焦点:S&P一時5000の大台突破で割高化に拍車、「バブルでない」との声も

Lewis Krauskopf

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 8日のニューヨーク株式市場でS&P総合500種は取引時間中に一時5000の大台を突破し、終値は過去最高を更新した。これに伴ってバリュエーションも新たな「高み」に達しつつある。ただ市場関係者からは「バブルではない」との声も聞かれた。

LSEGデータストリームによると、S&P総合500種銘柄の予想利益に基づく株価収益率(PER)は今週20.4倍と、2022年2月以来の高水準を記録し、過去平均の15.7倍から一段と乖離した。

株高が進んでバリュエーションが膨らむのは良くあるケースで、割高な状態を長期間維持することも可能だ。それでも一部の投資家は、こうしたPERの上昇は、米株全般に対する買い意欲を弱めていると警戒している。

ネーションワイドの投資調査責任者マーク・ハケット氏は「20倍のPERで売らなければならないと絶叫する動きは全くないが、買いを入れるなら15倍の方が適切なのは火を見るよりも明らかだ」と指摘した。

通常なら債券利回りが上昇すれば、バリュエーションの下押し圧力になる。債券の相対的な魅力が高まるし、企業の将来的なキャッシュフローの現在価値がより割り引かれるからだ。ところが今年になって、米連邦準備理事会(FRB)の早期利上げ期待が後退し、米国債利回りが再び上昇しているにもかかわらず、バリュエーションは上がり続けている。

つまりFRBが実際に利下げを開始し、利回りが低下に転じれば、バリュエーションはさらに膨らむ可能性がある。

一方で企業業績の見通しに明るさが増せば、米株の割高感を薄めてくれる。もっともこれまでの今決算シーズンを通じて今年の業績見遠いはほぼ変動しておらず、LSEGのデータからは9.7%の増益が予想されていることが分かる。

チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「(S&P総合500種のPER)約20倍は幾分行き過ぎで、われわれが今年後半にならないとお目にかかれないかもしれない企業利益の伸び、ないし金利低下を根拠にしている」と述べた。

エバーコアISIが1960年以降の米株式市場を分析したところでは、高いバリュエーションの局面の後には低調な値動きが待っている。シニア・マネジングディレクターのジュリアン・エマニュエル氏は、12カ月予想利益に基づく22倍というPERで取引された翌年のS&P総合500種の平均パフォーマンスは横ばいにとどまってきた、と説明する。

エマニュエル氏は「救いになる材料は、今のバリュエーションが非常に高まっているとはいえ、まだ2000年のITバブルにおけるピークの28倍とは非常に大きな距離があることだ」と話した。

足元のS&P総合500種のバリュエーションは、ごく一部の超大型銘柄によって歪められている面があるのは間違いない。LSEGデータストリームによると、S&P総合500種において合計ウエートが29%に上るアップル、アルファベット、マイクロソフト、メタ、エヌビディア、アマゾン・ドット・コム、テスラのいわゆる「マグニフィセント・セブン」は、平均PER34倍で取引されている。

同時に、現在の市場ではITバブルや、コロナ禍収束後の急激な値上がりの局面ほどに行き過ぎた投機色が見えるわけでもない。

ネッド・デービス・リサーチの分析では、S&P総合500種は1964年以降のPERの動きを調整したベースで5%余り「過大評価されている」が、「バブルの領域からは程遠い」という。

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