L'Arc-en-Ciel、多方面で発揮される4人の才能 ソロ、新バンド…型にはまらない活動の軌跡

L'Arc-en-Cielが、2月から3月にかけて全国4都市を巡る『ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND』を開催する。先に発表された10公演のチケットは発売と同時に即完。追加公演5公演が発表され、全国15公演を行う本ツアーのコンセプトは、タイトル通り“UNDERGROUND”だ。これまでライブであまりセットリストに入ってこなかったレアな楽曲を多数披露するという。2021年9月から12月にかけての『30th L'Anniversary TOUR』同様、センターステージを採用した本ツアーは、過去にない貴重なライブになりそうだ。

L'Arc-en-Cielが多くの人に支持される要素のひとつに、楽曲のバリエーションが挙げられると思う。メンバー4人がシングル曲を生み出せるのだ。ゆえに同じバンドでありつつも、一人ひとりの趣向性や活動も多岐にわたる。そこで本稿では、近々のメンバー個々の活動をメインに振り返りながら、それぞれの才能や実績について改めて考えてみたいと思う。

まずはhyde(Vo)だ。2001年、ソロデビュー以降ライブをメインにした活動を展開。全国のZeppで連日公演を行う前例なき“籠城型ツアー”を始め、HYDE名義以外はVAMPS、THE LAST ROCKSTARSで海外ツアーも行っている。また近年は、夏フェスや各地のロックイベントへの出演も多く、世代を超え様々なアーティストと交流の場を広げている。昨年、初出演となった『男鹿ナマハゲロックフェスティバル』では、他の出演アーティストたちが続々とHYDEとの記念写真を自身のSNSに投稿するなどして賑わせた。先日、今年春より放送されるアニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』(フジテレビ系)のオープニング主題歌がMY FIRST STORY × HYDEによる「夢幻(むげん)」であることが発表されたが、これはイベントでの共演をきっかけに交流を深め、HYDEのソロシングル曲「FAKE DIVINE」(2018年)などで共作者としてSho(MY FIRST STORY)が参加するなど、お互いが音楽性においてもしっかり共通項を見出したからこそ実現した、世代を超えたコラボレーションだと考察する。

次はken(Gt)を取り上げよう。2002年に結成したスリーピースバンド SONS OF ALL PUSSYSの活動を経て、2006年にはken名義での初音源となるシングル『Speed』をリリースし、ソロ活動を本格化した。ソロでは、ほぼすべての楽曲の作詞・作曲・アレンジ・プロデュースを担当しているほか、ピアノなど、ギター以外の楽器にも挑戦している。2008年頃からはMUCCやBAROQUEなどの音楽制作時のプロデュースを手掛けるように。2022年には、逹瑯(MUCC)のソロアルバムに楽曲提供を行っている。また一方で、HYDEのソロライブやMUCCのライブにゲストギタリストとして登場したり(昨年末の『MUCC 25th Anniversary TOUR Grand Final Bring the End to「Timeless」& WORLD』にも登場)、ギターと音楽を愛する人のための祭典『TOKYO GUITAR SHOW』に2011年から出場し、来場者とギター談義を繰り広げるなど、プロデューサーとギタリスト……というよりもはやギターマニア、その両方で存在感を発揮している。

リーダーのtetsuya(Ba)と言えば、昨年、音楽シーンにおいても、いろいろな意味で注目を集めた「メンバー本人がいるL'Arc-en-Cielのコピーバンド」であるLike~an~Angelが、コピーバンドとして史上初の日比谷野外大音楽堂でライブを開催したことが、記憶に新しい。TETSUYA(ソロ活動の現状名義)がソロ活動をスタートさせたのは2001年。2ndシングル『蜃気楼』は、12cmシングルが主体になっている中で“8cmCD+Tシャツ”という形態で発売され話題となった。以降、コンスタントに作品をリリースし、ソロで幾度も全国ツアーを開催している。また、コロナ禍中は、配信ライブを再放送も含めて積極的に行うなど、その時々の時世の流れを冷静に読み、フレキシブルにアクションし、アイデアを具現化していくスタンスに、いつも驚かされてばかりだ。

次にyukihiro(Dr)に触れたいと思うが、L'Arc-en-Cielに加入した以降のソロ活動に絞る。彼は2000年に発売されたL'Arc-en-Ciel唯一のリミックスアルバム『ectomorphed works』をトラックダウンまで手掛けている。2001年にソロプロジェクトとしてACID ANDROID (現在の表記)を始動。現在までコンスタントに作品をリリースし、単独ライブをしていることに加え、オーガナイズイベント『acid android in an alcove』を定期的に開催している。2021年には京(DIR EN GREY)がメインとなり結成したバンド Petit Brabanconにドラマーとして参加。また2012年に結成した3ピースバンド geek sleep sheepは、2023年11月24日に開催されたイベント『slice of alcove』で、約6年ぶりにステージに立った。同イベントでは最後にyukihiroがDJとしても登場。自身のルーツをアナログレコードでスピンした。どのバンドも、どのイベントも、yukihiroの音楽に対する探求心を体現したものだ。列挙した3つの名義で、それぞれ音楽性が異なるのもyukihiroらしい。

そんな才能たちが集ったL'Arc-en-Cielは、1990年代、2000年代、2010年代と3つのディケイドにわたり、チャート1位を獲得している日本屈指のモンスターバンドである。しかも必ず、以前の自分たちを超えてくる。ほんの一例を挙げれば、ライブの出音がそうだ。ドームクラスの会場でも、まるでレコーディングスタジオかと思うほど、一音一音がくっきりわかるサウンドを出してくる。毎回、ドームクラスでL'Arc-en-Cielのライブを観た後には「これ以上のいい音はもうないだろ」と思うのだが、彼らは次のライブでそこを軽く超えてくるのだ。

間もなくスタートする『ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND』で、L'Arc-en-Cielはどんな“ラルク超え”をしてくるのだろう。久々に演奏される楽曲群が、どうアップデートされているのか楽しみだ。

(文=伊藤亜希)

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