『大奥』小芝風花×亀梨和也×森川葵×宮舘涼太の複雑な四角関係が展開 安田顕の悪役ぶりも

倫子(小芝風花)とお知保(森川葵)、家治(亀梨和也)と定信(宮舘涼太)がそれぞれ恋の火花を散らした『大奥』(フジテレビ系)第4話。かねてより、本作が謳っていた“大奥史上最も切ないラブストーリー”が本格的に幕を開けた。

田沼(安田顕)に強要され、お知保を側室に迎えることを受け入れた家治。その事実を知らない倫子は、家治との間に夫婦としての絆が芽生えた矢先の出来事に大きなショックを受ける。だが、家治の心は依然として倫子のもとにあった。

政にはおろか妻や子供にも関心を示さず、女遊びにうつつを抜かしていた父親、そんな夫との愛のない生活の末に壮絶な死を遂げた母親、己の地位や名誉のためならば人を裏切ることも厭わない城の者たち……。幼い頃から家治が見て育った世界には常に愛憎と欲望が渦巻いていた。その結果、心を閉ざした家治だったが、御台所となった倫子と出会い、変化が現れる。一点の曇りもなく純粋な心で人を思う倫子は家治にとって、自分の世界に現れた唯一の良心であり、希望だったのだろう。そんな彼女を裏切るまいと家治は頑なにお知保を抱こうとはしなかった。

だが、その心を巧みに操るのが田沼だ。家治には田沼の意向に逆らえないある理由があった。母・お幸の方(紺野まひる)の亡き後、田沼に一人の男が収容された牢へ連れていかれた家治。そこで家治は、お幸の方が父に隠れて牢の男と密通していたこと、その間に生まれたのが自分であることを知らされる。その直後、男は田沼によって家治の前で口封じに殺された。震える手で男の懐にあった扇子を取る田沼。目をひん剥き、高笑いする姿は悪役然としており、幼い家治にトラウマを植え付けさせるのには十分だった。

そんな田沼にこのままでは倫子の身にも危険が及ぶと脅され、家治は屈してしまう。ずっと慕っていた家治の腕の中で幸せを享受するお知保と、身を引き裂かれるような嫉妬の苦しみを味わう倫子。二人の目からは対照的な涙が溢れた。倫子の気持ちを思えば苦しい展開だが、一方でお知保のことも憎みきれないという視聴者も多いのではないだろうか。

お知保は病気がちな母親と幼い兄弟たちの暮らしを支えるために大奥勤めに出た苦労人だ。その大奥でも壮絶ないじめに遭い、唯一自分を気遣ってくれた家治に恋をしたお知保。大奥で成り上がり、家治の心を手に入れるためならば手段を厭わないところはあれど、その根っこにある純粋な心を随所にのぞかせる。だからこそ、一概にお知保を倫子の憎きライバルとは思えない。

かたや、家治と恋の火花を散らすのがいとこにあたる定信だ。彼には“賢丸”というもう一つの名前があり、かつて倫子が身を寄せていた浜御殿で共に育った幼なじみだった。倫子が増上寺代参に出向いた際に、江戸の街を案内した定信。言葉はなくとも、倫子を見つめるその優しい眼差しから愛情が溢れる。家治に対してもただライバル心を燃やしているというよりは、幼い頃から聡明な家治への尊敬の念。にもかかわらず、田沼の言いなりになっていることへの失望や、そのことで貧富の差が開いてしまったことに対する憤りなど、定信の表情からはいろんな思いが感じ取れる。

主演の小芝風花、亀梨和也はもちろんのこと、脇を固める森川葵と宮舘涼太の巧みな演技により、どの登場人物にも感情移入せざるを得ない複雑な四角関係が展開される『大奥』。彼らを意のままに操る田沼の動向からも目が離せない。

(文=苫とり子)

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