「すし店」の倒産が増勢の兆し 2024年1月の「すし店」倒産は5件

~ 2024年1月「すし店」倒産の状況 ~

コロナ禍が落ち着くと同時に、日本を代表する人気食「すし店」の倒産が増えている。2024年1月の「すし店」倒産(負債1,000万円以上)は、5件(前年同月比400.0%増)だった。月間5件以上は、2020年8月(5件)以来、3年5カ月ぶり。コロナ禍の資金繰り支援で、2021年と2022年の倒産は19件だったが、支援策の縮小・終了で2023年は21件に増加した。インバウンド需要が戻り、高級すし店、回転すし店への客足が回復するなか、人手(職人)不足や物価高で苦戦する小・零細規模の「すし店」の動向が注目される。

コロナ禍では、時短営業や休業への助成金に加え、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)などの各種支援で、倒産は業種を問わず抑制された。
だが、コロナ禍も5年目に入り支援効果が薄れるなか、新たな生活様式の浸透などで宴会需要が落ち込み、客足がコロナ禍前に戻らない飲食店も少なくない。また、大手チェーン店との競合だけでなく、魚類の仕入れ価格や米、食材費、光熱費などの上昇でコストアップが収益を圧迫し、値上げなどの価格転嫁が難しい「すし店」は経営維持が難しくなっている。

「すし店」の倒産は、個人経営や小・零細規模が大半を占める。経営体力が脆弱で、来店客の落ち込みを値上げでカバーできる力量は乏しい。ゼロゼロ融資の返済が本格化するなか、小・零細規模のすし店の経営は深刻さを増しており、年間倒産はコロナ禍当初の2020年以来の30件を超えそうとなっている。

※本調査は、日本産業分類の「すし店」の2024年1月の倒産を集計、分析した。


・原因別は、5件すべて「販売不振」だった。大手チェーン店との競合やコロナ禍から業績回復が進まず、経営は疲弊感を増すなか、先行きを見通せず事業継続を断念したケースが多い。
・形態別は、5件すべて「破産」。倒産した「すし店」は小・零細企業が多く、資金余力が乏しいため経営再建ではなく、破産による債務整理を選択している。
・資本金別は、「個人企業他」と「1百万円以上5百万円未満」が各2件、「1千万円以上5千万円未満」が1件だった。
・負債額別は、「1千万円以上5千万円未満」が3件、「5千万円以上1億円未満」が2件で、5件すべてが1億円未満となった。
・従業員数別は、「5人未満」が5件だった。


すしネタや食材などの価格高騰に加え、光熱費の上昇など、コストアップは小・零細規模のすし店にとって資金繰りへの負担が重い。また、「利益なき売上増」では、期間利益による返済原資の確保も難しい。さらに、職人不足も今後、大きな課題に浮上する可能性もある。ゼロゼロ融資の返済の本格化とともに、すし店の倒産は増勢を強めると思われる。

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