5人未満の17件(前年同月比37.0%減)だった。次いで、5人以上10人未満(同10.0%減)と10人以上20人未満(同12.5%増)が各9件で続く。10人未満の小規模企業は26件で、6割超(構成比65.0%)を占めたが、構成比は前年同月(75.5%)より10.5ポイント低下した。
一方で、20人以上50人未満が5件(前年同月比150.0%増)で2.5倍に増加、中堅規模に倒産が広がった。

【地区別】9地区全てで発生

地区別の最多は、関東の17件(前年同月比22.7%減)で、4割(構成比42.5%)を占めた。次いで、近畿5件(前年同月同数)、東北(前年同月5件)と中国(同2件)が各4件、中部3件(同5件)、北海道(前年同月同数)と四国(同)、九州(前年同月5件)が各2件、北陸1件(前年同月同数)の順。
都道府県別では、東京都が7件(前年同月10件)で最多。このほか、神奈川県4件(同1件)、群馬県(同1件)と大阪府(前年同月同数)、広島県(前年同月2件)が各3件など。10件以上発生した都道府県はなかった。

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