「前例がないなら、私が作ればいい!」悔しさをバネに障がい者向けのファッションショーを開催 挑戦し続ける難病を抱える女性に迫る

障がいを抱える人の中には、おしゃれを楽しみたくても難しいという人もいます。そんな思いに応えようと活動しているのが、”Mary”の代表兼モデルの鳥居百舌(@mozu_torii)さんです。

障がい者として困難の経験を生かし、障がい者でもおしゃれができる福祉用具・便利グッズの作成や、イベントを企画をする会社を立ち上げた百舌さん。

今回は百舌さんの現在の活動などについて、話を聞きました。

モデル、インフルエンサーとして活動を始めたきっかけ

依頼をもらったお仕事やインフルエンサー業をしている百舌さん。通院や学業もあるため、現在はMaryでの製作活動はまだ進んでいないとのこと。

モデル、インフルエンサーとしての“活動の原点”は何だったのでしょうか。

ーモデルやインフルエンサーとして活動しようと思われたきっかけについて教えてください。
もともとSNSはやっていましたが、車椅子や障がいのある足を隠しながらでした。2021年の年末に病院帰りの高速道路のパーキングで、母から「隠さないでアップしてみれば?人はそれほど気にしてないよ」と言われたのをきっかけにTikTokやInstagramを上げたのがきっかけです。
想像をこえた嬉しいコメントがたくさんきて、フォロワーも増え、自分自身になんとなく自信がもてるようになりました。

百舌さん(@mozu_toriiさんより提供)

ー発信のきっかけを与えてくれたのはお母さんとのことですが、百舌さんにとってお母さんはどのような存在ですか?
常にネガティブなことを言わないし、どこにでも私を連れ出してくれて、そんな中で私を変な目で見る人いたらガードしながら睨んでくれたり、1日の出来事を私が話したときに受け止めてくれる“壁”のような存在ですかね(笑)

ー百舌さんの活動に対して、SNS上でも多くの反響がありましたが、どのように思いますか?
よい反響には嬉しく思い「やり始めてよかったなぁ」「もっと早く始めれば良かった」と思いました。あと、続けられるように努力もしなくてはとプレッシャーにも日々感じています。

百舌さんが抱える難病

百舌さんは「総排泄腔外反症※」と「脊髄髄膜瘤※」という難病を抱えています。
総排泄腔外反症は、稀少難治性の先天性下腹壁形成異常です。臍帯ヘルニアを合併し、その下方に外反した膀胱と回盲部が存在します。症状には個人差があります。

脊髄髄膜瘤は、主に腰やお尻の上の皮膚や骨が閉じきれず、脳から続く脊髄と呼ばれる神経も開いたまま体表に出ている状態です。
多くは脳に髄液が貯留する水頭症なども伴うものの、百舌さんの場合は皮膚に覆われていたので水頭症は発症していないそうです。しかし、皮膚に覆われていない場合は水頭症を発症するといいます。

ー医者から「一生歩けないですよ」と言われながらも、3歳の頃には自力で歩けるようになっていたとありましたが、百舌さんは自身の病気についてどのように捉えていましたか?また、活動を始めたことによって気持ちに変化はありましたか?
自分の病気について、思春期くらいのときにはマイナスにしか思えなかったです。でも、SNSで本格的に活動するようになってからは、嬉しいコメントやフォロワーの方に支えられ、お仕事もたくさんいただけるようになりました。あの頃の私のままでは味わえないような経験をしたり、普段会えないような人たちとも交流できるようになったり、毎日が楽しいです。

“前例がないなら、私が作ればいい”

ー「自身が10代のときにできなかったことを次世代に果たしてほしい」という思いを拝見しました。どのようなことを経験できなかったのでしょうか?
オファーをいただけたファッションショーで、結局お断りされてしまったことがあります。声をかけてもらえたあと「障がいがあり車椅子です」と伝えたところ「今回の話はなしでということに」と断られてしまいました。
また、SDGsをテーマにしたファッションショーの募集があり、ショーの名前からして私にぴったりじゃないかと思い応募したところ、設備の問題もあるのかもしれませんが「車椅子だと危ない」「前例がない」と断られてしまいました。

ー百舌さんが『前例がないなら、私が作ればいい!』と話されるように、前向きに考えられる秘訣について教えてください。
前向きというか、前の質問での悔しさをバネに行動しているうちに、応援してくださる方々もたくさん増えたので色々なことを前向きに思えるようになりました。

百舌さん(@mozu_toriiさんより提供)

ー”障がい者のためのファッションショー”を開催するにあたってどのような思いがありましたか?また、そのときに苦労したことがもしありましたら教えてください。
前例がないという大人たちに向けて、悔しさをバネに私が成功させる!!という思いで開催しました。苦労したことは、古着という縛りで子ども服を探したことです。子ども用の古着が少なく、10センチ単位でサイズがあり、選ぶのに苦労しました。あと、予想以上にお客様が来てくれたことで会場におさまらなくて、会場を貸してくださった方にもモデルさんにもご迷惑をおかけしてしまいました。

ーショーに出演するモデルさんもそれぞれ違った病気の特性を持っているのではと思いました。それぞれの魅力を引き出すためのファッションへのこだわりについて教えてください。
障がいの種類によって服を着るときの注意点が異なるので、そこを考慮しました。また『着たい・着てみたい服』のほうがみんながキラキラするのではないかと思い、事前にどんな服がいいかヒアリングしました。

ー”ファッションショー”などを通して同じような境遇の方からはどのような声がありましたか?また、活動してきてよかったことについて教えてください。
また開催してほしいと言われました。モデル募集はオーディションなしの先着順だったのですが、応募が多数だったため募集人数オーバーしてしまい、断ってしまった方からも次に開催したときに連絡がほしいと言ってもらえました。
ファッションショーでの活動でよかったことは、モデルさんに「楽しかった、また開催してほしい」と言ってもらえたことです。

今後の活動について

また、百舌さんは現在「困った人のための下着を開発中」とのこと。現在は通院・学業・インフルエンサー業などで進んでいないものの、無理のないペースで小さなものから作っていく予定だと話してくれました。

ー個人事務所”Mary”を立ち上げるにあたって苦労したことがもしありましたら教えてください。
事業を立ち上げるにあたっての苦労は、初めてクラウドファンディングに挑戦したことです。

ー百舌さんはこれから”Mary”やモデルなどの活動を通して、どのような人にどのようなことを届けていきたいですか?
私はまだまだですが、私よりも下の世代の子に「やりたいことを諦めないで」「自分以外の人の言葉に左右されないで、今の自分の気持ちを大事に。自分の気持ちは自分のもの」と伝えたいです。

ー百舌さんの今後の目標について教えてください。
障がいもあり通院もしていて学業もあるので、体調に気をつけながらも自分が嫌にならないペースで活動を続けたいです。お仕事でポケモンとコラボすることと、パリコレなど海外のコレクションに出ることが夢なので、それを目標に頑張りたいです。

今後の目標を話してくれた百舌さん。夢に向かって進み続ける姿は、次の世代の子たちに影響を与えてくれるでしょう。

【参考資料】
小児慢性特定疾患情報センター『総排泄腔外反症』
難病情報センター『脊髄髄膜瘤(指定難病118)』

ほ・とせなNEWS編集部

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