『フリースタイル日本統一』#17ーー名場面誕生 崇勲、MC☆ニガリのラップに白旗をあげる

2023年10月より放送中の『フリースタイル日本統一』(テレビ朝日/ABEMA)。同番組では、全国16地区で活躍するラッパーが3名1組となって、それぞれの地元の威信を賭けてフリースタイルバトルに挑戦。勝利チームは敗退チームから好きなラッパー1名を吸収し、最終的に日本統一を果たすと、その暁として賞金100万円が贈られる。

以下より、2月6日に公開された【#17】のハイライトを振り返っていく。細かなネタバレもあるためご注意いただきたい。

・DOTAMA、息継ぎする間もないディス 崇勲の“寝返り”を手厳しく指摘

前回の【#16】に引き続き、TEAM神奈川(FORK×句潤×SANTAWORLDVIEW×輪入道×崇勲)とTEAM北関東(DOTAMA×NAIKA MC×Yella goat×MC☆ニガリa.k.a赤い稲妻×Sitissy luvit)が、準決勝(五十万石の戦い)で対戦中。TEAM神奈川はここまで、1番手・崇勲が2人抜きの活躍を見せるなど、TEAM北関東に一歩リードといった戦況だ。

TEAM北関東から3番手として登場したのは、DOTAMA。両チームのベテラン枠、かつ同じアラフォー世代、かつ20年来の旧知の仲という、もはや人生の運命共同体に思える者同士での対決は、番組始まって以来となるヒリヒリした本音の攻防戦に。

先攻は崇勲で、ビートはチプルソ,PONY,D.D.S,晋平太「Devil's tongue」。バトルの大枠としては、DOTAMAの“ベテランとして若手の尻拭いをする”という旨に、崇勲が〈老害って言われる理由はそういうところにある〉と、キャリアで差別化を図るべきでないと反論。若手と同じ目線を主張する、“理解あるおじさんムーブ”を示すと、今度はDOTAMAが崇勲の清々しいくらいの寝返りぶりをすかさず指摘。〈たまにテレビ出てウケ狙われて 飽きられてその後すぐまた呼ばれなくなるくせに 何 粋がってんだ? テメェはよ〉と、息継ぎする間もないディスで、相変わらず人の嫌なところを的確に言語化してくる(褒めています)。

このバトルの結果は、3-2の僅差で崇勲に軍配が上がる。筆者としては、DOTAMAと崇勲とも、ラップの“ユーモア”が持ち味だと考えており、特にDOTAMAについては、DOTAMAの超えちゃいけないラインを、ごく稀に大股で超えまくるディスをするなかで、審査員や対戦相手すらくすっと笑わせる、どぎつさゆえのユーモアが癖になる。ただ、このバトルで見せたのは、いわゆるマシンガンスタイル。その点、崇勲はこの場面でもユーモアを忘れられず、このバトルの勝因に繋がったと、KEN THE 390は講評をしていた。

・崇勲、MC☆ニガリのラップに“お手上げ”「もうダメな空気になってんじゃねぇか」

TEAM北関東の4番手は、MC☆ニガリa.k.a赤い稲妻。先攻は崇勲、ビートはAKLO「RGTO feat. SALU,H.TEFLON & Kダブシャイン」。ハイライトは次の通りだ。

崇勲:痩せた?どうやって痩せれた? 教えてくれ ダイエット方法

MC☆ニガリ:弘法も筆の誤り 河童の川流れ 猿も木から落ちる デブは木には登れない

崇勲:豚は木には登れないか 豚に真珠 猫に小判 どっちでもいいが 崇勲がマイク持ったら半端じゃない事/ニガリ 悲しいじゃん そんな そっち向いちゃってさ

MC☆ニガリ:そっちを向いてほしいんだったら まず日本語は正しく使ってください 豚に真珠 猫に小判 崇勲にマイク 価値が分かってないじゃん 埼玉の奴は義務教育すらも受けてないらしいぜ 可哀想 まぁ晋平太見れば分かんでしょ?

崇勲:「崇勲にマイク持ったら半端ない」って後の言葉 しっかりと聞け もうダメな空気になってんじゃねぇか さすがニガリ 半端じゃないラップしてる

MC☆ニガリ:ありがとう 決着が着いちまったみてぇだから こっからはピースに行こう 俺も崇勲は大好き 本当に可愛らしい見た目をしている でも俺は1つだけ お前の情報を聞いた事がある 崇勲 昔は暴走族 それって嘘? 本当?

フリースタイルバトル、もとい即興ことわざ対決となったこの一戦。ポイントはやはり、“崇勲にマイク”の意味合いだろう。崇勲がアピールした通り、事前に〈どっちでもいいが〉と否定の前置きをしているため、文脈的には直前までの意味合いを抜きに、いわゆる“鬼に金棒”的なことを言いたかったのだろう。

ただ、審査員が判定を下す現場に字幕はないし、MC☆ニガリがこの後に一刀両断したような〈価値が分かってないじゃん〉という文脈に捉えられても致し方ないか。言葉の捉え方の違いこそあれ、正解は崇勲の頭のなかにしかないが、その頭も連戦の影響により燃料切れ。“崇勲にマイク”こそ、まだその時点では苦し紛れでぽんと出たラインという印象こそ薄かったものの、〈後の言葉 しっかりと聞け〉の反論が言い訳っぽく響いたのも事実だ。

驚かされたのはここから。かつて『フリースタイルダンジョン』にてR-指定(Creepy Nuts)と呂布カルマが一戦を交えた際、呂布カルマがR-指定のフリースタイルに〈もう言うことねえわ やっぱこいつ強いわ〉と完敗宣言をした、いまなお語り継がれる名シーンがあるが、その再現を観たかのような気分。〈もうダメな空気になってんじゃねぇか〉と、MC☆ニガリによって会場の空気が“そっち”に引っ張られていることにメタ的な視点から言及し、自ら白旗を上げた。

バトル終盤、MC☆ニガリからダメ押しの暴露があったが、その真相は明かされず。結果どうこうより、崇勲の過去や、もし本当に暴走族に属していたのなら、どのようなポジションだったのかが気になってしまった。両者の再戦の機会には、その続きを教えてくれるものだろうか。

ちなみにこの後、MC☆ニガリはSANTAWORLDVIEWに勝利し、輪入道に敗退。次回、TEAM北関東より大将・NAIKA MCがいよいよ降臨する。“田舎者”による世紀の一戦を征するのはどちらか。次回のオンエアも、ぜひリアルタイムでご覧いただきたい。

(一条皓太)

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