なぜ中国代表は弱いままなのか。行き過ぎたフィジカル重視はタレントを潰す【コラム】

中国サッカーが弱いままだ。

アジアカップ、中国代表はグループリーグでタジキスタン、レバノン、カタールと戦ったが、結果は2分け1敗。一度も勝てず、3位で早々と大会を去った。小国タジキスタンの後塵を拝し、質でも劣っていた。

長年にわたって強化に相当な資金が投じられてきたはずだが、なぜ大国、中国は勝てないのか?

アジアカップを戦う中国の選手たちは、一見して筋骨隆々とし、運動能力の高いアスリートに見える。体格に優れるだけでなく、スプリント能力も高いのだろう。兵士のようないかつい面構えで、体力面で凌駕することはできた。試合終盤、フィジカルで圧倒する場面もあったが…。

大きく速く強いことばかりを重視している“負の産物”も明らかだった。

とにかく、テクニックレベルが低い。ボールを止める、蹴るというところで明らかに劣る。どうにかシュートまでいっても、大きく外すシーンがたくさん見られ、技術が集約される仕上げのところでの拙さを露呈した。

また、タクティクスの面もあまりに未熟だった。

周りの味方と補完した動きが全くできない。お互いをサポートする意識が低いし、チームの中で自分の持ち場を守る、3人目の動き出しでスペースを突く、のような基本的グループ戦術を用いられないのである。そのため攻撃も、「サイドに展開してからのアーリークロスを放り込み、体格を生かして力任せに飛び込む」という一辺倒。アイデアのかけらもなく単調で、目を覆うばかりだった。

そもそも選手スカウティング、育成の段階で、テクニックやタクティクスを重視していないのだろう。

スペインや南米では「サッカーを知っている」と表現される子供たちが重宝される。体格はプラスアルファでしかない。テクニックをタクティクスの中で生かすことができたら、それはフィジカルを打破できる才能だからだ。

「むしろ、小さく細く目立っている子供を引き上げる。大きな体格の選手の裏を取れる技術がある証左だから」

そこまで極端な例もあるほどだ。

サッカーという集団スポーツにおいて、一番大事なのは「周りを生かし、自分も生かされる」という点である。

もし、小柄で細身なアンドレス・イニエスタが中国に生まれていたら、埋もれてしまっていたかもしれない。行き過ぎたフィジカル重視は、容赦なくタレントを潰す。言い換えれば、同じようにイニエスタのような中国人選手がいても、這い上がることは難しいだろう。

今のままの路線では、中国代表はいつまで経ってもサッカー強国になることはない。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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