水森かおりがニューシングル『三陸挽歌』をリリース! 「すごい歌ができたと感動のあまり、涙ぐんでしまいました」

“ご当地ソングの女王”水森かおりがニューシングル『三陸挽歌』(作詞:たきのえいじ、作曲:弦哲也、編曲:伊戸のりお)を、カップリング曲とジャケット写真が異なる2タイプでリリースした。『三陸挽歌』が描き出すのは、三陸の海辺の叙景。ひとり心に傷を負った女性が、命をかけて北の海の漁場に向かう男とそれを見送る女の愛の深さを目にしたことで、過去と決別し生きていこうとする心模様をビートの効いたサウンドに乗せて歌いあげる作品だ。レコーディングで感動のあまり涙したというこの曲に対する思いやカップリング曲の聴きどころ、21年連続21回目の出場となった昨年末の紅白歌合戦で話題を呼んだドミノチャレンジでのエピソードなどを聞いた。


水森かおりの新しい世界が開いた

――『三陸挽歌』は、パンチのあるサウンドと水森さんの清らかで力強い歌唱がとても心地よいですが、ご自身では今作をどのような作品になったと感じていますか?

今までにない水森かおりの新しい世界を開いた作品だと感じています。歌い始めるまでのイントロでは、聴いてくださる方も最初は水森かおりだとは思わないかもしれません。海の歌はこれまで何度も歌ってきましたが、まるで北島三郎さんや鳥羽一郎さんの曲の前奏のような雰囲気ですし(笑)。恋に破れた女性が旅をするというモチーフは、これまでの一連の作品と共通する部分がありますが、主人公が漁に出かける男性と見送る女性の深い愛を見て、自分も過去を捨てて強く生きていこうと決意するというところに、主人公と恋の相手との関係だけではない、主人公の目線の先にいる第三者が登場する、これまでの曲になかった視点をもった作品になりました。とてもかっこいい曲ですね。

――自分とは直接無関係な男女の一場面を見つめている女性の心象風景が描かれていく面白さがありますね。

この曲の世界には、美しい風景を見た自分の気持ちだけで終始するのではなく、素敵な愛の形があります。漁船が出漁する際の見送る側と見送られる側、夫婦もいれば恋人同士もいる、家族もあって……そこにさまざまなドラマがあると思うと、グッとくるというか。レコーディングでは、イントロのサウンドから鳥肌が立ち、メロディーとオケが重なったときに、「命を待って、見送る女がいる」という詞の世界にグッときて、すごい歌ができたと感動のあまり、涙ぐんでしまいました。これまでレコーディングで涙ぐむようなことはなかったので、自分でもびっくりしました。体の芯に何かが降りてきたような初めての感覚でした。

男性コーラスの歌声の正体は……

――サビにある太平洋の荒々しい波濤を表現したかのような「ザンザザザン」というフレーズも印象的です。

聴いてくださった皆さんが印象に残るとおっしゃいます。私自身も家で思わず口ずさんでしまうくらいクセになるフレーズです。バックに男性コーラスが入っていますが、実は作曲の弦哲也先生の歌声です。私の作品では、初めてコーラスとして参加してくださいました。先生の素敵なコーラスの歌声にもぜひご注目いただきたいです。

――水森さんの曲に男性コーラスが入ったことも新鮮ですね。しかも弦先生の歌声とは、ファンの方もうれしい驚きではないでしょうか。

これまで男性コーラスが合う曲となかなか出会わなかったのですが、今回の『三陸挽歌』は力強い歌ですし、男性コーラスが入ったほうがよくなるのではないかとデモを受け取った段階から思っていました。でも、結論を出せないまま、レコーディング当日を迎えたんです。弦先生は多くのアーティストのコーラスに参加されていますし、私の作品にも出ていただきたいという思いもありましたから、レコーディングのときに断られるのを覚悟して一か八かでお願いしたところ、ただ笑みを浮かべて、カバンから飴を取り出して舐め始めたんです。本気だっ!と思いました(笑)。実はコーラスも採用したユニゾンのパターンと、後から追いかけるパターン、合いの手を入れるパターンと3種類を録音したんです。弦先生は「どのコーラスもいいね。好きなもので決めていいよ」と言ってくださったのですが、どれも捨てがたくて。そこで作詞のたきの先生にご意見をうかがったところ、「一緒に歌っているユニゾンのほうが男女の心が重なり合うようで、深みがあるよね」と。その一言でユニゾンになりました。もうさすが、たきの先生ですね。

――実際に歌う際に、もっとも大切されたことはどのようなところでしょう。

うまく説明するのは難しいのですが、強さはとても意識しました。声をグッと下に落とし込む感覚とでもいうのでしょうか。かっこよさを意識したというのが一番近いのかな。力強さを出すために、かっこよく歌おうとしたことも過去の楽曲ではほとんどなかった経験です。

――カラオケでも歌う際も力強さがポイントでしょうか。

そうですね。前作の『日向岬』は、明るく爽やかな軽めのタッチで気持ちよく歌っていただけたと思いますが、『三陸挽歌』は、力強くどっしりと歌うと雰囲気がよくなると思います。男性が歌ってもかっこよく決まると思いますので、男性女性問わず皆さんに「ザンザザザン」のフレーズを楽しみながら、たくさん歌っていただけるとうれしいですね。

初歌唱はいつだって緊張する

――ブログに番組で『三陸挽歌』を初歌唱されたと書いていましたが、手ごたえは?

自分自身は緊張して何も覚えていないのですが、番組のスタッフや他の事務所の方からお誉めいただいたことを後から聞いて、うれしかったですね。

――水森さんでも初歌唱は緊張されるのですか!

そりゃしますよ! 緊張しない人なんていないんじゃないかしら。緊張しないのは、細川たかしさんくらいじゃないですか(笑)。

――これから収録やコンサートなどで歌い重ねていくことで、じっくり作り上げていくんですね。

できあがったCDも聴き返します。改めて聴くと、もうちょっとこうしておけばよかったかなとか、生歌のときはこのパートを膨らませてみようかなといったことが広がってきます。ステージでもお客様の反応によって大きく歌ってみるなど、たくさんの気づきが毎回あります。CDでの歌のイメージを損ねることなく、いい意味でどんどん練られていく感覚ですね。

――今回もミュージックビデオは、現地で撮影されたとうかがいました。

岩手県宮古市にある浄土ヶ浜で撮影しました。ミュージックビデオは、現地に行って、その土地の風や匂いを感じながら撮影し、現地の空気も歌と一緒に映像でお届けしたいという思いがありますので。寒かったのは確かですが、それ以上に人が温かくて。撮影を見守ってくださっていた皆さんから「頑張って」と声をかけていただき、最後まで楽しく撮ることができました。

全国制覇は自分でもドキドキワクワク

――カップリング曲のタイプA『北上川旅情』(作詞:さくらちさと、作曲:弦哲也、編曲:竹内弘一)、タイプB『龍泉洞』(作詞:麻こよみ、作曲:弦哲也、編曲:竹内弘一)と、いずれも岩手県が舞台の歌でした。徳島県、福岡県を残したご当地ソングの全国制覇は、次作以降へと持ち越しなりました。

こればかりは、作詞の先生方が描かれる世界次第ですので、私にもいつ達成できるかはわからないのです。全国制覇については、ありがたいことにファンの方々が熱を帯びていらっしゃって。デビュー29年目の今年のうちに残り1県、来年の30周年にゴールと予想している方もいて(笑)。

――コンプリートしてしまうと、ファンの方も逆に喪失感がわきそうです。

進みそうでなかなか進まないような、ちょっとしたもどかしさやドキドキワクワク感も、皆さんと同じように私自身も楽しんでいます。

――『北上川旅情』は、ノスタルジックな作品ですね。サビの北上川に呼びかけるフレーズは、水森さんの声に温かく包まれ、童謡を聴いているような気持ちになりました。今回の3曲は、すべて岩手県の歌ですが、全くタイプの異なる楽曲ですね。

そこが弦先生の素敵なところで、『北上川旅情』は穏やかで、どこか唱歌のような昭和の歌の雰囲気を持った作品です。私は北上川を何度も見ていますが、知っている景色だけに、この歌の世界に深く入り込めました。

――『龍泉洞』は一転して、王道演歌ですね。

詞の内容はまったく異なりますが、弦先生と川中美幸さんの大ヒット曲『ふたり酒』に代表されるような、オーソドックスなメロディーラインで、この曲も歌っていて楽しかったです。3曲とも合わせて楽しんでいただければと思います。

紅白前はドミノを倒す悪夢で目が覚めた!?

――昨年末で21年連続21回出演となった「NHK紅白歌合戦」ですが、ドミノチャレンジに挑んだ今回の紅白はいかがでしたか?

毎年、いろいろなことに挑戦させていただき、今回も楽しくやらせていただいたんですけど、最初に歌とドミノの融合と聞いたときは、どういうこと? と思って。実際ステージに立って、すごく面白かったですね。

――歌っている最中、ドミノが倒れていくのは目に入るのでしょうか?

もちろん目に入ります! カタカタカタとドミノが倒れる音も聞こえます(笑)。リハーサルに私が参加したのは3回ですが、微調整も含めて全部でリハを7回行ったそうです。歌い終わるタイミングに合わせてドミノも終わらせなければいけませんから、ドミノの一コマ一コマの間の距離も計算し尽されているのですが、最初は歌と合っていなくて、それを細かく調整していって。ドミノのセッティングは、1回5時間もかかるんです。赤から白へのドレスを引き抜くタイミングも、1秒でも間違うと私がドミノを倒してしまったように見えるということで本番直前に変更になって、ぶっつけ本番で挑みましたが、皆さんのおかけでうまく成功しました。紅白ってそういうミラクルが起きるんです。ハラハラドキドキ度合いでは、たぶん今までで一番プレッシャーがありましたね、それまで紅白で披露したイリュージョンなどの成功失敗は自分次第の部分もありましたが、ドミノでは、私は何もできない状態。本番当日までにドミノを何かの拍子に触れて倒してしまった夢を何度も見て、恐ろしさに目を覚ましました(笑)。

――紅白での桂由美さんの衣装は今回も素敵でした。

桂先生とは紅白初出場からのお付き合いです。今回の紅白で身に着けた、「由美ライン」といわれる、身体に沿った大人っぽいデザインは、21年前には選ばなかっただろうと思います。当然ですが、年齢によって好みも変わってきていますね。自分には合うと思っていた色やデザインが意外にはまらなかったり、敬遠していたタイプのお洋服が逆に周囲の評判がよかったりということもあります。これは歌についても同じことが言えるんです。

――50代を迎えて、美容法などで気を使われていることなどあるのですか?

ないですね。食べすぎはやめようっていうくらいで。

地元でのメモリアルコンサートを実現

――昨年の9月25日のメモリアルコンサートは、地元の・東京都北区の「北とぴあ さくらホール」で行われました。全国各地を飛び回っている水森さんとしても地元でのコンサートは格別な思いがあったのでは?

メモリアルコンサートは、これまで中野サンプラザで開催していたのですが、残念ながら閉館してしまいました。自分の中で今度はどこでやるとなったら「北とぴあ」しか思い浮かばなかったです。収容人数や会場の広さなど問題は多々ありましたが、スタッフの皆さんが気持ちを汲んでくださって、実現することができました。

――北区出身のアーティストの代表といえば、水森さんと水森さんが敬愛するエレファントカシマシですが、今回の紅白でも共演されましたね。

北区役所に「水森かおりさん エレファントカシマシさん 紅白出場おめでとう」という懸垂幕がかかったんです。宮本浩次さんにごあいさつしたとき、その話をさせていただきました。

――昭和40年代生まれの水森さんは昭和演歌・歌謡曲の全盛期をリアルに体験している最後の世代のおひとりだと思います。昨年から今年にかけては、多くの演歌・歌謡界の巨星が鬼籍に入られています。演歌・歌謡曲を歌われていくうえで、現在、お感じになられていることはありますか。

私なんぞはまだまだで、本当に語るのもおこがましいです。ただ、多くの先輩方の歩かれてきた道――そこに続いていく一人でありたいなとは思います。昭和のキラキラ輝いていた名曲が世代を超えて皆さんに愛され、聴いていただけるように、私も歌い継いでいく一人でいられたらというふうに思います。

――最後に「うたびと」読者にメッセージを。

2023年は『日向岬』でよい1年を過ごさせていただきました。年が明けてまたゼロからのスタートラインになりますから、気持ちを引き締めて、全国の皆さんに『三陸挽歌』を届けられるように一生懸命頑張ります。応援をよろしくお願いいたします。

水森かおり『三陸挽歌』

発売中

Aタイプ

品番:TKCA-91540
価格:¥1,500(税込)

【収録曲】

1.三陸挽歌(作詞:たきのえいじ/作曲:弦 哲也/編曲:伊戸のりお)
2.北上川旅情(作詞:さくらちさと/作曲:弦 哲也/編曲:竹内弘一)
3.三陸挽歌(オリジナル・カラオケ)
4.北上川旅情(オリジナル・カラオケ)
5.三陸挽歌(半音下げ・カラオケ)
6.北上川旅情(半音下げ・カラオケ)
7.三陸挽歌(半音下げ・カラオケ・ガイドメロ入り)
8.北上川旅情(半音下げ・カラオケ・ガイドメロ入り)

Bタイプ

品番:TKCA-91541
価格:¥1,500(税込)

【収録曲】

1.三陸挽歌
2.龍泉洞(作詞:麻こよみ/作曲:弦 哲也/編曲:竹内弘一)
3.三陸挽歌(オリジナル・カラオケ)
4.龍泉洞(オリジナル・カラオケ)
5.三陸挽歌(半音下げ・カラオケ)
6.龍泉洞(半音下げ・カラオケ)
7.三陸挽歌(半音下げ・カラオケ・ガイドメロ入り)
8.龍泉洞(半音下げ・カラオケ・ガイドメロ入り)

水森かおり『メモリアルコンサート~歌謡紀行~2023.9.25』

発売中

品番:TKBA-1400
価格:¥5,100

【収録内容】

DISC-1
1.日向岬
2.おしろい花
3.早鞆ノ瀬戸
4.ひとり薩摩路
5.安芸の宮島
6.伊勢めぐり
7.五能線
8.北国行きで
9.真赤な太陽
10.白い蝶のサンバ
11.恋泥棒
12.真夜中のドア~Stay With Me
13.東京ブギウギ
14.瀬戸の花嫁
15.ブルー・ライト・ヨコハマ
16.憧れのハワイ航路
17.下町の太陽
18.高原列車は行く
19.おしろい花ダンスバージョン
20.鳥取砂丘
21.高遠さくら路
22.釧路湿原
23.虹色のパレット
24.目黒川
25.東尋坊
26.九十九里浜
27.日向岬
28.明日への扉

DISC-2
コンサートのメイキング映像

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