ウクライナ軍、東部アウディイウカから撤退

ウクライナ軍は17日、東部の要衝アウディイウカから部隊を撤退させたと発表した。アウディイウカはこの数カ月間、ロシア軍に包囲されていた。

ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は、「包囲を回避し、兵士の命と健康を守るため」だと説明した。

その上で、部隊を「もっと有利な前線」に移動させると述べた。

シルスキー総司令官の副官は、ロシアが兵器の面で優勢で、ロシア兵は「自軍の兵士の遺体を乗り越えて」前進してくるのだと述べた。

ロシア占領下のドネツクの玄関口に位置するアウディイウカは、この数カ月間、激戦の場となってきた。現在はほぼ完全に破壊されている。

アウディイウカでは、ロシアが支援する分離派武装組織が2014年にドネツク地方とルハンスク地方の大半を占領して以来、ずっと戦闘が続いていた。

アウディイウカ陥落は、2023年5月にロシア軍が近隣のバフムートを占領して以降で最も大きな前線の変化となる。ロシアとウクライナは現在、全長1000キロ以上の前線で戦っている。

「唯一の正しい対策」

シルスキー総司令官は17日早朝にフェイスブックに声明を掲載し、今回の決定は「アウディイウカ周辺の作戦状況」を踏まえたものだと述べた。

「わが軍の兵士たちは、威厳をもって任務を遂行し、ロシア軍の最高の部隊を破壊するためにあらゆる手を尽くし、人員と装備の面で敵に多大な損害を与えた」

数日前に総司令官に任命されたばかりのシルスキー氏は、ウクライナの部隊は「状況を安定化させ、陣地を維持するための施策を取っている」と述べた。

副官のオレクサンドル・タルナフスキー准将がその後、別の声明を発表。部隊はすでにアウディイウカから「事前に準備された場所」に移動したと説明した。

「敵が自軍の兵士の遺体を乗り越えて前進し、砲弾を10倍持ち、常に砲撃が絶えない状況では、これが唯一の正しい対策だ」と、准将は述べた。

米ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は先に、アウディイウカが「ロシアに掌握されるリスクがある」と警告していた。

またその理由として、「前線のウクライナの部隊が弾薬不足に陥っている」からだと述べた。

「ロシアはウクライナの陣地を攻撃するため、徴兵部隊を次々と送り込んでいる」とカービー氏は言い、「アメリカ連邦議会がまだ追加法案を可決していないため、我々はウクライナに、ロシアの攻撃を妨害するためにどうしても必要な砲弾を提供できていない」と懸念を示していた。

米連邦上院は14日、ウクライナへの軍事支援を含む総額950億ドル(約14兆3000億円)余りの外国支援包括予算案を可決。ウクライナ支援には600億ドルが振り向けられているが、なお下院での審議が待っている。

ウクライナは、はるかに大きな軍隊と豊富な兵器を持つロシアと戦い続けるための兵器供給を、アメリカや西側諸国に依存している。

北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ事務総長は15日の時点で、アメリカがウクライナへの軍事支援を可決できないことが、すでに戦場に影響を与えていると警告している。

ロシア部隊はこのところ、アウディイウカで大きく前進し、包囲すると脅していた。

今週初めには複数のウクライナ兵が、アウディイウカはいつでも陥落する状態だと、内々に認めていた。

アウディイウカ周辺で活動する第110独立機械化旅団にいるオレクシーさんは遠くでロシアの砲声が響く中、巨大な移動砲の横に立ちながら、「困っている」とBBCに語った。

「現在、砲弾は2発あるが、そのための爆薬がない。現時点で私たちは砲弾を使い果たしてしまった」と、オレクシーさんは言った。

(英語記事 Avdiivka: Ukraine troops leave embattled eastern town

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