アングル:米国債市場に「揺り戻し」、早期利下げ期待後退で不透明感

Davide Barbuscia

[ニューヨーク 7日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ期待が後退し、米国債市場に先行き不透明感からの「揺り戻し」が起きている。危険にさらされているのは、こうした期待に伴う昨年終盤の国債価格急騰が今年も続くと読んでポジションを構築している市場参加者だ。

米国債は昨年が終わりに近づく頃、FRBが今年第1・四半期にも利下げを開始するとの観測に基づいた投資家の買いが殺到し、16年ぶりの安値から一気に切り返した。

ところが1月雇用統計の強い内容や、FRB高官から利下げに慎重な物言いが相次いだことで、市場の金融政策見通しは軌道修正されつつある。10年国債利回りはここ数日で跳ね上がり(価格は下落)、12月に付けた直近の最低水準を20ベーシスポイント(bp)上回っている。

投資家は今、FRBが年内に複数回利下げするのはまず間違いないとしても、いつ利下げが始まるのか、あるいは政策金利がどこまで下がるのかはよく分からなくなった。

7940億ドルの資産を運用するPGIMフィクスト・インカムのチーフ投資ストラテジスト兼グローバル債券責任者を務めるロバート・ティップ氏は「雇用統計と(パウエル)FRB(議長)の記者会見が相まって、想定され得る金融政策の結果に非常なばらつきが生じている」と話す。

パウエル議長は先週の連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で3月利下げの観測を打ち消し、物価上昇率が2%の目標に達する道筋にあるというより確かな証拠が利下げには必要だと発言。4日に出演したCBSテレビの「60ミニッツ」でもそうした見解を繰り返した。

金利先物市場が6日時点で見込む3月の利下げ確率は1カ月前の64%から20%に下がり、利下げが5月に始まる確率は37%から55%に上昇。一方で年内想定される利下げ幅は1月半ば段階の150bpから122bpに縮小している。

こうした中でティップ氏の考えでは、足元で4.1%前後の10年債利回りが昨年で最も高かった5%近辺まで年内に上昇してもおかしくない。

バンガードの米国債・物価連動債責任者のジョン・マドジイレ氏は、先週のFOMC前まで10年債利回りが4.25%になれば「押し目を買う」と想定していたが、現在は政策金利が「より高く、より長くなる」シナリオを織り込む形で10年債利回りは4.5%まで上がる可能性が出てきたかもしれないと述べた。

最近の米国債価格の軟化により、昨年の高騰が行き過ぎだったことが確認できたとの見方もある。

ヘッジファンド、トロウ・キャピタル・マネジメントのスペンサー・ハキミアン最高経営責任者(CEO)はここ数週間で長期国債の保有を圧縮し、短期国債を積み増した。市場の予想よりも政策金利高止まりが長引くとの思惑からだ。

ハキミアン氏は「(イールドカーブの)最短期ゾーンへのエクスポージャーを増やしている。なぜならこの部分の金利リスクはずっと少ないからだ」と述べた。高金利が債券の価値を目減りさせるリスクは長期ゾーンの方が大きい。

今年は2兆ドル近い国債が新規発行されることも、投資家の警戒感を誘っている。買い手を集めるためには利回りが上昇する必要があるというのがその理由だ。昨年10月にも米国の財政懸念が強まって国債売りが加速し、格付け会社のフィッチとムーディーズは高金利による財政負担の増大に警鐘を鳴らした。

ルーミス・セイレス・アンド・カンパニーのポートフォリオマネジャー、マット・イーガン氏は、国債大量発行が予想されることもあって、10年債利回りは4.5%に上昇すると見込んでいる。

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