グーグルがキャッシュ機能を廃止、ウェイバックマシンの買収も

キャッシュ機能を廃止したグーグル(Photo By Reuters)

グーグルが「キャッシュ機能」を廃止したことが明らかになった。過去のウェブページを検索できる機能で、通信が不安定でウェブページを表示できない場合に、グーグルが保存したページを表示する閲覧補助機能だった。

本当に「古くて不要」な機能なのか?

同社によると、こうしたトラブルが発生しなくなったため「最も古い機能の一つ」だったキャッシュを廃止したという。ただ、最近では不祥事や会社倒産などで閉鎖されたページを閲覧するのに利用され、不要な機能ではない。キャッシュ廃止は新たなビジネスに向けた第一歩かもしれない。

現在、グーグルは過去のページを閲覧できる「The Wayback Machine(ウェイバックマシン)」との提携を検討しており、同サービスを運営する非営利団体の米Internet Archiveを買収する可能性もある。キャッシュ機能の廃止が、その前段階の措置だとすれば納得がいく。

NetCraft and Internet Live Statsによると、1991年に登場したウェブサイトは2016年には10億件を突破した。現在は20億件に迫るとの推測もある。一方で閉鎖されるウェブサイトも多く、検証やデータ取りのニーズからアーカイブのニーズも高まっている。


ビッグデータやAIにも貢献するデジタルアーカイブ

グーグルが提携を検討しているウェイバックマシンは1996年に作成が始まり、2001年に一般公開されたウェブサイトをキャッシュ化したデジタルアーカイブ。創設者のブリュースター・カール氏によると、2024年1月3日の時点で、 6250億以上のページと99ペタバイト(1ペタバイトは1000テラバイト)を超えるデータをアーカイブしている。

現存しないウェブサイトの中には情報価値が高いものもあり、とりわけビッグデータや人工知能(AI)ビジネスでは貴重な情報資源になりうる。グーグルは「キャッシュ機能を廃止した」のではなく、「キャッシュ機能の無償提供を取りやめた」可能性もある。キャッシュ機能が古い機能で役割を終えたとするのなら、今さらグーグルがウェイバックマシンとの提携を図る必要はない。

非営利団体との資本提携では、米マイクロソフトが生成AIのChatGPTを運営する米OpenAIの子会社OpenAI Global, LLCに49%を出資したケースがある。Internet Archiveはウェイバックマシンを寄付で運営しており、増え続けるウエブサイトのアーカイブ化を進めるためにもグーグルからの資金面での支援は大歓迎だろう。

一方、グーグルもウエブサイトのアーカイブスを有償提供すれば大きな収益を得られる。グーグルのキャッシュ機能の廃止は、次なるビジネスチャンスに向けた新たなステップになるのかもしれない。その第1歩としてウェイバックマシンへの出資や買収が考えられそうだ。

文:M&A Online

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