『ちいかわ』ナガノ氏もアカウント開設 Xの移行先候補『Bluesky』は登録者が1秒で8人増加中

Twitterの創業者であるジャック・ドーシー氏が立ち上げたSNS、『Bluesky』の登録者が急増中だ。背景には2月6日におこなわれた新規アカウント登録に関する仕様変更が影響している。

『Bluesky』はもともと2019年にTwitter社(当時)の分散型SNSプロジェクトとして発案され、のちに独立したサービスだ。2021年8月にはTwitterから独立し、別法人としての運用を開始していた。そのおかげもあって、イーロン・マスクのTwitter社買収による直接的な影響を受けることなく運営をおこなってきた(ただし、間接的には資金調達への影響があったとする見方もある※1)。

イーロン・マスクによるTwitter社の買収、『X』への社名・サービス名変更、ポリシーの転換などによる先行き不安を受け、ネットでは一時“移住先”として注目を浴びていた。

しかし、これまで『Bluesky』は新規アカウントの登録に制限を設けており、すでに利用しているユーザーから招待コードを受け取るか、ウェイティングリストに登録してコードが届くのを待つしか始める方法がなかった。国内ではテクノロジー系の識者を中心にじわじわと広まっていたものの、あくまでも「試験運用中」という雰囲気があった(事実、公式ブログでサービスの成長速度を管理するために招待制をとっていたと運営チームが言及している※2)。

そこへ来て、冒頭の仕様変更である。誰でも新規アカウントを登録することができるようになり、「Twitterの創業者が立ち上げたSNS」という触れ込みも相まって登録者が急増している。

直近で『Bluesky』のアカウントを開設した人物でいえば、『ちいかわ』『ナガノのくま』などで知られるイラストレーター・ナガノ氏が『Bluesky』を始めたことが話題になった。そのほかにも、『ノーゲーム・ノーライフ』の原作者として知られる榎宮 祐氏、VTuberとしても活躍するしぐれうい氏など、ネットカルチャーに明るいユーザーを中心にアカウントを開設する人が増えている。

「とりあえず作った、運用するかは今後次第」というユーザーも多いだろうし、なりすましを防ぐための意味合いもあるだろう。筆者も少し前にウェイティングリストからコードが到着し、「とりあえず、どんなもんか見てみよう」と登録だけはしていたクチだ。

『Bluesky』公式は昨晩、登録者が400万人を越えたこと、平均して1秒間に8.5件のアカウント登録があったことを報告した。今後はプロジェクト開始当初に掲げていた分散型ネットワーク(フェデレーション、あるいはフェディバースなどとも呼ばれる)の機能をリリースするとしている。同様にフェディバースへの参入を掲げる『Threads』などの動きとあわせて注視していきたい。

一方で、現代におけるSNSユーザーのニーズを鑑みると、結局のところユーザーが定着するか否かは「どれだけ多くの情報を(効率よく)得られるか」になってくるのではないだろうか。Xからの移住先を探すユーザーが多くいるなかで、それでもXが利用され続けている要因は、圧倒的なユーザー数からくる情報量の多さに他ならない。

『Bluesky』はXやThreadsでいうところの「おすすめ」欄を今のところ設けていないが、ユーザーの可処分時間が限られる以上、SNSが成長すればするほど情報の見逃しは増える。『Bluesky』の「フィード」機能(あるテーマに関連する専用のタイムラインを作成・共有できる機能)はこうした状況にマッチするものだが、逆に言えば興味の無かった情報と出会うことはできなくなるし、多くのユーザーは「いま何が流行っているか」を知りたがっている。

しかし、Xとて油断はできない。Xの情報収集ツールとしての価値が下がり、『Bluesky』やThreadsの方が情報を集めやすいとなれば、徐々に移住は進むだろう。現在Xで問題になっている「インプゾンビ」(インプレッション稼ぎのためのBOT/スパムアカウントの俗称)などはまさにその価値を下げ続ける代表例なだけに、X社の対策が望まれる。フェディバースの動きと同様に、X社の動向にも引き続き注目だ。

※1参考:https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-04-16/bluesky-funding-to-be-reviewed-if-twitter-owners-change-dorsey
※2参考:https://bsky.social/about/blog/02-06-2024-join-bluesky

(文=三沢光汰)

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