働く人の装い inベルリン FIVE ELEPHANT編

お仕事コーデどうしてる??――「働く人の装いを通して、世界の仕事を知る」というテーマで新連載を始めます。コーデスナップの欧州チームが、さまざまな業種の人々とそのスタイルに会いに行きます。第1回目となる今回は日本でも人気が高まっている、スペシャリティコーヒーブランドで働くバリスタたちに注目しました。

訪ねたのはドイツ・ベルリン市内に5店舗のカフェを展開する、FIVE ELEPHANT(以下、ファイブエレファント)。ベルリンのコーヒーファンのなかでは知らぬ人がいないほどの有名店です。ファイブエレファントは2010年の創業以来、自社でコーヒー豆の焙煎を行っており、新鮮で質の高いコーヒーを提供しています。今回はクロイツベルク店、コルヴィッツ店、ミッテ店に在籍する4人に声をかけ、普段のワードローブをスナップさせてもらうとともに彼らの目線から見るベルリンの街やコーヒー文化についてインタビューしました。

コルヴィッツ店マネージャー アダさん

はじめにお話を聞いたのはコルヴィッツ店でマネージャーを務めるアダさん。マネージャーとしてどのような役割を担っているのか教えてもらいました。

Instagram:ravebabi

コーデスナップチームがコルヴィッツ店を訪れたのは2023年11月下旬。ベルリンはすでに雪が降るほど冷え込んでいたのでアダさんはフリースジャケットを羽織り、お店の前に出てきてくれました。

アダさん:フリースジャケットは数年前にDickiesで購入して以来、気に入ってずっと着ています。タートルネックはユニクロ、パンツは友人から貰ったヴィンテージ、ブーツはCOSです。アクセサリーはいつでもシルバーを選ぶのが私の定番です。今日つけているネックレスとリングは、パリで見つけたものです。コーヒーフェスティバルに参加するために滞在した際に購入しました。

ファイブエレファントでは4年半ほど働いています。以前はクロイツベルク店でバリスタをしていて、コルヴィッツ店がオープンするタイミングでマネージャーになりました。実はこの店舗がオープンしたのはコロナによる大規模なロックダウンがはじまる直前だったので、なかなか大変な時期でした。それでも新店舗のオープンに携わることができたのはとてもやりがいのある経験でしたね。

ファイブエレファントは店舗によってそのコンセプトや雰囲気も少しずつ異なりますが、コルヴィッツ店はとりわけ地域密着型のカフェ。すごくローカルで落ち着く雰囲気のある店舗ですよ。

アダさん:マネージャーとして店舗での業務のほか、新しいコーヒーの情報に触れるためコーヒーフェスティバルなどのイベントにも積極的に参加しています。コーヒーフェスティバルは毎年行われるコーヒーにまつわる見本市のことで、ロースタリー、コーヒー豆の生産者、カフェの人たちが一同に集まる大きなイベントです。コーヒーに携わるさまざまな業種の人々と直接会って最先端の情報を交換できるところが醍醐味です。パリやロンドンなどヨーロッパの大都市のいたるところで行われているので、世界中のコーヒー仲間とたびたび再会できるところも楽しいですね。

アダさん:私はすごく社交的なので休みの日にはいつも友達と出かけるのですが、他のカフェに行くことも多いですよ!みんながそれぞれスペシャルな分野を持っているので、いろいろなコーヒーを味わうことができておもしろいです。ベルリンは多様な国、文化圏から人々が集まる大きな都市だからこそ、多文化的だしコーヒー文化も盛り上がっているのだと感じますね。

コルヴィッツ店バリスタ ロレーナさん

次にお話を聞いたのはブラジル出身のロレーナさん。アダさんと同じくコルヴィッツ店に所属しています。世界最大級のコーヒー生産国から来た彼女の目線から見た、ベルリンのコーヒー文化について教えてもらいました。

Instagram:lorenaabrum

ロレーナさん:

ビーニーはプライマークで購入しました。ブレザージャケット、Tシャツ、ジーンズはすべてZARAのものです。ブーツはドクターマーチン。シャツはなんと、道端の「ご自由にお持ちください」から見つけてきたものです。今日はジーンズを穿いていますが、白と黒だけのシンプルな服を選ぶことが多いです。

私はブラジルのロンドニアという、アマゾン川近くの小さな町から来ました。ドイツ人の夫とともに、より良い生活のためにベルリンに移住したのが1年前です。当時は英語の勉強を始めたばかりで、まさかすぐに仕事ができるとは思っていなかったものの、ファイブエレファントで働き始めて7ヶ月が経ちました。ブラジルにいたときからスペシャリティーコーヒー業界のなかで働いていて、バリスタ歴は5年以上です。

バリスタの目線で見るブラジルのいいところは、美味しいコーヒーを提供する場所がたくさんあるところ!ハイクオリティのコーヒーをすぐに見つけられます。ただ、ブラジルはコーヒー豆の生産と輸出が盛んである一方で他の国からの輸入量はそれほど多くないのです。ベルリンではエチオピアやケニア産のコーヒー豆を簡単に入手できるけれど、ブラジルではかなり高額です。それゆえに私のホームタウンでは人々がブラジル産以外のコーヒーを楽しむ機会はそんなに多くないと感じます。ベルリンには本当にたくさんの種類のコーヒーがありますね。また高性能なマシーンもたくさんあります。ファイブエレファントが導入しているマシーンも、非常に良いものですよ。

タトゥーをたくさん入れているロレーナさん。かつて親友が住んでいたアパートの部屋番号、絵を描くことが趣味なロレーナさん自身が手がけたデザインなど、彼女のアイデンティティを表すものが並ぶなか、コーヒーカップのタトゥーもありました!

ロレーナさん:普段は絵を描いたり、ものを作ることが好きです。自分だけの世界を持つことが私にとって大切なのです。作品には白と黒だけを使うことが多く、それが私の服装のスタイルにも反映されています。

クロイツベルク店バリスタ レナさん

3人目として登場してくれるのはクロイツベルク店に所属するレナさん。バリスタのかたわらアーティスティックな活動に明けるレナさんに、ベルリンでのお気に入りの過ごし方について聞きました。

Instagram:ronaldreaganfanclub

大きな窓が特徴的なクロイツベルク店の前に立つレナさん。オーバーサイズの半袖シャツにシンプルな長袖をレイヤリングすることでリラックス感のあるスタイルにメリハリが生まれます。

レナさん:ファイブエレファントのバリスタのドレスコードは「パンツスタイルであること」と「タンクトップのような腕の出る服装を避けること」だけなので、いつも自分らしい服装で働いています。カジュアルでニュートラルなスタイリングが多いですね。今日着ているものはアクセサリーも含めてすべてセカンドハンドです。

2年前にベルリンに来るまではアメリカ・ミズーリ州に住んでいました。ミズーリとベルリンは文化的にも天候的にもかなり異なる場所です。ミズーリは内陸なので一年を通して寒暖差が激しく、冬はしばしばゴーグルをしないと目が開けられないほど冷え込むのです。ベルリンのひとはみんなベルリンの冬は寒くて厳しいと言いますが、ミズーリよりはいいかもしれないですね(笑)

ベルリンはパフォーマンスアートのシーンがとても発展している楽しい街です。私自身もかつてドラァグとしてダンスやリップシンクなどのパフォーマンスをしていたこともあり、新しくて面白いイベントや会場にはよく足を運んでいます。

レナさん:日曜日にはフリーマーケットに行くことが多いです。クロイツベルク地区のボックスハーゲナープラッツのフリーマーケットはアクセスしやすいのでよく訪れています。

一方、家でアートクラフトを楽しむのも好きです。ミシンを使った裁縫をよくしていて、最近はハットやボンネットを手作りしています。クリスマスマーケットで見かけたジェスターハット(道化師が被るカラフルなハット)にすごく惹かれたから自分で作ってみようと思ったことがきっかけです。

ファイブエレファントではバリスタとして9ヶ月働いています。私にとって初めてのバリスタワークですが、今まで経験したことのない新しい世界を見てみたいと思い、はじめました。お気に入りのメニューは最近提供するようになった冬季限定のメニュー・カルダモンパンプキンラテ。冬にぴったりの美味しいラテドリンクですよ!

レナさん:ラントヴェール運河はベルリンの人々の憩いの場。天気の良いお休みの日には運河沿いに座り、友達と話して過ごすこともあります。

ミッテ店バリスタ 恭佑さん

最後に紹介するのはミッテ店に勤務する恭佑さん。宇都宮出身の恭佑さんは日本でバリスタとして3年間勤務したのちにベルリンへ渡ったそうです。日本とドイツ、2カ国のコーヒー文化を知る彼が見る、ベルリンのコーヒー事情を教えてもらいました。

Instagram:kyosukekaji

恭佑さん:キャップはカーハートのものです。ベルリンの店舗で購入しました。シャツはラルフローレンのかつて存在したポロ・カントリーというラインの古着で90年代のアイテムです。デニムはリーバイスの501の古着。靴はコンバースのチャックテイラーで、ベルリンのセレクトショップ・Voo Storeで購入しました。アクセサリーはハンドメイドのシルバーです。

ベルリンで古着を見るときにはPAUL'S BOUTIQUE、Repeater、Yummy Vintageを回ります。また休みの日には他のカフェを巡って新しくリリースされたコーヒーを試したり、バリスタたちとおしゃべりすることも多いです。日本人のバリスタも結構いますよ!

ベルリンには彼女と一緒に2023年4月に来ました。ヨーロッパのコーヒーシーンを学びたい僕と、アートに触れたい彼女の両方がともに興味を持った場所がベルリンだったのです。以前ワーキングホリデーでカナダ・バンクーバーに一年滞在していたこともありますが、ヨーロッパでの生活はベルリンが初めてです。

恭佑さん:カフェで働いているのと働いていないのでは、得られる情報の量が全然違います。バリスタとしてカフェに所属しているからこそ、専門性の高い情報にアクセスできるのです。僕はコーヒーの焙煎についても学びたかったので、それこそどこかに所属していないと触れることさえできないような高価な機械を扱うことができるというのも大きな意味があります。

ベルリンに来たばかりの時から、どのカフェで働くのかを考えていましたね。そのなかでもファイブエレファントの魅力はクオリティを常にキープしているところ。また、お客さんとのコミュニケーションの取り方が自分の性格にマッチしている気がしました。

恭佑さん:日本のカフェの雰囲気と一番異なると感じるところはお客さんとの距離感ですね。友達のようなフランクさがあります。常連のお客さんは近くのショップやオフィスで働いている人やご近所に住んでいる人が多いですが、エリアがら観光の方もよく見えます。日本から来た方にもぜひ立ち寄って欲しいですね!

<<FIVE ELEPHANT店舗情報>>

営業時間:

月〜金 午前8時〜午後6時

土日 午前9時〜午後6時

コルヴィッツ店

Kollwitzstr. 98, 10435 Berlin

クロイツベルク店

Reichenberger Str. 101, 10999 Berlin

ミッテ店

Alte Schönhauser Str. 14 Str. 101, 10119 Berlin

Senior writer / Photographer:Yuko Kotetsu

Coordinator:Yuri Wakamori

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