変容するギター、表象、恣意性。東京の4人組、killmilkyがデジタル・シングル「シニフィアンが溶け出す」を3月7日(木)にリリース

東京を拠点に活動する4人組バンド、killmilky(キルミルキー)がデジタル・シングル「シニフィアンが溶け出す」を3月7日(木)にリリースする。本作は4カ月連続でリリースするシングルの第1弾。 killmilkyは、2020年に小森まなこ(Vocal / Guitar)を中心に結成。同年、「誘蛾燈」「白昼夢」のミュージック・ビデオをYouTubeにて発表。2021年7月に初ライブを敢行し、以来、シューゲイズ・シーンを中心にライブ活動を展開。2022年4月に1st EP『If you kill milky me』、2023年7月に2nd EP『虚構のサンクチュアリ』をリリース。苛烈なノイズの轟音と、その隙間から響き渡るフィメール・ボーカルで、狂気と情念が渦巻くサウンドを鳴らしてきた。

今作「シニフィアンが溶け出す」は、イントロの水の滴る音と、トリッキーに変容するギターが鮮烈な印象を与える。後半のギター・ノイズはまさにkillmilkyのシグネチャー・サウンドと言えるものだが、キーボードを取り入れ、隙間を活かすようなアレンジも志向するなど、バンドが新たなフェーズに踏み込んだ印象も強い。killmilkyのメイン・コンポーザーであり、文学作品への造詣も深い中野ち子(Guitar)の思想、フェチが全面的に色付いた、あまりにも狂ったポップネス。言葉、自意識、音像の境界と恣意性が、曖昧になっていくようである。 なお、これまでの楽曲同様、今作もレコーディングからミックス/マスタリングに至るまで、全てセルフ・プロデュースによって制作されている。

中野ち子(Guitar)コメント

今回の4作は全てあるひとつのテーマについて書こうとしたものです。それについて何かわかりやすい言葉で記述してしまうことは、あまり美的ではないし、なにより不可能なことです。

これらの作品において、世間一般が言うところの「伝えたいこと」や「作品の意味」などは存在しません。なにかを表現したいわけでも、なにかわかってほしいことがあるわけでもありません。人間なら音によって世界に意味させることができるというのは思い上がりのように感じます。

同時に、どれだけ意味を剥ぎ取っても、音のかけらが意味してしまうことには不安に似た感情があります。意味をもっていないはずなのに意味してしまうものを、可能な限り滲ませ、ぼかし、曖昧にすることが、私たちにできる唯一のことです。

私たちが意味をもたない言語=音楽を話すことはいかにして可能でしょうか。

シニフィアンが溶け出し、まわりに染み出ていく。結ばれていたシニフィエは宙に浮き、薄まっていく。わたしとわたし以外のすべての境界を曖昧にし、わたしと鏡像のわたしとの境界も曖昧にする。意味を失い狂った状態。

音と意味をつなぐ線は滲んでゆく。

わたしのトレ・ユネール、音のトレ・ユネール、曖昧になってゆく。

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