アメリカで「梅毒」が急増中 【1950年代以来最高値に】

現在、アメリカでは梅毒が急増しているという。

性感染症の梅毒(シフィリス)の感染者数が、アメリカの全ての年齢層と地域で増加していることが、2018年から2022年のデータに基づくCDCの報告書で明らかになった。

画像: 梅毒菌トレポネーマの電子顕微鏡写真 CC BY 2.0

目次

アメリカでの梅毒急増、増加の一途

米国疾病管理予防センター(CDC)が1月30日に発表した報告書によると、アメリカの梅毒感染者数は1950年代以来の最高水準に達しているという。

CDCはまだ2023年のデータを公表していないが、最新の報告では、この性感染症の症例が2018年から2022年の間に約80%増加し、2022年の新規症例は20万7000件以上に達したことが分かった。

この数字には、性行為による梅毒と、妊婦から胎盤を介して胎児に感染する先天性梅毒の両方が含まれている。

CDCは、報告書に含まれる声明の中で、「アメリカの梅毒流行がさらに悪化した1年であり、感染者を減らすために迅速な行動が緊急に必要だ」と述べている。

梅毒の最も感染力の強い初期段階と二期段階の発生率は、全ての年齢層とすべての地域で上昇しているという。

先天性梅毒も増加の一途

2022年は、先天性梅毒の発生率も高くなっているという。

先天性梅毒の症例数だけを見ると、2022年は黒人とヒスパニックで多くの症例数が報告されている。

CDCは声明の中で、「長年にわたる社会的不平等が健康面の不平等も生み出し、健康格差を引き起こしている」と述べた。

2022年の新生児で報告された先天性梅毒の症例は3700件以上で、これは2021年から30%以上の増加であり、過去10年間で937%の増加を示した。

画像 : 梅毒に罹患した患者に関する現存最古のメディカルイラストレーション public domain

梅毒増加の原因

コンドームの使用減少や薬物乱用など、いくつかの要因が梅毒の増加に拍車をかけているという。

CDCは梅毒の急増の理由をまだ調査中だが、報告書では 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを潜在的な影響要因の1つとしている。

パンデミックに注力したことで、性感染症の監視と対応が後回しにされた可能性があると考えられている。

予防と治療

CDCは、性感染症に対する偏見をなくし、人を判断したり脅したりすることなく、検査と治療を受けられる環境を整えることができれば、女性と赤ちゃんの健康に大いに役立つだろうと指摘している。

梅毒は抗生物質で治療することができ、感染した妊婦が早期に診断と治療を受ければ、先天性梅毒を予防することができるという。

また、梅毒で生まれた赤ちゃんも、抗生物質で治療することができるとしている。

梅毒とは

梅毒についてよく知らない方のために、簡単に説明する。

梅毒(syphilis)とは、性感染症の一種で、以下のような特徴を持つ。

・原因菌は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という細菌
・主に性行為を通じて感染する
・症状は原発性梅毒、二期梅毒、三期梅毒の3期に分類される
・原発性梅毒では陰部に硬い痛みのない潰瘍が生じる
・二期梅毒では全身に発疹が出る
・治療しなければ脳や神経に障害が起こる三期梅毒に進行
・妊婦が感染すると胎児に先天性梅毒を起こすことがある
・抗生物質による治療で完治可能
・コンドームを使用することで感染を予防できる

さいごに

梅毒は、日本においても、2021年以降大きく増加しているという報道もある。

感染を恐れすぎると、ますます少子化が進んでしまうので、この感染症は簡単に予防ができることを覚えておいていただきたい。

なお本稿は、医学的なアドバイスを提供するものではないので、参考程度にとどめ、何かあれば、早い段階で医師に相談してほしい。

参考 : Sexually Transmitted Infections Surveillance, 2022

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