【特集「やっぱりドイツ車が好き!」③】スタイルから乗り味まで、伝統という味わいに満ちた上級サルーン【メルセデス・ベンツ Eクラス】

メルセデス・ベンツの中核モデルであるEクラス。その新型Eクラスが2024年1月に日本でも発表された。先代モデルよりも長く、低くなったプロポーションに一新されたフロントマスク。公開されたばかりの新型Eクラスとは。(Motor Magazine 2024年3月号より)

保守本流でありながら、先進的なド定番

新型Eクラスがついに日本でも正式に発売された。ここでは、2023年6月に開催された国際試乗会で取材した内容をベースに、新型Eクラスの概要と日本仕様について紹介しよう。

東京オートサロン2024で日本初公開された新型Eクラス。セダンとステーションワゴンが同時に発表された。

EクラスはSクラス、Cクラスと並ぶメルセデス・ベンツ セダンの保守本流。同社では、ほかにAクラスセダンが設定されているものの、S、E、Cの3クラスはエンジンを縦置きにした後輪駆動ベースのレイアウトが採用されており、その意味ではメルセデスの伝統的な味わいに満ちたセダンといえる。

さらにいえば、1982年デビューの190を源流とするCクラスと異なり、戦後間もない1946年にW136型が発売されたEクラスの系譜には80年に迫る長い伝統がある。ちなみに累計販売台数は世界中で1600万台以上。つまり、メルセデス セダンの歴史はSクラスとEクラスによって支えられてきたといっても過言ではないのだ。

その位置づけは、Sクラスよりは小さく、Cクラスより大きいという中庸なもの。ヨーロッパなどではカンパニーカーとして大量に導入されるフリートカー需要が主軸で、このため豪華で華やかなSクラスよりも保守的なキャラクターが求められるともいえる。

先代モデルよりホイールベースが20mm拡大され2960mmに、全長は4960mmとなった。

その一方で、先進技術はまずEクラスに投入され、その後、SクラスやCクラスにも採用されていくという傾向もあって、たとえばアクティブレーンキーピングの元祖といって差し支えのないディストロニックのステアリングアシストは、たしかEクラスが最初の採用例だったと記憶している。

W214と呼ばれる新型は、W136から数えて11代目、Eクラスと呼ばれるようになったW124から数えて6代目にあたるが、すでに同じセグメントにBEV専用のEQEが発売されていることもあり、エンジン搭載モデルをラインナップする新型Eクラスには、「エンジン車とBEVの架け橋」としての役割も期待されている。

そのためもあり、搭載されるパワーユニットがすべてマイルドハイブリッドもしくはプラグインハイブリッドとされているのが、新型Eクラスの第一の特徴である。

スイッチ類が少なくスッキリとしたインテリア。MBUXスーパースクリーンが助手席まで広がる。

ガソリン、ディーゼルのMHEVとガソリンPHEVをラインナップ

2024年1月の国内導入時点でラインナップされたのは、ガソリンエンジン+MHEVのE200、ディーゼルエンジン+MHEVのE220d、ガソリンエンジン+PHEVを積むE350eの3タイプ。しかも、搭載されるエンジンがいずれも排気量2Lの4気筒となる点も注目される。

ステーションワゴンは、リアエンドに向けて流れるように丸みを帯びたラインが実にスタイリッシュ。

なお、本国ではこれ以外にもハイパフォーマンスなPHEVのE400eが用意されているほか、将来的には6気筒モデルが追加されると予告されているが、これらの日本導入についてはまだアナウンスがないようだ。

ボディタイプに関してはセダンに加えてステーションワゴンも同時に発表されているのが興味深い。なお、現時点でPHEVはセダンのみの設定となっているため、Eクラス全体としては計5モデルがラインナップされている。

新型Eクラスでもうひとつ特徴的なのは、車載オペレーティングシステム(いわゆるOS)に自社開発のMB.OSを部分的に採用した点にある。

ダッシュボードに広がるMBUXスーパースクリーン(オプション)。ドライバーからは走行中、助手席ディスプレイは見えない。

自動車のプラットフォームには、よく知られているメカニカルなプラットフォームに加えて「電気的、電子的なプラットフォーム」も存在しており、これが装備品の内容にも深く関わっている。

新型では、主にインフォテインメント系に最新のMB.OSを投入したことで、合計3枚のディスプレイでダッシュボード全体をカバーするMBUXスーパースクリーンが初めて設定されたことも注目に値する。

スタイリングは、フロントマスクのデザインにEQシリーズに似たモチーフが採り入れられているが、全体的なフォルムは先代Eクラスの流れを汲むオーソドックスなもの。そのうえで、ボディパネルの抑揚をていねいに仕上げたり、パネル間のギャップを狭めるなどにより、従来型を上まわるクオリティ感を実現している。

ヘッドライトとフロントグリルをつなぐハイグロスブラック仕上げのパネルはBEVを想起させるデザインとなっている。

Eクラスらしい高い静粛性と、優しい乗り味

オーストリアで開催された国際試乗会では、PHEVのE300e(実質的に国内仕様のE350eと同じ)に加え、E200やE220dなどのハンドルを握ったが、どのモデルも静粛性が高く、乗り心地も快適だった。

グリル周囲が白く光るイルミネーティッドラジエターグリルはE350eのオプション。

なかでも足まわりの設定は、フラットな姿勢を穏やかに保ちながらも、軽いピッチングもあえて許すことで優しい乗り味とするEクラスの伝統が見事に受け継がれている点が印象的だった。

高速直進性や安定性はもちろん良好で、メルセデスが先鞭をつけた安全運転支援システムは内容が豊富なだけでなく確実性・信頼性も高いので、快適で疲れにくいロングドライブが楽しめるだろう。

パワートレーンの印象は、トップエンドで大パワーを炸裂させることはないものの、モーターのアシストで低回転域から力強い反応を示してくれる点が特徴的。その意味でも、新型Eクラスは「エンジン車とBEVの架け橋」と言っていいように感じた。(文:大谷達也/写真:根本貴正(本誌)、メルセデス・ベンツAG)

主要諸元 E 350 e スポーツ エディションスター

●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1997cc
●最高出力:150kW(204ps)/6100rpm
●最大トルク:320Nm(32.6kgm)/2000-4000rpm
●WLTPモード燃費:12.7km/L
●CO2排出量:18-12g/km
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:92kW(129ps)/2100-6800rpm
●モーター最大トルク:440Nm(44.8kgm)/0-2100rpm
●WLTCモード一充電EV走行距離:112km
●全長:4960mm
●全幅:1880mm
●全高:1485mm
●ホイールベース:2960mm
●車両重量:2170kg
●駆動方式:FR
●トランスミッション:9速AT
●ブレーキ:フロントVディスク・リアVディスク
●タイヤサイズフロント245/40R20・リア275/35R20
●価格:988万円

主要諸元 E220 d ステーションワゴンアバンギャルド

●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1992cc
●最高出力:145kW(197ps)/3600rpm
●最大トルク:440Nm(44.8kgm)/1800-2800rpm
●WLTPモード燃費:19.4km/L
●CO2排出量:133g/km
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:17kW(23ps)/1500-2500rpm
●モーター最大トルク:205Nm(20.9kgm)/0-750rpm
●全長:4960mm
●全幅:1880mm
●全高:1470mm
●ホイールベース:2960mm
●車両重量:1930kg
●駆動方式:FR
●トランスミッション:9速AT
●ブレーキ:フロントVディスク・リアVディスク
●タイヤサイズ:フロント225/55R18・リア225/55R18
●価格:955万円

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