アングル:日経平均、意外高の裏に海外勢の「サプライズ」も 日銀巡り

Noriyuki Hirata

[東京 9日 ロイター] - 年初からの上昇相場が再び勢いづき、日経平均は34年ぶりに一時3万7000円の大台に乗せた。原動力になったのは海外勢の買いだ。連続利上げに慎重な姿勢を示した日銀からの情報発信を「サプライズ」と材料視して先物中心に買いを膨らませた。

<内外で受け止めに違い>

「これは材料ではないでしょう」。8日の東京市場では、日銀の内田真一副総裁の発言が伝わった後、国内のある運用会社のファンドマネージャーは「新味がない」との受け止めを話していた。

内田副総裁は、マイナス金利を解除しても、その後どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくい、などとの考えを述べた。 ところが日経平均は、ソフトバンクグループの株高も重なって、スルスルと上昇。バブル後高値に接近する場面があった。9日にも強い地合いは継続し、34年ぶりの大台回復につながった。

市場では、内田副総裁の発言について、国内の投資家にはさほど新鮮には映らなかった一方、海外勢の一部にはサプライズになったとの声が聞かれる。欧米では金融当局が緩和から引き締め方向に転じた場合、利上げが続くのが通常との認識があるからだという。

「植田和男総裁の会見でも確認されていたことではあるが、早期のマイナス解除がプラス領域での利上げにつながるとの市場の一部での懸念は払拭されたようだ」と、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは指摘する。

<多様な投資主体>

足元では、これまで日本株に関心のなかった海外の投資家が、高いパフォーマンスに引き寄せられて投資を始めるケースもある。日経平均の年初からのパフォーマンスは約10%高で、S&P500の約5%高を大きく上回る。 1月の海外投資家の現物の買い越しは約2兆円と膨らんだ。「1月としては稀で、通常とは違う顔ぶれのプレーヤーが入ってきた影響が大きいだろう」と、JPモルガン証券の高田将成クオンツ・ストラテジストはみている。 証券会社や運用会社の一角からは「このところ、今まで聞いたこともないような海外投資家が顧客になるケースがみられる」(外資系証券の営業担当)との声が聞かれる。「消化できる材料であれば何であれ、とにかく動くような投資家もいる」(別の外資系証券会社のストラテジスト)との見方がある。

<高値警戒の動きも>

もっとも、投資主体別の売買動向をみると、海外投資家は1月第5週まで2週連続で売り越しとなっており「高値警戒感もうかがえる。短期的な過熱感から、いったん需給調整があってもおかしくない」(三菱UFJアセットマネジメントの石金淳チーフファンドマネジャー)との見方がある。

9日はSQ(特別清算指数)算出日に当たる。需給が交錯するSQにかけて株高になった後に崩れるケースは珍しくなく、来週以降の値動きを警戒する声もある。8―9日の日経平均の上昇は、好決算や傘下企業の株高が好感されて大幅上昇となったソフトバンクGの押し上げが大きい。同株の指数への寄与がなければ、9日の日経平均はマイナスだった。

上昇モメンタムが継続する可能性はある一方、「相場が上げすぎている中ではついていきにくく、1月相場の反動には注意したい」と、JPモルガンの高田氏は話している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

© ロイター