髙石あかり(女優・劔鈴役) ‐ 『正しいアイコラの作り方』この作品に携わる意味は劔鈴として生きること

一言で言い表せない作品

――劔鈴は作中でも謎の人物ですが、台本を最初に読まれたときの印象を伺えますか。

髙石あかり:劔鈴の台詞を読んでいて、凄く純粋な女の子だなと感じました。ただ、最初に出てきたときの奇抜さもあって観ている方からすると謎めいたキャラクターと捉えられるだろうなとも思いました。 ――本当に謎だらけでした。そんな風に謎が散りばめられているので、序盤はもっとサスペンス色が強い作品になるのかと思いました。

髙石:そこがこの映画の面白いところなんじゃないかなと。ミステリー要素・コメディ要素・恋愛要素が入り混じっている。劔鈴が出てきて「何だ、これ。」となる、観ていてジェットコースターに乗っているような感覚にもなります。一言で言い表せない作品です。 ――観客として最初はなかなかつかめない部分もあったのですが、演じられた皆さんは脚本を読まれてすんなりと物語が分かりました。

髙石:最初は掴めない部分ありましたが、何度も読み返すことで読み解いていきました。初めて観た方はどう受け止められていたのかなというのは気になります。 ――ナレーションもあって情報量が多い作品なので、そこで理解してるつもりになっていたのかもしれないですね。だから、クライマックスのどんでん返しが効いてきた。

髙石:そういう部分もあるんだと思います。

演じてみたいという気持ちが強くなりました

――本作について神谷監督とお話しされたことはありましたか。

髙石:役作りに関しては任せていただきました。私たちの作ってきたものを映画に上手く取り入れられるようにコミュニケーションは密にとっていただけたので、ありがたかったです。そんな中でもいろいろとすり合わせをした部分もあります。例えば、笑い方や泣き方、「先輩」の言い方など、どうすれば鈴の雰囲気がでるか神谷監督と膨らませていきました。 ――メインで出てくる4人もみんな素直でいい子たちなので、逆に勘ぐってしまう部分もありました。

髙石:分かります。 ――この映画は心情の描き方が素晴らしいなと感じました。傷つくのが怖かったり、些細なすれ違いで仲違いをしてしまったりする姿が等身大の高校生らしかったです。一言あれば伝わるのに、言葉にするのが苦手な子たちでその一言を言うことが出来ないという姿は思春期らしくていいなと思いました。

髙石:そうですよね。 ――いろんな要素が含まれていますが、演じられている皆さんは物語をどのように捉えて演じられたのでしょうか。

髙石:単純なラブストーリーではないんだろうなと感じていました。私がこの作品に携わる意味は劔鈴として生きることだと思っています。 ――そんなト書きが。

髙石:私はそこに凄く興味や魅力を感じたんです。鈴役に決まって台本を読むことでさらに演じてみたいという気持ちが強くなりました。 ――先ほどからお話をさせていただいてる通り、鈴は奇抜なキャラクターですが役作りはどのように進められたのでしょうか。鈴という役に魅力を感じていたとのことですが、自然と鈴が出てきたのでしょうか。

髙石:あまり悩むこともなく演じることが出来ました。鈴はこじれている部分がないんです。ただ、まっすぐでまっすぐすぎるから空回りをしてしまうんです。劇中でも富岳三郎に思いを伝えたいというのは最後まで変わらないので、悩むことはありませんでした。神谷監督から台詞の言い方やニュアンスで演技指導をいただくことはありましたが、キャラクターの芯の部分で違うと言われることはありませんでした。

母性に近い愛情も持っている

――確かに、ただただ真っ直ぐな子ですね。恋敵でもある谷川あさひと三郎の仲を取り持つこともあったので、鈴はいい子過ぎるなとも思いました。もう少しズルく振る舞ってもいいのかなと。

髙石:私の好きな台詞に「また、こうして三人で遊べたらいいのに。」という台詞があります。鈴の中に幼少期三人で遊んでいた思い出が残っているからこその言葉だと思います。高校生になり三郎に恋していますが、鈴の中ではあさひを除外という考えはないんだと思います。鈴にとっては三人でいることが大事で、それがあさひにも伝わっているから三郎が距離を縮めるきっかけを作ってあげたりしていたんだと思います。 ――そうかもしれませんね。

髙石:鈴はピュアな心で三郎に対して「好き。」と言っているように見えますが、母性に近い愛情も持っていると思います。作中で「先輩があたしのことを選んでくれたら、きっと強くなれる。」という台詞がありますが、そういう言葉はもらった方も嬉しくなります。そういう言葉を素直にかけてあげられる優しさがある、大人な一面も持っていると思います。 ――確かに。

髙石:ただ私が好きということを伝えているだけでなく、相手を思いやる優しさを持っている子だと思います。 ――実は鈴が三人の中で精神的に一番大人なのかもしれませんね。相手を良い方向に進ませてあげようという気持ちはみんな持っていますが、鈴は特にそういう気持ちが特に強い子ですから。

髙石:そう言っていただけて嬉しいです。只々、純粋だからこその行動・言葉なんだと思います。 ――完成した映画を観られていかがでしたか。

髙石:劔鈴は一番真っ直ぐなのにあいまいで、そのギャップは観て面白かったです。 ――物語が進むことで秘密が解き明かされていくので、観返したくなる映画です。こんなに不思議な物語がこんなに素敵な結末を迎えるんだというのは驚きでした。あの結末をみなさんはどう捉えられましたか。

髙石:花音ちゃんと坪根くんとも「本当の最後に三郎はどうだったんだろう。」という話しをしていました。 ――やっぱり、みなさんも思われたんですね。

髙石:そこは、皆さんのご想像にお任せします。この作品は観ていくうちに一人一人の高校生らしいピュアな一面に愛着がわく素敵な作品です。ぜひ、楽しんで映画を観てください。

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