夜の寝かし付けに一苦労 保育園の昼寝は必要? 普天間国博さんが答えました【お悩み相談 あまからカフェ】

 日常の悩みや困りごとに、さまざまな専門家や著名人が答える「あまからカフェ」。今回のお悩みは3歳の子を育てる会社員のてだっこさん(35)より。保育園での長時間の昼寝にモヤモヤを抱えています。

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【相談者】てだっこ(35歳女性、会社員、沖縄本島中部)

 共働きで子どもを育てています。
 3歳の子どもの寝かしつけがなかなか終わらず、毎日の夜がつらいです。 保育園でたっぷり2時間から2時間半ほどの昼寝をしているからだと思いますが、夜8時ごろから布団に入って、添い寝をしても、なかなか寝てくれず数時間かかることもあり、イライラします。
 早寝は発達に大事だとよく聞きますし、せめて夜だけでも、自分(私)ひとりの時間が少しでも欲しいので、子どもには少しでも早く寝てほしいのですが・・・。
 保育園が休みの土日は昼寝なしで過ごすので、絵本を読んでいるうちにすーっと寝てくれます。私もストレスなく、優しい気持ちで子どもに接することができるように思います。 保育園のお昼寝って必要なんでしょうか?

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【回答者は、睡眠のメカニズムに詳しい精神科医の普天間国博さんです】

 みなさんこんにちは。琉球大学病院で睡眠外来を担当している普天間国博です。

■特性を考慮し個別に配慮

 「てだっこ」さんのご質問ですが、結論から申し上げると「幼児期(2~5歳)の昼寝は幼児の特性を考慮して個別に配慮する」必要があります。人が必要とする睡眠時間は個人差がありますが、生理的変化として加齢とともに睡眠時間は短くなっていきます。

 米国のNational Sleep Foundationが公開した望ましい睡眠時間の目安は乳児(満1歳未満)では12~15時間、未就学児(3~5歳)では10~13時間、学童(6~12歳)では9~11時間、中高生では8~10時間、成人(20~64歳)では7~9時間、高齢者(65歳以上)では7~8時間とされています。

 生まれたばかりの新生児は大人のような睡眠リズムが形成されておらず、数時間ごとに睡眠と覚醒を繰り返します。生後数カ月たつと睡眠・覚醒の概日リズムが出現し、睡眠は夜間に集中し始めます。それとともに昼寝の時間も減少していき、明瞭な発語の見られる1歳前後から昼寝の回数も1日数回から1日1回に減っていきます。2歳以降は昼寝をしない子どもの割合が徐々に増えていき、学童期以降はほとんどの子どもが昼寝をとらないようになります。 

■人員、スペースの確保…国全体の課題

 時代をさかのぼると1948年に文部省が策定した「保育要領」では「全ての幼児に昼寝をとらせること」や「昼寝時間の目安は1時間半程度」であると記載されていました。しかしその後、幼児期の保育園での昼寝が睡眠のリズムを後退させてしまう傾向があることが明らかになりました。2011年の日本小児保健協会の「幼児健康度に関する継続的比較研究」では保育園で昼寝をとる年代(3歳前後)の方が学童期(6歳前後)の子どもより就床時刻が遅いことが示されていました。

 そのため2017年に改定された「保育所保育指針」では「保育園の昼寝の対応は一律とならないように配慮する」ように記載されています。子どもの発達段階や特性には個人差があるため、保育園で昼寝しても夜の寝つきがいい子もいれば、昼寝で寝つきが悪くなってしまう子もいます。保育園での昼寝は、「無理に寝かす」や「無理に寝かせない」ではなく幼児の特性を考慮して個別に配慮するべきでしょう。

 しかし幼児の個別対応となると大変なのは保育所の職員さんです。対応する保育士の増員や保育所内のスペース確保には行政からのサポートや国の予算配分が必要でしょう。「てだっこ」さんのご質問は少子化対策と合わせて国全体で取り組むべき課題だと思われます。
 

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