H3ロケット 欲しいのは「成功」の2文字 1号機失敗から1年以内にこぎ着けた再挑戦、衛星市場参入へ低価格化追求 種子島で15日打ち上げ

2023年3月、打ち上げに向け射点に移動するH3ロケット1号機=南種子町の種子島宇宙センター

 新型基幹ロケット「H3」2号機は、15日に鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げられる。昨年3月の1号機失敗から1年以内での再発射にこぎ着けた。国際市場への本格参入を見据え、低価格化や衛星の種類に応じて機体サイズを変更する柔軟性を追求。基幹ロケットは固体燃料ロケット「イプシロン」を含め世代交代の時期を迎え、H3の成否は今後の宇宙開発を左右する。

 「出口が見えない時期がしんどかった」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岡田匡史プロジェクトマネジャーは今年1月の会見で心境を明かした。

 1号機は昨年3月7日、同宇宙センターを離陸。新たに開発した1段目の主エンジン・LE9は正常に動作したが、2段目エンジンが点火せず、指令破壊された。搭載した地球観測衛星「だいち3号」も失った。

 JAXAは8月までに、失敗原因を(1)点火装置のショート(2)点火装置で過電流(3)制御装置で過電流-の三つに絞り込んだ。年単位の原因究明になるとの見方もあったが、原因を特定せずに故障シナリオ全てに対策を取る方法を採用。早期の打ち上げを目指した。

 背景には、打ち上げ回数や費用で世界に後れを取る国産ロケットを取り巻く厳しい現状がある。JAXAとH3の開発を担った三菱重工業関係者は「衛星市場へのアピールのためにスピード感が求められる」と説明する。

 H3は現在運用する液体燃料ロケットH2Aの後継機。H2Aと比べて推力を1.4倍にして衛星打ち上げ能力を向上。主エンジンの部品数を減らすなどし、低価格化につなげた。複数の機体形態を準備し、衛星のニーズに合わせた価格や能力を提供する。

 2号機はコストが安い「LE9」3基のみで飛ばす当初の方針を変更。1号機で正常に動いた「LE9」2基と固体ロケットブースター2基を装着する。「だいち4号」の搭載も見送り、超小型衛星2基を載せる。宇宙政策に詳しい東京大の鈴木一人教授(国際政治)は「JAXAは1号機の失敗を踏まえ、慎重に対応したいのだろう」とみる。

 今年1月に48号機を打ち上げたH2Aは50号機で終了する予定。イプシロンSは現行機の改良型だが、2段目モーターの地上燃焼試験で爆発事故が起きた。6号機が2022年10月の打ち上げで失敗したことも影響し、開発が遅れている。次世代を担う基幹ロケットを軌道に乗せるためにも「H3」2号機は結果が求められる。

 宇宙基本計画によると、H3は30年度までに国の衛星計約20機を輸送する。鈴木教授は「衛星を飛ばせなければ、災害時の情報収集や安全保障、宇宙探査など多方面に影響が及ぶ。着実に計画を実行するために2号機の成功は不可欠だ」と指摘した。

〈関連〉2段目エンジンが着火せず打ち上げに失敗した「H3」1号機=2023年3月、南種子町の種子島宇宙センター

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