神戸戦のメッシを母国メディアはどう伝えたか? 香港騒動から窺えたスーパースターの影響力と背負うものの大きさ

2月7日、東京・国立競技場ではMLSからインテル・マイアミが招かれ、J1王者のヴィッセル神戸とプレシーズンマッチを行ない、スコアレスドローで90分間を終えた後、PK戦を神戸が4-3で制した。
この一戦には2万8614人が観戦に訪れたが、その多くの人々にとってのお目当ては、やはり世界最高のスーパースター、リオネル・メッシだっただろう。3日前の香港での親善試合・香港リーグ選抜戦では内転筋の張りを理由にピッチに立つことがなく、この神戸戦でも出場できるかどうかが微妙とされていたが、60分にデイビッド・ルイスとの交代で出場を果たすと、巧みな技術と惜しいシュート場面などで、スタンドを大いに沸かせてみせた。

彼の母国アルゼンチンのスポーツ紙『Ole』は、「アル・ナスル戦(2月1日)で負った筋肉の違和感からまだ回復途中であり、香港代表戦を欠場していたメッシだが、ヘラルド・マルティーノ監督率いるチームでは最も注目すべき存在だった。その30分のプレー時間は、彼が壮大なスキルを披露するのに十分であり、レオは3つの股抜きを成功させ、それは何度も繰り返し観る価値があるほどのものだった」と評し、「30分間のプレーでも、インテル・マイアミでは最高だった」と絶賛している。

「ピッチに立つとともに、インテル・マイアミの攻撃に革命をもたらした」というキャプテンがPK戦でキッカーを務めなかったことについて、同メディアは「奇妙なことだ」としながらも、「この決定の理由はまだ伝えられていないが、真実は右内転筋の浮腫が回復途上にあり、単なる予防策に過ぎないことが全てを示しているだろう。彼は30分間で良いパフォーマンスを発揮し、PK戦では友人のジョルディ・アルバと笑いながらこの時間を過ごした」と結論付けた。

香港選抜戦を欠場し、3日後の神戸戦でプレーしたことが、香港側の怒りを買い、政府レベルで抗議を受ける事態となっているが、マルティノ監督は「昨日の練習の後、レオの調子は良く、今日は30分間プレーすることで我々は同意した」「彼は試合終了時、非常に満足していた。とても快適だったからだ」と語り、「香港の人々の失望は我々も理解しているが、彼が(香港選抜戦で)プレーすることは大きなリスクだった」と理解を求めている。
昨年11月のニューヨーク・シティ戦に始まり、今年1月のエルサルバドル代表戦を経て、FCダラス戦、アル・ヒラル戦、アル・ナスル戦、香港選抜戦、そして神戸戦という親善試合行脚を続けているインテル・マイアミだが、2月21日のMLS開幕戦(対レアル・ソルトレイク)に向けて、あとはメッシの故郷のクラブで、かつて彼がユースチームにも在籍したニューウェルズ・オールドボイーズとの一戦を残すだけである。
そのいく先々で熱狂を巻き起こしているメッシについて、『Ole』紙は「彼の存在が世界中でいかなることを引き起こしたとしても、もはや我々を驚かせることはない。その名が世界的に知られるようになってから、どこでプレーし、どのチームのユニホームを着ていても、レオは全てを変えてしまう」と、そのピッチ内外での途轍もない影響力の大きさを強調した。

ちなみに、メッシが生まれる約半年前の1987年1月、同じアルゼンチンのスーパースター、ディエゴ・マラドーナは直前のセリエAで左足首を酷く痛めながらも、足を引きずって来日を果たし(成田空港に姿を見せた彼はとてもプレーできるようには見えなかった)、「ゼロックス・スーパーサッカー」で南米選抜のキャプテンとして84分間プレーしている(試合は1-0で日本リーグ選抜に勝利)。

彼は自身が大会の目玉選手であることを自覚し、またユニセフ協賛の試合ということで、「世界の子どもたちのためのプレーしたい」と、あくまでも「テレビCM撮影のための来日」のみを許可していた所属クラブのナポリを説得してまでピッチに立ち、素晴らしい技術とフィジカルの強さで満員の国立競技場を沸かせたというが、今回のメッシも同様に、スーパースターが背負うものの大きさを感じさせる。

構成●THE DIGEST編集部

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