女性受刑者の「出産時に手錠」、法務省の通知に反し6件。予算委で報告

立憲の源馬議員(右)と小泉法相

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小泉龍司・法相は2月8日の衆院予算委で、刑事施設に入所している女性受刑者に対し、出産時に手錠をかけていたケースが2014年12月から2022年末までに6件あったと明らかにした。

法務省は2014年12月26日付で、女性受刑者の出産時に手錠を使用しないよう求める通知を出していたが、徹底されていなかった。立憲民主党の源馬謙太郎議員の質問に対する答弁。

2014年の通知以前に出産時に手錠を使用していた件数を尋ねる源馬議員の質問に対し、小泉法相は、通知以前は出産時の手錠使用を各刑事施設の判断に委ねており、「法務省全体として網羅的にそれを把握することはできておりませんでした」と説明。

その上で「事例においてはバラバラで、実際に出産時に手錠が使用されていた例もあったと思われる」と述べた。

2014年の通知では、全国の刑事施設に対し、妊娠中の女性受刑者に分娩室内で手錠などの拘束具を使用しないよう求めていた。だが、2023年11月の国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)の報告では、法務省の通知後も出産時に手錠をかけられるケースがあるとの証言が元受刑者らから寄せられていた。

源馬議員は、同団体の報告に言及した上で「依然として手錠をつけたまま出産させられているケースがあると聞いています」「これは世界的に見ても人権意識が低いと言わざるを得ない」などと批判。

分娩室内に限らず、搬送時や分娩室に入る前後でも妊娠中の受刑者に手錠を使用しない運用に変えるべきではないかと問うた。

これに対し、小泉法相は調査の結果、2014年の通知後も、通知に反し出産時に手錠をかけていたケースが6件あったと報告した。調査を踏まえ、2014年の通知を徹底するよう2022年に再び呼びかけたと説明。

さらに、2022年以降は適用の範囲を広げ、授乳や沐浴など生まれた子どもと接する時は分娩室の外でも手錠を使用しないことを各刑事施設に求めているとした。

子どもと接していない時間における手錠使用の見直しについて、小泉法相は「刑事施設の基本的な責務をベースに置きながら、適切な対応を考えていきたい」と述べた。

「独立した調査が必要」

小泉法相の答弁を受け、HRWアジア局プログラムオフィサーの笠井哲平氏は、「法務省が通知違反を追跡調査していたこと自体は評価できるが、国会で質疑されるまで公表しなかったことを疑問に思う」とハフポスト日本版にコメントした。

あくまで法務省による内部調査にとどまることから、笠井氏は「外部専門家委員会などによる独立した調査が必要だ」と指摘。現在入所中の受刑者や、退所している元受刑者への聞き取りも行う必要があるとした。

国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルールズ)は、「女性に対し、分娩中や出産直後に拘束具を決して用いてはならない」と定める。

女性受刑者らの処遇などに関する規則を定めた「バンコク・ルールズ」も、一部の国で病院への移送や出産時に、妊婦に手錠などの身体拘束が使用されているとして「国際基準に違反している」と指摘。「陣痛、出産中及び出産直後の女性に対して、拘束具を決して使用してはならない」と定めている。

こうした国際的なルールを踏まえ、笠井氏は「国際基準に沿った形で、陣痛中または出産直後の受刑者への手錠使用も通知の対象にすべきだ」と強調した。

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