【おんなの目】白内障手術顛末2

 新しいレンズで世界を見た。色彩の鮮やかなこと! 着ていた薄いピンクと思っていたセーターがショッキングピンクであったなんて。室内が明るい。水中から浮き上がった気分だ。これが皆の見ている世界なのか。きれいだ。

 これ私の手? 手に沢山の茶色の染みがあるのです。親指の付け根に一つ丸いシミがあるのは知っていたが、こんなに甲に散らばっているなんて。

 顔を鏡でじっと見た。気絶寸前。シミはもとより顔色も見慣れぬもので、唇なんぞは捻じれている。えっ、これ私? 受け入れられない。そういえば以前デパートの化粧品売り場で店員さんに「シミを隠せるコンシーラーがありますよ」と言われたことがある。シミ等ないのになんで声をかけるんだろう、と無視して素通りした。彼女は正常な目をしていたのだ。明日から化粧をしよう。あれこれ塗ろう。

 白内障手術の本来の目的は、30㎝の所で活字が見えるようすることなのだ。早速本を開いた。活字は黒々とはっきり見えた。こんなに見えるの、と嬉しさが止まらない。今まで活字は薄い4Hの鉛筆で書いたようにしか見えていなかったのに、今は6Bで見える。パソコンの画面も明るい。画面のパンダの白黒がはっきり見える。お医者様ありがとう。これからは立派な老人になります。

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